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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第二章 アスターテ会戦 (2)

第 二 章 アスターテ 会戦 (2)

彼 の 好み の 回答 を しよう と し ない 、 この 若い 幕僚 に 不 快感 を おぼえ ず に い られ なかった のだ 。

中将 は 、 すわる よう ヤン に 身ぶり で しめす と 、 スクリーン に 顔 を むけた 。

Ⅲ 開戦 後 四 時間 。 同盟 軍 第 四 艦隊 は すでに 艦隊 と 呼称 できる 存在 で は なく なって いる 。 ととのった 戦闘 態 形 は ない 。 統一 さ れた 指揮 系統 も ない 。 各 処 に 寸断 さ れ 、 孤立 さ せ られ 、 各 艦 単位 の 絶望 的な 抵抗 が 散発 する だけ と なって いた 。

旗 艦 レオニダス は 巨大な 金属 の 塊 と 化して 、 虚 空 を さまよって いる 。 その 艦 内 に は すでに 生命 は 存在 し なかった 。

司令 官 パストーレ 中将 の 肉体 は 、 艦 橋 部 が 敵 の 集中 砲火 を うけて 外 殻 に 大きな 亀裂 が 生じた 瞬間 、 内外 の 気圧 差 に よって 真空 中 に 吸いだされて いた 。 その 死体 が どのような かたち に なって どこ の 空間 を 漂って いる か 、 誰 も 知ら ない 。

いっぽう 、 ラインハルト は この 段階 に おける 完全な 勝利 を つかんだ こと を 知っていた 。 メルカッツ から 通信 スクリーン を つうじて 報告 が もたらさ れた 。

「 組織 的な 抵抗 は 終わり ました 。 以後 、 掃討 戦 に うつる こと に なります が ……」 「 無用だ 」

「 は ? 」 メルカッツ は 細い 両眼 を いっそう 細めた 。 「 戦い は 三 分 の 一 が 終わった ばかりだ 。 残 敵 など 放置 して おいて よい 。 つぎの 戦闘 に そなえて 戦力 を 温存 して おく こと だ 。 おって 指示 を だす 。 それ まで に 態 形 を ととのえて おけ 」

「 わかり ました 。 司令 官 閣下 」

おもおもしく うなずく と 、 メルカッツ の 姿 は 通信 スクリーン から 消えた 。

ラインハルト は 赤毛 の 高級 副 官 を かえりみた 。

「 すこし は 態度 が 変わった な 、 彼 も 」

「 ええ 、 変わら ざる を え ない でしょう 」

緒戦 に おける この 勝利 は 大きい 、 と キルヒアイス は 思った 。 ラインハルト の 戦略 構想 が 功 を 奏した こと を 、 諸 提督 も 認め ざる を え ない し 、 兵 は 活気づく 。 敵 は 必勝 の 態勢 を 破られて 動揺 する だろう 。 「 つぎに 左右 どちら の 艦隊 を 攻撃 す べきだ と 思う 、 キルヒアイス ? 」 「 どちら の 側 背 に まわる こと も 可能です が 、 お 考え は 決して おりましょう ? 」 「 まあ な 」 「 右 方 に 位置 する 第 六 艦隊 の ほう が 兵力 が す くのう ございます ね 」

「 その とおり だ 」

金髪 の 若い 指揮 官 の 口 もと に 会心 の 微笑 が 浮かんだ 。

「 敵 が 予測 して いる かも しれません 、 それ だけ が いささか 心配です が ……」 ラインハルト はか ぶり を ふった 。

「 その お それ は ない 。 それ と 察して いれば 、 分 進 合 撃 戦法 を 続行 したり は し ない だろう 。 可能な かぎり 早く 合流 を はかる はずだ 。 合計 すれば まだ わが 軍 より はるかに 優勢な のだ から な 。 それ を し ない の は 、 わが 軍 の 意図 を いまだに 諒 解して いない 証拠 だ 。 敵 第 六 艦隊 の 右側 背 に まわって 攻撃 を かける 。 何 時間 ほど 必要だ ? 」 「 四 時間 弱 です 」 「 こいつ 、 もう 計算 して いた な 」

ラインハルト は もう 一度に こり と 笑った 。 笑う と 、 少年 の 表情 に なる 。 だが たちまち 微笑 を 消した の は 、 彼 を 凝視 する いく つ か の 視線 に 気 が ついた から であった 。 キルヒアイス 以外 の 者 にたいして は 、 ラインハルト は 容易に 笑顔 を みせ ない 。 「 その むね を 全 艦隊 に 伝達 しろ 。 時計 方向 に 針路 を 変更 し つつ すすみ 、 敵 第 六 艦隊 の 右側 背 から 攻撃 する 」

「 かしこまり ました 」

キルヒアイス は 応えた が 、 なに か 言い た げ に 金髪 の 上官 を 見て いる 。 ラインハルト は 不審 そうに 眉 を よせて 相手 を 見かえした 。

「 なに か 異議 で も ある の か ? 」 「 いえ 、 そう では ありません 。 時間 的 余裕 が あります し 、 兵士 たち に 休息 を とら せて は いかが か と 思います が ……」 「 ああ 、 そう だ な 、 気づか なかった 」

ラインハルト は 兵士 に 一 時間 半 ずつ 二 交替 で 休息 さ せ 、 その 間 に 食事 と タンク ・ ベッド 入り を すませる よう 、 命令 を 伝達 さ せた 。

タンク ・ ベッド と は 軽い プラスチック 製 の 密閉 式 タンク 内 に 水深 三〇 センチ の 濃い 塩 水 を たたえた もの で 、 水温 は 三二 度 C に たもたれて いる 。 この 内部 に 身体 を 横たえて 浮かんで いる と 、 色彩 、 光熱 、 音響 など 外界 の 刺激 から 隔離 さ れ 、 完全に 静穏 な 状態 に おか れる 。 一 時間 を タンク 内 で すごした 場合 、 身 心 の リフレッシュ 効果 は 八 時間 の 熟睡 に 匹敵 する と いわ れる 。 戦闘 で 身 心 を 消耗 さ せた 兵士 たち を 短 時間 で 回復 さ せる のに 、 これ 以上 の 存在 は ない 。

小 部隊 で タンク ・ ベッド の 設備 を 欠く 場合 、 覚醒 効果 を もつ 薬剤 を 使用 する こと が ある が 、 これ は しばしば 人体 に 危険 を およぼす だけ で なく 、 軍隊 組織 そのもの に 悪 影響 が ある 。 薬物 中毒 の 兵士 など 、 人 的 資源 と して まったく 価値 が ない のだ 。 したがって 、 この 手段 が もちいられる の は 最悪の 場合 である 。 負傷 者 にたいする 治療 も おこなわ れた 。 電子 が 人体 細胞 を 活性 化 さ せ 、 自然 治癒 能力 を 飛躍 的に 高める こと は 、 西暦 一九〇〇 年 代 の すえ に は ひろく 知られて いた 。 それ に サイボーグ 技術 の 発展 が くわわり 、 軍医 の 手 に かかる こと が できれば 、 九 割 は 生命 が 助かる と いう 時代 に 、 今日 で は なって いる 。 むろん 、〝 死んだ ほう が まし 〟 な 状況 を 完全に 追放 する こと は 不可能な のだ が ……。

ともかく 、 帝国 軍 の 兵士 たち に は 一 時 の 平安 が 訪れて いた 。 各 艦 内 の 食堂 に は 陽気な 喧騒 が 渦まいて いる 。 アルコール は 禁止 されて いて も 、 戦闘 と 勝利 に よる 酩酊 感 が 兵士 たち を 支配 し 、 料理 の 味 を 実際 より よく して いた 。 うち の 若い 司令 官 も なかなか やる じゃ ない か 、 と いう ささやき が かわさ れる 。 美貌 が とりえ の 飾り 人形 と 思って いた が 、 どうしてたいした 戦略 家 だ 。 大昔 の ウッド 提督 以来 かも しれ ん な ……。

誰 の ため に 、 なんの ため に 、 見 も 知ら ぬ 相手 と 殺し あう の か 、 と いう 疑問 は 、 その とき 兵士 たち に は なかった 。 生き残った こと と 勝った こと と を 、 彼ら は 単純に よろこんで いた 。 しかし 数 時間 後 に は 、 生き残った 彼ら の うち 、 幾 人 か が あらたな 死者 の 列 に くわわら ねば なら ない のだ 。

Ⅳ 「 四 時 半 の 方角 に 艦 影 見 ゆ 。 識別 不能 」

後衛 部隊 の 駆逐 艦 から 報告 を うけた とき 、 同盟 軍 第 六 艦隊 司令 官 ムーア 中将 は 幕僚 団 と ともに 食事 の 最中 だった 。

小麦 蛋白 の カツレツ に いれた ナイフ を そのまま に 、 中将 は 艦 橋 から の 連絡 士官 を 不機嫌な 目つき で にらみつけた 。 ナイフ より するどい 視線 を つき こまれて 、 士官 は 内心 、 怯えた 。 ムーア 中将 は 豪放だ が 粗野な 人物 と して 世に 知られて いた のだ 。 「 四 時 半 の 方角 だ と ? 」 中将 の 声 は 、 その 目つき に ふさわしい もの だった 。 「 は 、 はい 、 四 時 半 の 方角 です 。 敵 か 味方 か 、 まだ 判別 できません 」 「 ほう 、 どちら の 四 時 半 だ ? 午前 か 、 午後 か 」

いやみ を 言い ながら も 、 ムーア は 食事 を 中断 して 士官 食堂 を でた 。 あわてて つづく 幕僚 たち を かえりみる と 、 たくましく 盛りあがった 肩 を 揺すって み せる 。

「 うろたえ おって ! 敵 が 四 時 半 の 方角 に いる はず が ない で は ない か 。 敵 は 吾々 の 行 手 に いる のだ から な 」

大声 で 中将 は 言った 。

「 吾々 は 戦場 に 急行 して いる 。 かならずや 第 二 艦隊 も 同様の 行動 を とって いる に ちがいない 。 そう であれば 、 敵 を 左右 から 挟 撃 できる 。 勝つ 機会 は 充分に ある のだ 。 いや 、 かならず 勝つ 。 数 から 言って も 態勢 から 言って も ……」

「 ですが 、 閣下 ……」

中将 の 雄弁 を さえぎった の は 、 幕僚 の ひと り 、 ラップ 少佐 だった 。 脂 に 汚れた 口 を ハンカチ で ぬぐって いる 。

「 なんだ !?」

「 敵 は 戦場 を 移動 した の では ありません か 、 どうも そう 思わ れます が ……」 「 第 四 艦隊 を 放置 して か ? 」 「 申しあげ にくい こと です が 、 第 四 艦隊 は すでに 敗退 した と 小 官 は 予測 します 」 中将 は 太 すぎる 眉 を しかめた 。

「 大胆で 、 しかも 不愉快な 予想 だ な 、 少佐 。 脂 で 口 が なめらかに なった と みえる 」

赤面 して 、 ラップ 少佐 は ハンカチ を しまった 。

一同 は その とき 艦 内 走 路 に 乗って 艦 橋 に 到着 して いた が 、 不意に よろめき そうに なった 。 ほんの 一瞬 、 重力 制御 システム に 修正 の 時差 が 生じた ため である 。 急激な 方向 転換 を 余儀なく さ れた から であった が 、 エネルギー 測定 装置 は 、 艦 を 破壊 する に たる 指向 性 エネルギー を 外 殻 の すぐ 傍 に 感知 して いた 。

「 右 後 背 より 敵 襲 ! 」 第 六 艦隊 の 通信 回路 は 驚愕 の 悲鳴 に みちた が 、 たちまち 雑音 に とってかわら れた 。 士官 たち は 慄然と した 。 通信 の 混乱 こそ 、 敵 が 至近 距離 に 位置 する と いう 事実 の 、 雄弁な 証明 だった から である 。

「 うろたえる な ! 」 ムーア 中将 の 叱 咤 は 、 半分 、 自分 自身 に むけた もの だった 。 事態 を 甘く みて いた こと にたいする 後悔 が 、 中将 の 分厚い 頰 を したたかに ひっぱたいて いた 。 艦隊 後衛 に は 最 新鋭の 艦艇 を 配置 して い なかった のだ 。 後 背 から の 奇襲 に は とうてい 、 たえ られ ないで あろう 。

後 背 に 帝国 軍 が いる ! と いう こと は 、 第 四 艦隊 は 敗れ さった の か ? それとも 帝国 軍 が 豊富な 別動隊 を 用意 して いた のだろう か 。

「 迎撃 せよ 、 砲門 開け 」

心 に 混乱 を 生じ ながら 、 その 混乱 を 整合 せ ぬ まま に 、 中将 は 最低 限度 の 命令 を くだした 。

老練な メルカッツ 大将 の 指揮 する 帝国 軍 は 、 整然たる 攻撃 態 形 を とって 、 同盟 軍 第 六 艦隊 の 右 後 背 から 襲いかかって いた 。 中性子 ビーム 砲 が 燦 然 たる 死 の 閃光 を 投げつけ 、 同盟 軍 老朽 艦 の 出力 の 弱い 磁場 を 突き破って 艦 体 を 刺し つらぬく 。

めくる めく 火 球 が 常 闇 の なか に 誕生 して は 消えさって いく 情景 を 、 メルカッツ は スクリーン を とおして 見まもって いた 。 四〇 年間 、 見なれて きた 光景 である が 、 この とき の 彼 に は いま まで に ない 感慨 が あった 。

メルカッツ は 、 もはや ラインハルト を たんなる 〝 金髪 の 陶器 人形 〟 と は みて い なかった 。 緒戦 の 勝利 は まぐれ で は ない 。 正確な 洞察 と 判断 を もと に 、 大胆な 発想 転換 が おこなわ れた 、 その 正当な 結果 だった 。 三方 から の 包囲 を うけ ながら 、 包囲 さ れる より 早く 各 個 撃破 の 策 に でる と は !

自分 に は とても でき ない こと だ 。 ふるくから の 戦友 たち も 同様だろう 。 因習 に とらわれ ない 若者 だ から こそ 可能だった のだ 。

もはや 吾々 の ような 老 兵 の 時代 は 去った の かも しれ ない 。 ふと 、 そういう こと まで 考えた 。

その あいだ に も 、 戦闘 は 苛烈 さ を まして いる 。

帝国 軍 は 錐 を も みこむ ように 同盟 軍 の 隊列 に 浸透 し 、 砲戦 に おいて も 格闘 戦 に おいて も 優位に たち つつ あった 。 全軍 が 勢い に のり 、 先制 の 有利 さ を 充分に 生かして いる ようだ 。 同盟 軍 も 必死の 反撃 を しめして は いる が 、 指揮 官 自身 が 混乱 から たちなおれ ないで いる 以上 、たいした 効果 は のぞめ ない 。 「 全 艦隊 、 反転 せよ ! 」 ムーア 中将 は 艦 橋 中央 の 床 に 仁王立ち に なって 叫んだ 。 ようやく 意 を 決した のだ 。 それ まで は やたら どなって いただけ だった 。

「 閣下 ! 反転 さ せて も 混乱 が 生じる だけ です 。

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第 二 章 アスターテ 会戦 (2) だい|ふた|しょう||かいせん 第2章 阿斯塔特之战(2)

彼 の 好み の 回答 を しよう と し ない 、 この 若い 幕僚 に 不 快感 を おぼえ ず に い られ なかった のだ 。 かれ||よしみ||かいとう|||||||わかい|ばくりょう||ふ|かいかん||||||||

中将 は 、 すわる よう ヤン に 身ぶり で しめす と 、 スクリーン に 顔 を むけた 。 ちゅうじょう||||||みぶり||||すくりーん||かお||

Ⅲ 開戦 後 四 時間 。 かいせん|あと|よっ|じかん 同盟 軍 第 四 艦隊 は すでに 艦隊 と 呼称 できる 存在 で は なく なって いる 。 どうめい|ぐん|だい|よっ|かんたい|||かんたい||こしょう||そんざい||||| ととのった 戦闘 態 形 は ない 。 |せんとう|なり|かた|| 統一 さ れた 指揮 系統 も ない 。 とういつ|||しき|けいとう|| 各 処 に 寸断 さ れ 、 孤立 さ せ られ 、 各 艦 単位 の 絶望 的な 抵抗 が 散発 する だけ と なって いた 。 かく|しょ||すんだん|||こりつ||||かく|かん|たんい||ぜつぼう|てきな|ていこう||さんぱつ|||||

旗 艦 レオニダス は 巨大な 金属 の 塊 と 化して 、 虚 空 を さまよって いる 。 き|かん|||きょだいな|きんぞく||かたまり||かして|きょ|から||| その 艦 内 に は すでに 生命 は 存在 し なかった 。 |かん|うち||||せいめい||そんざい||

司令 官 パストーレ 中将 の 肉体 は 、 艦 橋 部 が 敵 の 集中 砲火 を うけて 外 殻 に 大きな 亀裂 が 生じた 瞬間 、 内外 の 気圧 差 に よって 真空 中 に 吸いだされて いた 。 しれい|かん||ちゅうじょう||にくたい||かん|きょう|ぶ||てき||しゅうちゅう|ほうか|||がい|から||おおきな|きれつ||しょうじた|しゅんかん|ないがい||きあつ|さ|||しんくう|なか||すいだされて| その 死体 が どのような かたち に なって どこ の 空間 を 漂って いる か 、 誰 も 知ら ない 。 |したい||||||||くうかん||ただよって|||だれ||しら|

いっぽう 、 ラインハルト は この 段階 に おける 完全な 勝利 を つかんだ こと を 知っていた 。 ||||だんかい|||かんぜんな|しょうり|||||しっていた メルカッツ から 通信 スクリーン を つうじて 報告 が もたらさ れた 。 ||つうしん|すくりーん|||ほうこく|||

「 組織 的な 抵抗 は 終わり ました 。 そしき|てきな|ていこう||おわり| 以後 、 掃討 戦 に うつる こと に なります が ……」 いご|そうとう|いくさ|||||| 「 無用だ 」 むようだ

「 は ? 」 メルカッツ は 細い 両眼 を いっそう 細めた 。 ||ほそい|りょうがん|||ほそめた 「 戦い は 三 分 の 一 が 終わった ばかりだ 。 たたかい||みっ|ぶん||ひと||おわった| 残 敵 など 放置 して おいて よい 。 ざん|てき||ほうち||| つぎの 戦闘 に そなえて 戦力 を 温存 して おく こと だ 。 |せんとう|||せんりょく||おんぞん|||| おって 指示 を だす 。 |しじ|| それ まで に 態 形 を ととのえて おけ 」 |||なり|かた|||

「 わかり ました 。 司令 官 閣下 」 しれい|かん|かっか

おもおもしく うなずく と 、 メルカッツ の 姿 は 通信 スクリーン から 消えた 。 |||||すがた||つうしん|すくりーん||きえた

ラインハルト は 赤毛 の 高級 副 官 を かえりみた 。 ||あかげ||こうきゅう|ふく|かん||

「 すこし は 態度 が 変わった な 、 彼 も 」 ||たいど||かわった||かれ|

「 ええ 、 変わら ざる を え ない でしょう 」 |かわら|||||

緒戦 に おける この 勝利 は 大きい 、 と キルヒアイス は 思った 。 しょせん||||しょうり||おおきい||||おもった ラインハルト の 戦略 構想 が 功 を 奏した こと を 、 諸 提督 も 認め ざる を え ない し 、 兵 は 活気づく 。 ||せんりゃく|こうそう||いさお||そうした|||しょ|ていとく||みとめ||||||つわもの||かっきづく 敵 は 必勝 の 態勢 を 破られて 動揺 する だろう 。 てき||ひっしょう||たいせい||やぶられて|どうよう|| 「 つぎに 左右 どちら の 艦隊 を 攻撃 す べきだ と 思う 、 キルヒアイス ? |さゆう|||かんたい||こうげき||||おもう| 」 「 どちら の 側 背 に まわる こと も 可能です が 、 お 考え は 決して おりましょう ? ||がわ|せ|||||かのう です|||かんがえ||けっして| 」 「 まあ な 」 「 右 方 に 位置 する 第 六 艦隊 の ほう が 兵力 が す くのう ございます ね 」 みぎ|かた||いち||だい|むっ|かんたい||||へいりょく|||||

「 その とおり だ 」

金髪 の 若い 指揮 官 の 口 もと に 会心 の 微笑 が 浮かんだ 。 きんぱつ||わかい|しき|かん||くち|||かいしん||びしょう||うかんだ

「 敵 が 予測 して いる かも しれません 、 それ だけ が いささか 心配です が ……」 てき||よそく|||||||||しんぱい です| ラインハルト はか ぶり を ふった 。

「 その お それ は ない 。 それ と 察して いれば 、 分 進 合 撃 戦法 を 続行 したり は し ない だろう 。 ||さっして||ぶん|すすむ|ごう|う|せんぽう||ぞっこう||||| 可能な かぎり 早く 合流 を はかる はずだ 。 かのうな||はやく|ごうりゅう||| 合計 すれば まだ わが 軍 より はるかに 優勢な のだ から な 。 ごうけい||||ぐん|||ゆうせいな||| それ を し ない の は 、 わが 軍 の 意図 を いまだに 諒 解して いない 証拠 だ 。 |||||||ぐん||いと|||りょう|かいして||しょうこ| 敵 第 六 艦隊 の 右側 背 に まわって 攻撃 を かける 。 てき|だい|むっ|かんたい||みぎがわ|せ|||こうげき|| 何 時間 ほど 必要だ ? なん|じかん||ひつようだ 」 「 四 時間 弱 です 」 よっ|じかん|じゃく| 「 こいつ 、 もう 計算 して いた な 」 ||けいさん|||

ラインハルト は もう 一度に こり と 笑った 。 |||いちどに|||わらった 笑う と 、 少年 の 表情 に なる 。 わらう||しょうねん||ひょうじょう|| だが たちまち 微笑 を 消した の は 、 彼 を 凝視 する いく つ か の 視線 に 気 が ついた から であった 。 ||びしょう||けした|||かれ||ぎょうし||||||しせん||き|||| キルヒアイス 以外 の 者 にたいして は 、 ラインハルト は 容易に 笑顔 を みせ ない 。 |いがい||もの|||||よういに|えがお||| 「 その むね を 全 艦隊 に 伝達 しろ 。 |||ぜん|かんたい||でんたつ| 時計 方向 に 針路 を 変更 し つつ すすみ 、 敵 第 六 艦隊 の 右側 背 から 攻撃 する 」 とけい|ほうこう||しんろ||へんこう||||てき|だい|むっ|かんたい||みぎがわ|せ||こうげき|

「 かしこまり ました 」

キルヒアイス は 応えた が 、 なに か 言い た げ に 金髪 の 上官 を 見て いる 。 ||こたえた||||いい||||きんぱつ||じょうかん||みて| ラインハルト は 不審 そうに 眉 を よせて 相手 を 見かえした 。 ||ふしん|そう に|まゆ|||あいて||みかえした

「 なに か 異議 で も ある の か ? ||いぎ||||| 」 「 いえ 、 そう では ありません 。 時間 的 余裕 が あります し 、 兵士 たち に 休息 を とら せて は いかが か と 思います が ……」 じかん|てき|よゆう||||へいし|||きゅうそく||||||||おもいます| 「 ああ 、 そう だ な 、 気づか なかった 」 ||||きづか|

ラインハルト は 兵士 に 一 時間 半 ずつ 二 交替 で 休息 さ せ 、 その 間 に 食事 と タンク ・ ベッド 入り を すませる よう 、 命令 を 伝達 さ せた 。 ||へいし||ひと|じかん|はん||ふた|こうたい||きゅうそく||||あいだ||しょくじ||たんく|べっど|はいり||||めいれい||でんたつ||

タンク ・ ベッド と は 軽い プラスチック 製 の 密閉 式 タンク 内 に 水深 三〇 センチ の 濃い 塩 水 を たたえた もの で 、 水温 は 三二 度 C に たもたれて いる 。 たんく|べっど|||かるい|ぷらすちっく|せい||みっぺい|しき|たんく|うち||すいしん|みっ|せんち||こい|しお|すい|||||すいおん||さんに|たび|||| この 内部 に 身体 を 横たえて 浮かんで いる と 、 色彩 、 光熱 、 音響 など 外界 の 刺激 から 隔離 さ れ 、 完全に 静穏 な 状態 に おか れる 。 |ないぶ||からだ||よこたえて|うかんで|||しきさい|こうねつ|おんきょう||がいかい||しげき||かくり|||かんぜんに|せいおん||じょうたい||| 一 時間 を タンク 内 で すごした 場合 、 身 心 の リフレッシュ 効果 は 八 時間 の 熟睡 に 匹敵 する と いわ れる 。 ひと|じかん||たんく|うち|||ばあい|み|こころ|||こうか||やっ|じかん||じゅくすい||ひってき|||| 戦闘 で 身 心 を 消耗 さ せた 兵士 たち を 短 時間 で 回復 さ せる のに 、 これ 以上 の 存在 は ない 。 せんとう||み|こころ||しょうもう|||へいし|||みじか|じかん||かいふく|||||いじょう||そんざい||

小 部隊 で タンク ・ ベッド の 設備 を 欠く 場合 、 覚醒 効果 を もつ 薬剤 を 使用 する こと が ある が 、 これ は しばしば 人体 に 危険 を およぼす だけ で なく 、 軍隊 組織 そのもの に 悪 影響 が ある 。 しょう|ぶたい||たんく|べっど||せつび||かく|ばあい|かくせい|こうか|||やくざい||しよう|||||||||じんたい||きけん||||||ぐんたい|そしき|その もの||あく|えいきょう|| 薬物 中毒 の 兵士 など 、 人 的 資源 と して まったく 価値 が ない のだ 。 やくぶつ|ちゅうどく||へいし||じん|てき|しげん||||かち||| したがって 、 この 手段 が もちいられる の は 最悪の 場合 である 。 ||しゅだん|||||さいあくの|ばあい| 負傷 者 にたいする 治療 も おこなわ れた 。 ふしょう|もの||ちりょう||| 電子 が 人体 細胞 を 活性 化 さ せ 、 自然 治癒 能力 を 飛躍 的に 高める こと は 、 西暦 一九〇〇 年 代 の すえ に は ひろく 知られて いた 。 でんし||じんたい|さいぼう||かっせい|か|||しぜん|ちゆ|のうりょく||ひやく|てきに|たかめる|||せいれき|いちきゅう|とし|だい||||||しられて| それ に サイボーグ 技術 の 発展 が くわわり 、 軍医 の 手 に かかる こと が できれば 、 九 割 は 生命 が 助かる と いう 時代 に 、 今日 で は なって いる 。 |||ぎじゅつ||はってん|||ぐんい||て||||||ここの|わり||せいめい||たすかる|||じだい||きょう|||| むろん 、〝 死んだ ほう が まし 〟 な 状況 を 完全に 追放 する こと は 不可能な のだ が ……。 |しんだ|||||じょうきょう||かんぜんに|ついほう||||ふかのうな|| Of course, it is impossible to completely exile the obscene situation if you die.

ともかく 、 帝国 軍 の 兵士 たち に は 一 時 の 平安 が 訪れて いた 。 |ていこく|ぐん||へいし||||ひと|じ||へいあん||おとずれて| 各 艦 内 の 食堂 に は 陽気な 喧騒 が 渦まいて いる 。 かく|かん|うち||しょくどう|||ようきな|けんそう||うずまいて| アルコール は 禁止 されて いて も 、 戦闘 と 勝利 に よる 酩酊 感 が 兵士 たち を 支配 し 、 料理 の 味 を 実際 より よく して いた 。 あるこーる||きんし||||せんとう||しょうり|||めいてい|かん||へいし|||しはい||りょうり||あじ||じっさい|||| うち の 若い 司令 官 も なかなか やる じゃ ない か 、 と いう ささやき が かわさ れる 。 ||わかい|しれい|かん|||||||||||| 美貌 が とりえ の 飾り 人形 と 思って いた が 、 どうしてたいした 戦略 家 だ 。 びぼう||||かざり|にんぎょう||おもって||||せんりゃく|いえ| 大昔 の ウッド 提督 以来 かも しれ ん な ……。 おおむかし|||ていとく|いらい||||

誰 の ため に 、 なんの ため に 、 見 も 知ら ぬ 相手 と 殺し あう の か 、 と いう 疑問 は 、 その とき 兵士 たち に は なかった 。 だれ|||||||み||しら||あいて||ころし||||||ぎもん||||へいし|||| 生き残った こと と 勝った こと と を 、 彼ら は 単純に よろこんで いた 。 いきのこった|||かった||||かれら||たんじゅんに|| しかし 数 時間 後 に は 、 生き残った 彼ら の うち 、 幾 人 か が あらたな 死者 の 列 に くわわら ねば なら ない のだ 。 |すう|じかん|あと|||いきのこった|かれら|||いく|じん||||ししゃ||れつ||||||

Ⅳ 「 四 時 半 の 方角 に 艦 影 見 ゆ 。 よっ|じ|はん||ほうがく||かん|かげ|み| 識別 不能 」 しきべつ|ふのう

後衛 部隊 の 駆逐 艦 から 報告 を うけた とき 、 同盟 軍 第 六 艦隊 司令 官 ムーア 中将 は 幕僚 団 と ともに 食事 の 最中 だった 。 こうえい|ぶたい||くちく|かん||ほうこく||||どうめい|ぐん|だい|むっ|かんたい|しれい|かん|むーあ|ちゅうじょう||ばくりょう|だん|||しょくじ||さい なか|

小麦 蛋白 の カツレツ に いれた ナイフ を そのまま に 、 中将 は 艦 橋 から の 連絡 士官 を 不機嫌な 目つき で にらみつけた 。 こむぎ|たんぱく|||||ないふ||||ちゅうじょう||かん|きょう|||れんらく|しかん||ふきげんな|めつき|| ナイフ より するどい 視線 を つき こまれて 、 士官 は 内心 、 怯えた 。 ないふ|||しせん||||しかん||ないしん|おびえた ムーア 中将 は 豪放だ が 粗野な 人物 と して 世に 知られて いた のだ 。 むーあ|ちゅうじょう||ごうほうだ||そやな|じんぶつ|||よに|しられて|| 「 四 時 半 の 方角 だ と ? よっ|じ|はん||ほうがく|| 」 中将 の 声 は 、 その 目つき に ふさわしい もの だった 。 ちゅうじょう||こえ|||めつき|||| 「 は 、 はい 、 四 時 半 の 方角 です 。 ||よっ|じ|はん||ほうがく| 敵 か 味方 か 、 まだ 判別 できません 」 てき||みかた|||はんべつ| 「 ほう 、 どちら の 四 時 半 だ ? |||よっ|じ|はん| 午前 か 、 午後 か 」 ごぜん||ごご|

いやみ を 言い ながら も 、 ムーア は 食事 を 中断 して 士官 食堂 を でた 。 ||いい|||むーあ||しょくじ||ちゅうだん||しかん|しょくどう|| あわてて つづく 幕僚 たち を かえりみる と 、 たくましく 盛りあがった 肩 を 揺すって み せる 。 ||ばくりょう||||||もりあがった|かた||ゆすって||

「 うろたえ おって ! 敵 が 四 時 半 の 方角 に いる はず が ない で は ない か 。 てき||よっ|じ|はん||ほうがく||||||||| 敵 は 吾々 の 行 手 に いる のだ から な 」 てき||われ々||ぎょう|て|||||

大声 で 中将 は 言った 。 おおごえ||ちゅうじょう||いった

「 吾々 は 戦場 に 急行 して いる 。 われ々||せんじょう||きゅうこう|| かならずや 第 二 艦隊 も 同様の 行動 を とって いる に ちがいない 。 |だい|ふた|かんたい||どうようの|こうどう||||| そう であれば 、 敵 を 左右 から 挟 撃 できる 。 ||てき||さゆう||はさ|う| 勝つ 機会 は 充分に ある のだ 。 かつ|きかい||じゅうぶんに|| いや 、 かならず 勝つ 。 ||かつ 数 から 言って も 態勢 から 言って も ……」 すう||いって||たいせい||いって|

「 ですが 、 閣下 ……」 |かっか

中将 の 雄弁 を さえぎった の は 、 幕僚 の ひと り 、 ラップ 少佐 だった 。 ちゅうじょう||ゆうべん|||||ばくりょう||||らっぷ|しょうさ| 脂 に 汚れた 口 を ハンカチ で ぬぐって いる 。 あぶら||けがれた|くち||はんかち|||

「 なんだ !?」

「 敵 は 戦場 を 移動 した の では ありません か 、 どうも そう 思わ れます が ……」 てき||せんじょう||いどう||||||||おもわ|| 「 第 四 艦隊 を 放置 して か ? だい|よっ|かんたい||ほうち|| 」 「 申しあげ にくい こと です が 、 第 四 艦隊 は すでに 敗退 した と 小 官 は 予測 します 」 もうしあげ|||||だい|よっ|かんたい|||はいたい|||しょう|かん||よそく| 中将 は 太 すぎる 眉 を しかめた 。 ちゅうじょう||ふと||まゆ||

「 大胆で 、 しかも 不愉快な 予想 だ な 、 少佐 。 だいたんで||ふゆかいな|よそう|||しょうさ 脂 で 口 が なめらかに なった と みえる 」 あぶら||くち|||||

赤面 して 、 ラップ 少佐 は ハンカチ を しまった 。 せきめん||らっぷ|しょうさ||はんかち||

一同 は その とき 艦 内 走 路 に 乗って 艦 橋 に 到着 して いた が 、 不意に よろめき そうに なった 。 いちどう||||かん|うち|はし|じ||のって|かん|きょう||とうちゃく||||ふいに||そう に| ほんの 一瞬 、 重力 制御 システム に 修正 の 時差 が 生じた ため である 。 |いっしゅん|じゅうりょく|せいぎょ|しすてむ||しゅうせい||じさ||しょうじた|| 急激な 方向 転換 を 余儀なく さ れた から であった が 、 エネルギー 測定 装置 は 、 艦 を 破壊 する に たる 指向 性 エネルギー を 外 殻 の すぐ 傍 に 感知 して いた 。 きゅうげきな|ほうこう|てんかん||よぎなく||||||えねるぎー|そくてい|そうち||かん||はかい||||しこう|せい|えねるぎー||がい|から|||そば||かんち||

「 右 後 背 より 敵 襲 ! みぎ|あと|せ||てき|おそ 」 第 六 艦隊 の 通信 回路 は 驚愕 の 悲鳴 に みちた が 、 たちまち 雑音 に とってかわら れた 。 だい|むっ|かんたい||つうしん|かいろ||きょうがく||ひめい|||||ざつおん||| 士官 たち は 慄然と した 。 しかん|||りつぜんと| 通信 の 混乱 こそ 、 敵 が 至近 距離 に 位置 する と いう 事実 の 、 雄弁な 証明 だった から である 。 つうしん||こんらん||てき||しきん|きょり||いち||||じじつ||ゆうべんな|しょうめい|||

「 うろたえる な ! 」 ムーア 中将 の 叱 咤 は 、 半分 、 自分 自身 に むけた もの だった 。 むーあ|ちゅうじょう||しか|た||はんぶん|じぶん|じしん|||| 事態 を 甘く みて いた こと にたいする 後悔 が 、 中将 の 分厚い 頰 を したたかに ひっぱたいて いた 。 じたい||あまく|||||こうかい||ちゅうじょう||ぶあつい||||| 艦隊 後衛 に は 最 新鋭の 艦艇 を 配置 して い なかった のだ 。 かんたい|こうえい|||さい|しんえいの|かんてい||はいち|||| 後 背 から の 奇襲 に は とうてい 、 たえ られ ないで あろう 。 あと|せ|||きしゅう|||||||

後 背 に 帝国 軍 が いる ! あと|せ||ていこく|ぐん|| と いう こと は 、 第 四 艦隊 は 敗れ さった の か ? ||||だい|よっ|かんたい||やぶれ||| それとも 帝国 軍 が 豊富な 別動隊 を 用意 して いた のだろう か 。 |ていこく|ぐん||ほうふな|べつどうたい||ようい||||

「 迎撃 せよ 、 砲門 開け 」 げいげき||ほうもん|あけ

心 に 混乱 を 生じ ながら 、 その 混乱 を 整合 せ ぬ まま に 、 中将 は 最低 限度 の 命令 を くだした 。 こころ||こんらん||しょうじ|||こんらん||せいごう|||||ちゅうじょう||さいてい|げんど||めいれい||

老練な メルカッツ 大将 の 指揮 する 帝国 軍 は 、 整然たる 攻撃 態 形 を とって 、 同盟 軍 第 六 艦隊 の 右 後 背 から 襲いかかって いた 。 ろうれんな||たいしょう||しき||ていこく|ぐん||せいぜんたる|こうげき|なり|かた|||どうめい|ぐん|だい|むっ|かんたい||みぎ|あと|せ||おそいかかって| 中性子 ビーム 砲 が 燦 然 たる 死 の 閃光 を 投げつけ 、 同盟 軍 老朽 艦 の 出力 の 弱い 磁場 を 突き破って 艦 体 を 刺し つらぬく 。 ちゅうせいし||ほう||さん|ぜん||し||せんこう||なげつけ|どうめい|ぐん|ろうきゅう|かん||しゅつりょく||よわい|じば||つきやぶって|かん|からだ||さし|

めくる めく 火 球 が 常 闇 の なか に 誕生 して は 消えさって いく 情景 を 、 メルカッツ は スクリーン を とおして 見まもって いた 。 ||ひ|たま||とわ|やみ||||たんじょう|||きえさって||じょうけい||||すくりーん|||みまもって| 四〇 年間 、 見なれて きた 光景 である が 、 この とき の 彼 に は いま まで に ない 感慨 が あった 。 よっ|ねんかん|みなれて||こうけい||||||かれ|||||||かんがい||

メルカッツ は 、 もはや ラインハルト を たんなる 〝 金髪 の 陶器 人形 〟 と は みて い なかった 。 ||||||きんぱつ||とうき|にんぎょう||||| 緒戦 の 勝利 は まぐれ で は ない 。 しょせん||しょうり||||| 正確な 洞察 と 判断 を もと に 、 大胆な 発想 転換 が おこなわ れた 、 その 正当な 結果 だった 。 せいかくな|どうさつ||はんだん||||だいたんな|はっそう|てんかん|||||せいとうな|けっか| 三方 から の 包囲 を うけ ながら 、 包囲 さ れる より 早く 各 個 撃破 の 策 に でる と は ! さんぼう|||ほうい||||ほうい||||はやく|かく|こ|げきは||さく||||

自分 に は とても でき ない こと だ 。 じぶん||||||| ふるくから の 戦友 たち も 同様だろう 。 ||せんゆう|||どうようだろう 因習 に とらわれ ない 若者 だ から こそ 可能だった のだ 。 いんしゅう||||わかもの||||かのうだった|

もはや 吾々 の ような 老 兵 の 時代 は 去った の かも しれ ない 。 |われ々|||ろう|つわもの||じだい||さった|||| ふと 、 そういう こと まで 考えた 。 ||||かんがえた

その あいだ に も 、 戦闘 は 苛烈 さ を まして いる 。 ||||せんとう||かれつ||||

帝国 軍 は 錐 を も みこむ ように 同盟 軍 の 隊列 に 浸透 し 、 砲戦 に おいて も 格闘 戦 に おいて も 優位に たち つつ あった 。 ていこく|ぐん||きり||||よう に|どうめい|ぐん||たいれつ||しんとう||ほうせん||||かくとう|いくさ||||ゆういに||| 全軍 が 勢い に のり 、 先制 の 有利 さ を 充分に 生かして いる ようだ 。 ぜんぐん||いきおい|||せんせい||ゆうり|||じゅうぶんに|いかして|| 同盟 軍 も 必死の 反撃 を しめして は いる が 、 指揮 官 自身 が 混乱 から たちなおれ ないで いる 以上 、たいした 効果 は のぞめ ない 。 どうめい|ぐん||ひっしの|はんげき||||||しき|かん|じしん||こんらん|||||いじょう||こうか||| 「 全 艦隊 、 反転 せよ ! ぜん|かんたい|はんてん| 」 ムーア 中将 は 艦 橋 中央 の 床 に 仁王立ち に なって 叫んだ 。 むーあ|ちゅうじょう||かん|きょう|ちゅうおう||とこ||におうだち|||さけんだ ようやく 意 を 決した のだ 。 |い||けっした| それ まで は やたら どなって いただけ だった 。

「 閣下 ! かっか 反転 さ せて も 混乱 が 生じる だけ です 。 はんてん||||こんらん||しょうじる||