盾 の 勇者 の 成り 上がり 2 Chapter 19
十九 話 カースシリーズ 「 わ ぁあ …… 魔物 が いっぱいだ ー 」
元々 不毛の 大地 だった 影響 か 、 山 は 岩 が ごろごろ して いる 岩山 だった 。
東 の 国 へ の 山道 が ある おかげ で どうにか 前進 できて いる 。
現在 地 は 登り 出して 三〇 分 ほど の 場所 だ 。
所持 品 は 回復 薬 と 念のため に 治療 薬 、 そして 毒 が 空気 に 混ざって いる と いう ので 解毒 剤 。
ちなみに 出発 前 、 馬車 を 置いて いこう と した ところ 。
「 や ー ! これ に は フィーロ の 一生 の 思い出 が 沢山 詰まって る の ー ! 」 と フィーロ が 絶対 に 引いて いく と 駄々 を 捏ねた ので そのまま 引か せて いる 。 生まれて ひと 月 の 分 際 で 人生 を 語る か 。
まあ フィーロ に とって 一生 の 九 割 近く 馬車 を 引いて いた のだ から 、 愛着 が ある の も 理解 できる 。
敵 は ポイズンツリー や ポイズンフロッグ 等 、 毒 系統 を 持つ 魔物 が 多い 。
倒した 後 は 盾 に 吸わ せる 。
ポイズンツリーシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ポイズンフロッグシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ポイズンビーシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 ポイズンフライシールド の 条件 が 解放 さ れました 。 どれ も 毒 耐性 系 が 置き換わって ステータス 系 アップ の 装備 ボーナス 盾 に なって いる 。
唯一 の 例外 は ポイズンビー を 解体 して 出た 盾 だ 。
ビーニードルシールド Ⅱ
条件 未 解放 …… 装備 ボーナス 、 攻撃 力 1
専用 効果 針 の 盾 ( 小 ) ハチ の 毒 ( 毒 ) 防御 力 が ビーニードルシールド と 殆ど 変わら ず 、 麻痺 が 毒 に 変わった だけ の 性能 互換 だ 。
と いう 話 は 置いて おいて 、 敵 の 出現 が 激しい 。 倒して も 倒して も 次々 と 湧いて くる 感じ だ 。
確かに これ は 疫病 の 毒 を 振りまく 風 、 更に 地面 から 瘴気 みたい の が 立ち込めて いて 、 普通の 冒険 者 は 厳しい かも しれ ない 。 「 相手 を して いて は キリ が ない ! フィーロ 、 駆け抜けろ ! 」 「 は ー い ! 」 フィーロ は 馬車 を 引いて 全力 で 駆け抜ける 。 それ だけ で バシバシ と 敵 を 跳ね飛ばして 若干 経験 値 が 上がる 。
道中 ヘドロ みたいな 魔物 と 遭遇 した が 、 フィーロ が 跳ね飛ばして しまった ので 盾 に 吸わ せる 余裕 が なかった 。
「 やっと 目的 地 か 」
毒 の 瘴気 と 腐敗 臭 が 辺り に 漂って いる 根源 、 ドラゴン の 死骸 が 見えて くる 。
大き さ は 一〇 メートル 弱 、 絵 に 描いた 西 洋風 の ドラゴン …… だった のだろう 。 けれど 今 は その 面影 を 感じる こと は でき ない 。
何 色 の ドラゴン だった の か 、 それ すら も 認識 する こと が 不可能な ほど 腐敗 は 進み 、 変色 した 黒い 皮 が 認識 できる 程度 だ 。
致命 傷 は 腹部 へ の 一撃 だった のだろう 。 腹部 に 大きな 傷跡 が あり 、 内臓 が 露出 して 異臭 を 放つ 。 ポイズンフライ が ドラゴン の 腐った 肉 に 群がり 、 不 快感 を 増長 さ せて いる 。
「 お腹 すいた ー 」
「 あれ を 見て 食欲 が 湧く お前 は 凄い よ ……」
フィーロ が 馬車 に 入れて ある 作物 を むしゃ むしゃ と 食べ 出した ので 、 思わず 突っ込んで しまう 。
「 ラフタリア 、 大丈夫 か ? 」 「 は 、 はい 」 呼吸 器 系 が 弱い ラフタリア は 、 空気 の 悪い ここ で は 調子 が 悪く なる ので は ない か と 思って 聞いた んだ けど 、 本人 は 大丈夫だ と 主張 して いる 。
「 きつく なったら すぐに 休めよ 」
「 はい 」
ポイズンフライ を 倒し ながら ドラゴン の 死骸 へ 向かう 。
錬 れんや 冒険 者 達 に 剥ぎ取られて いった のだろう 。 爪 や 角 、 ウロコ 、 皮 、 翼 など の 主要な 部分 は 殆ど 無くなって いる 。 舌 すら も 無い 。 残されて いる の は 骨 と 肉 だけ と 言って も 過言 で は ない 。 皮 も ごく 一部 を 除いて 残されて いない ようだ 。 鼻 が 曲がる ような 異臭 が 辺り に 漂って いる 。 これ は 確かに 厳しい 。
毒 耐性 が ある から 俺 は 平気だ けど 、 ラフタリア に は 厳しい かも しれ ない 。
「 フィーロ は ポイズンフライ の 駆除 、 ラフタリア は 俺 と 一緒に 死骸 の 解体 だ 。 大き 過ぎて 盾 に 吸わ せられ ない 」 大地 が 腐る 危険 性 も ある し 、 下手に 埋める より も 盾 に 吸わ せて 消した 方 が 確実だろう 。
「 うん 」
と 、 食事 を 終えて 腹 を パンパンに 膨れ させた フィーロ が 頷く 。
「 ちょっと 気持ち 悪く なっちゃった 」 「 それ は 食い 過ぎ だ 」
打ち合わせ 通り に 解体 を しよう と ドラゴン の 死骸 に 近づく 。
ゴソ ……。
「…… 気のせい か ? 」 「 えっと ……」 今 、 ドラゴン の 死骸 が ビクリ と 動き出した ように 見えた 。
まあ 、 ポイズンフライ が 死骸 に 群がって いる 所 為 で そのように 見えた のだろう 。
ゴロリ ……。
…… うん 。 気のせい じゃ ない 。
ドラゴン の 死骸 が 動き出し 、 四 つ ん 這い に なって 臨戦 態勢 を 取った 。
「 GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO ! 」 牙 も 角 も 無い ドラゴン の 頭部 が 持ち上がって 咆哮 を あげる 。 「 あれ で 動き出すって どう なって んだ よ ! 」 「 ナオフミ 様 落ち着いて ください ! 」 動き出した ドラゴン の 死骸 …… ドラゴンゾンビ を 前 に して 俺 は 叫んで いた 。 おいおい 。 幾ら なんでも 今 の 俺 達 に は 荷 が 重 過ぎる 相手 な んじゃ ない か ?
ドラゴンゾンビって 、 ゲーム と か だ と 生前 より も 能力 が 高く なる と か ある よ な 。 その 辺り この 世界 だ と どう な の よ !
ボコボコ と ドラゴンゾンビ は 各 々 の 器官 を 再生 さ せ つつ 、 俺 達 に 顔 を 向ける 。
再生 した 部位 は 羽 、 そして 尻尾 だ 。 牙 や 爪 など の 器官 の 再生 に は 時間 が 必要な の か わから ない 。
腐敗 した 肉 が 液状 化 して 羽 と 尻尾 に 変化 した 。 内臓 部分 に も それ は 及び 、 致命 傷 だ と 思わしき 傷 は 塞がって いる 。 幾ら なんでも これ を 対処 する なんて 俺 に は 不可能だ 。
「 逃げる ぞ ! 」 「 ですが フィーロ が 既に 」 ラフタリア が ドラゴンゾンビ を 向けて 指差す 。
ああ ! そう いえば フィロリアル と ドラゴンって 仲 が 悪い んだった か ! 「 てり ゃあ ! 」 する と フィーロ が 丁度 ドラゴンゾンビ に 跳躍 し 、 その 頭部 に 蹴り を 加える ところ だった 。 ドゴっと 良い 音 が して ドラゴンゾンビ が 仰け反る 。 「 案外 …… 戦える 、 の か ? 」 フィーロ の 攻撃 力 が 高い と 言う の も ある が 、 この ドラゴンゾンビ 、 攻撃 の 要 である 爪 と 牙 が ない 。 もしかしたら 勝てる かも しれ ない が …… 相手 に は スタミナ と いう 概念 が 無い と 思わ れる 。
しかし ここ で 俺 達 が 引いたら 、 村 の 方 へ この ドラゴンゾンビ が 来る 危険 性 が ある 。
もちろん 錬 に 倒さ れる 前 と 同じ ように 、 ここ を 縄張り に する 可能 性 も ある が 、 再生 中 だ と 思う 。 今 倒さ ねば 次に 戦う 誰 か が 厳しく なる かも しれ ない 。
「 無 茶 を する な ! 下がれ ! 」 「 や ー ! 」 「 く …… ここ は 俺 達 が 止める ぞ ! 」 「 はい ! 」 と 、 息巻いて 戦った まで は よかった 。 俺 も 一 番 防御 力 の 高い キメラヴァイパーシールド に 変えて ドラゴンゾンビ の 攻撃 を 受け止め きった ところ は 良い と しよう 。
だが ……。
「 GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOO ! 」 ドラゴンゾンビ の 腹部 から 何 か が 咽 せ 上がって きて 、 俺 達 に 向けて 口 から 紫色 の ガス を 放った 。 ラフタリア と フィーロ は 打ち合わせ 通り に 俺 の 背後 に 回って 盾 に する 。
俺 も 盾 を 構えて 相手 の ブレス に 備えた のだ が ……。
「 う …… なんだ これ ! 」 「 ゲホ 、 ゲッホ ! 」 ブレス の 正体 は 高 濃度 の 毒 ガス だった 。 毒 耐性 の ある 俺 で すら も 、 めまい に 似た 息苦し さ を 若干 感じる 。 背後 に 控える ラフタリア に 至って は 咳 せき込み 、 息 を する の が やっと の 様子 だ 。
フィーロ は 毒 ガス を 物ともせず 、 いや 、 正確に は 息 を 止めて いた の かも しれ ない が 、 ブレス を 吐く ドラゴン の 隙 を 突いて 蹴り を 加えた 。
「 ラ 、 ラフタリア 大丈夫 か !?」
「 ゲホゲホゲホ ──」
涙ながらに 、 ラフタリア は 俺 に 大丈夫です と 答え たかった ような のだ が 、 咳 が 止まら ず に いる 。
…… これ は 厳しい かも しれ ない 。
俺 と フィーロ は 戦える けれど 、 ラフタリア が 持た ない 。
「 ラフタリア は 戦線 から 離脱 しろ 、 馬車 に 解毒 薬 が ある 。 それ を 飲んで 安静に ──」
「 ゲホゲホ ! 」 ラフタリア が 咳 を し ながら 、 必死に ドラゴンゾンビ の 方 を 指差した 。 俺 は その 指 の 先 を 見て 絶句 する 。
ドラゴンゾンビ が 丁度 大きな アギト を 広げ 、 跳躍 から 落下 する フィーロ に 向けて 掬 すくい上げる ように 喰 ら い付く 瞬間 だった のだ 。
その 光景 が ゆっくり と 、 スロー に 流れて いく 。
咄嗟に 手 を 伸ばす 、 が 。
「 あ ──」
バグン !
大きな 音 が 響き 、 ドラゴンゾンビ の 口 から 真 紅 の 液体 が 滴る 。
「 フィーロォオオオオオオオオオオ ! 」 俺 か ラフタリア か 、 どっち が 声 を 出して いた の か 、 頭 が 真っ白に なって 、 俺 に は 理解 できて い なかった 。 まだ 生まれて 一 ヶ月 しか 経って いない お 調子 者 の 鳥 …… 生まれて すぐに 俺 に 擦りより 、 いつも 俺 と 一緒に 居 た がった 甘え ん 坊 。 俺 に 無 価値 だ と 言わ れる の を 恐れた 、 ただ の 子供 だ 。
走馬灯 の ように フィーロ と の 思い出 が フラッシュ バック する 。
何 が 起こった ?
何 が ……。
ドラゴンゾンビ は 口 に 含めた 獲物 を 何度 か 咀嚼 する と 、
ゴクリ 。
と いう 大きな 音 を 立てて 飲み下して しまった 。
「 ああ …… フィーロ ! 」 俺 は 絞り出す ように 声 を 漏らし 、 立ちつくす 。 まるで 崖 から 突き落とさ れる か の ような 心 の 痛み が 胸 を 貫く 。 そう か …… これ が 真 の 意味 で 絶望 と いう 事 な のだ と 今に なって 理解 する 。
怒り で 彩ら れた 絶望 で は なく 、 取り戻す こと の でき ない と いう 喪失 の 絶望 。
「 ナオフミ 様 ! 」 ラフタリア が 放心 する 俺 に 向けて パン と 強く 頬 を 叩く 。 「 しっかり して ください ! ここ で 放心 して は 何にも なりません ! 」 目 に は 涙 を 浮かべて いる 。 ここ で 、 立ち尽くして いる だけ で は 事態 は 悪く なる 一方 だ と 言って いる 。
しかし …… 大切な 仲間 が 目の前 で 失わ れた こと に よる 怒り が 俺 の 心 を 支配 して 行った 。
── チカラガ 、 ホシイカ ?
盾 から そんな 声 が 聞こえた 気 が した 。
ほぼ 無意識に 盾 に 視線 を 向け 、 声 に 耳 を 傾ける 。
── スベテガ 、 ニクイカ ?
ドクン と 心臓 の 鼓動 が 強まる 。
盾 から 闇 が 生み出さ れる 感触 を 覚えた 。
これ は …… 元康 と 戦った 時 に 起こった あの 時 と 同じ 。
盾 の ツリー が 俺 の 視界 に 浮かび上がる 。
そして その ツリー 画面 が 裏 返り 、 黒 と も 赤 と も 言え ない 不気味な 背景 を した …… もう 一 つ の ツリー が 姿 を 現した 。
カースシリーズ 。
ふと 、 この フレーズ が 脳裏 を 過ぎる 。 一 つ だけ 、 明るく 点灯 する 盾 が 存在 する 。
カースシリーズ
憤怒 の 盾
能力 未 解放 …… 装備 ボーナス 、 スキル 「 チェンジシールド ( 攻 )」「 アイアンメイデン 」
専用 効果 セルフカースバーニング 腕力 向上 ココロガウミダス 、 サツイノ 盾 ……。
特別に 説明 文 まで 書か れた この 盾 に …… 俺 は 自ら の 意識 な の か 無意識な の か …… 感情 の 赴く まま に 盾 に 手 を かざし 、 思って しまった 。 憤怒 の 盾 。
盾 から 激しい 感情 の 流れ が 解放 さ れ 、 赤 黒い 光 と 共に 盾 が 変化 する 。
そこ に は 禍々 しい 炎 を 意識 した 装飾 が 施さ れた 、 真っ赤な 盾 が あった 。
ドクン …… ドクン ……。
意識 が 怒り に 飲み込まれて いく 。 あの 時 、 元康 と の 決闘 に 負け 、 ラフタリア を 失い そうに なった 時 …… 世界 の 全て が 憎くて しょうがなかった 。
世界 に 存在 する 全て が 黒く 、 俺 を あざ笑う 影 に しか 見え なく なった 。
その 感情 が 俺 を 支配 して いく 。
「 GYAOOOOOOOOOOOOOOOO ! 」 叫ぶ 大きな 黒い 影 が 俺 に 向かって 腕 を 伸ばす 。 「 う お おお おお おお おお おお おお おお おお おお おお おお おお おお おお ! 」