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銀河英雄伝説 01黎明篇, 第六章 それぞれの星 (1)

第 六 章 それぞれ の 星 (1)

Ⅰ イゼルローン 要塞 陥落 ! 凶 報 は 銀河 帝国 を 震撼 さ せた 。

「 イゼルローン は 難 攻 不 落 で は なかった の か 」

軍務 尚 書 エーレンベルク 元帥 は 蒼白な 顔 で つぶやいた きり 執務 卓 の 前 を うごこう と し なかった 。

「 信じ られ ぬ 、 誤報 で は ない の か 」

帝国 軍 統帥 本部 総長 シュタインホフ 元帥 は かすれ 声 で うめき 、 事実 を 確認 した あと 、 沈黙 の 砦 に たてこもって しまった 。

国政 にたいして 無関心 無気力 だった 皇帝 フリードリヒ 四 世 まで が 、 宮内 尚 書 ノイケルン を 介して 国務 尚 書 リヒテンラーデ 侯 に 事態 の 説明 を 要求 して きた と いう 。 「 帝国 領土 は 外敵 にたいし 神聖 不可侵 で なければ なら ず 、 また 事実 そう であり ました 。 にもかかわらず 、 今日 、 かく の ごとき 事態 を 招き 、 陛下 の 宸襟 を 騒がせ たてまつり ました こと は 臣 の 不明の いたします ところ 、 まことに 慚愧 の 念 に たえ ませ ぬ 」 恐 懼 して 侯 は 奉 答 した と 伝え られた 。

「 おかしな 議論 だ な 、 キルヒアイス 」

元帥 府 の 執務 室 で 、 ローエングラム 伯 ラインハルト は 腹心 の 友 に 語りかけた 。

「 帝国 領土 は 寸 土 と いえ ども 外敵 に 侵されて は なら ぬ もの だ そうだ 。 叛乱 軍 が いつ から 対等の 外部 勢力 に なった のだ ? 現実 を 見 ない から 矛盾 を きたす こと に なる の さ 」

元帥 府 を 開設 し 、 帝国 宇宙 艦隊 の 半数 を 指揮 下 に おさめた ラインハルト は 、 人事 に 腐心 する 毎日 だった 。

基本 方針 と して 、 下級 貴族 や 平民 出身 の 若い 士官 を 登用 する こと が あり 、 一線級 の 指揮 官 の 平均 年齢 は 大幅に さがった 。 ウォルフガング ・ ミッターマイヤー 、 オスカー ・ フォン ・ ロイエンタール 、 カール ・ グスタフ ・ ケンプ 、 フリッツ ・ ヨーゼフ ・ ビッテンフェルト など 、 少 壮 気鋭 の 士官 たち が あらたに 提督 の 称号 を おび 、 元帥 府 に は 若々しい 活力 と 覇気 が みちる こと に なった のである 。

だが 、 ここ 数 日 、 ラインハルト は 不満 を 禁じ え ないで いた 。 勇敢で 戦術 能力 に 富んだ 前線 指揮 官 は そろえた が 、 参謀 役 を 見いだす こと が でき ない のである 。

士官 学校 で 優等 生 だった 貴族 出身 の 参謀 将校 など に 、 ラインハルト は 期待 して い なかった 。 軍事 能力 は 学校 教育 で 育つ もの で は ない こと を 彼 は 知っていた 。 彼 自身 が そう である ように 、 天性 の 軍人 が 学校 秀才 である こと は あって も 、 その 逆 は あり え ない のである 。

キルヒアイス を 参謀 役 に は でき なかった 。 彼 に は ラインハルト の 分身 と して とき に は 数 個 艦隊 を 指揮 統率 さ せ ねば なら ない 。 ラインハルト と ともに ある とき は 大局 を 見て 決断 を ともに して もらう 。 それ が 腹心 の はたす べき 責務 だった 。

過日 、 ラインハルト は カストロプ 星 系 に おける 動乱 に 際し 、 キルヒアイス を 彼 の 代理人 と して 出征 さ せた 。 キルヒアイス に 独自の 功績 を たて させ 、 彼 を ラインハルト 軍団 の 副 司令 官 と して 衆 目 に 認め させる ため の 措置 であった 。

ラインハルト は 、 国務 尚 書 の リヒテンラーデ 侯 に 、 キルヒアイス に 勅命 が くだる よう 依頼 した 。

最初 、 リヒテンラーデ 侯 は 好 い 顔 を し なかった 。 ところが 侯 の 政務 補佐 官 に ワイツ と いう 人物 が いて 、 この 男 が 侯 に 意見 を 具申 した 。

「 よい では ありません か 。 キルヒアイス 少将 は ローエングラム 伯 の 腹心 中 の 腹心 です 。 討伐 に 成功 した とき に は 褒賞 を あたえて 恩 を 売って おけば 、 後日 、 なにかと 益 に なりましょう 。 また 失敗 した ところ で 、 それ は 彼 を 推挙 した ローエングラム 伯 の 責任 と いう こと に なります 。 あらためて 伯 に 討伐 を 命じれば すむ こと です し 、 一 度 は 部下 が 失敗 した と なれば 、 伯 も 功 を 誇って ばかり は いら れます まい 」 「 なるほど 、 その とおり だ 」

侯 は 納得 し 、 キルヒアイス に カストロプ 討伐 の 勅命 が くだる よう 手続き を とった 。 ラインハルト が ワイツ に ひそかに 金品 を 贈って 、 そう 具申 する ように 依頼 した こと まで は 、 侯 は 知ら ない 。

こうして キルヒアイス は 勅命 を うけた 。 それ は 帝国 軍人 と して 箔 が ついた こと を 意味 する 。 ラインハルト の 元帥 府 に おいて 、 彼 は 階級 を おなじく する 同僚 たち に 抜きんで 、 ナンバー 2 の 位置 を 公的に 認められる こと に なった 。 もっとも それ は 形式 上 の こと に すぎ ない 。 それ を 実質 化 する に は 、 キルヒアイス は 実質 的な 武 勲 を たてる 必要 が あった 。

カストロプ 星 系 の 動乱 の 起因 は つぎ の ような しだい である 。

この 年 、 カストロプ 公 オイゲン が 自家 用 宇宙 船 の 事故 で 不慮 の 死 を とげた 。

彼 は 貴族 と して その 私 領 に おける 徴税 権 を 有し 、 当然 、 ゆたかな 富 力 を 誇って いた が 、 朝廷 の 重臣 と して も 前後 一五 年 に わたり 財務 尚 書 の 職 に あった 。 その 間 、 職権 を 利して 蓄財 に 努め 、 不名誉な 疑獄 事件 に 関係 した こと も たびたび だった が 、 貴族 の 犯罪 にたいする 法 網 は いたって 目 が あらく 、 その 目 すら まぬがれ え ない ように なる と 、 権力 と 富 力 を 巧妙に 駆使 して 処罰 の 手 を のがれて きた のである 。 当時 の 司法 尚 書 ルーゲ 伯 が 、〝 みごとな 奇術 〟 と 皮肉った ほど で 、 おなじ 門 閥 貴族 の 眼 から 見て も 、 その 特権 濫用 は 度 が すぎて いた 。 帝政 の 支柱 と して 、 もう すこし 公人 と して の 法則 を まもって もらわ なくて は こまる 。 ひと り の 重臣 にたいする 民衆 の 不満 は 、 体制 全体 にたいする 不信 に 、 容易に 増幅 する のだ 。 その カストロプ 公 が 死んだ 。 帝国 の 財務 、 司法 の 両 省 に とって は 歓迎 す べき チャンス と いえた 。 あえて 死者 を 鞭打つ べきだ 。 大 貴族 と いえ ども けっして 法 の 支配 を まぬがれる こと は でき ない のだ 、 と 民衆 に 知ら しめ 、 貴族 たち の なか に 無数に 存在 する 小 カストロプ ども を 牽制 し 、 もって 帝国 の 法 と 行政 の 威 を しめさ なくて は なら ない 。 まして 生前 、 カストロプ 公 が 私物 化 した 公金 や うけとった 賄賂 は 莫大な 額 に のぼる はずで 、 これ を 国庫 に おさめた とき 、 軍事 費 の 圧迫 に 苦しむ 財政 は 一時的に 息 を つける であろう 。

財務 官僚 の なか に は 、 貴族 にたいする 課税 を 口 に する 者 も いた が 、 それ は ルドルフ 大帝 以来 の 国是 を 変更 する こと に なり 、 叛乱 や 宮廷 革命 を 招き かね なかった 。 だが 、 カストロプ 公 個人 が 対象 であれば 貴族 たち の 反対 も すくない 。

財務 省 の 調査 官 が カストロプ に 派遣 さ れた 。 そこ で トラブル が 発生 した のである 。

カストロプ 公 に は マクシミリアン と いう 息子 が あり 、 国務 尚 書 を つうじて 皇帝 から 認可 が おり しだい 、 亡父 の 爵位 と 資産 を 相続 する こと に なって いた 。 だが 、 そのような 事情 の ため 、 国務 尚 書 リヒテンラーデ 侯 は 相続 手続き を 延期 し 、 財務 省 の 調査 が 終了 した 時点 で 、 先代 の オイゲン が 不当に 取得 した 部分 を はぶいて 資産 相続 を 認める こと に した のだった 。

マクシミリアン は それ に 反発 した 。 重臣 、 大 貴族 の 子弟 と して 特権 と 富 を むさぼって きた 利己 的な 青年 は 、 亡父 が もって いた 悪い 意味 で の 政治 力 すら もちあわせて い なかった 。 彼 は 財務 省 の 調査 官 に 猟犬 を けしかけて おいはらった 。 この 猟犬 と いう の が 、 DNA 処理 に よって 頭部 に 円錐 状 の 角 を もつ ように なった 有 角 犬 で 、 貴族 権力 の 暴力 的な 一面 を 象徴 する 凶暴な 獣 だった のだ 。

自分 の 行為 が 、 威信 を 重視 する 帝国 政府 の 横 面 を ひっぱたいた と いう こと に 、 想像 力 の 欠落 した 青年 は まるで 気づか なかった 。 しかし ひっぱ たかれ たほう で は 、 屈辱 を そのまま 甘受 して は い なかった 。

再度 派遣 さ れた 調査 官 も 無法に おいはらわ れる と 、 財務 尚 書 ゲルラッハ 子爵 は 国務 尚 書 に マクシミリアン を 宮廷 に 呼びつける よう 要請 した 。

手厳しい 調子 の 呼出 状 を うけとった とき 、 マクシミリアン は 初めて 自分 の 行為 が 問題 視 されて いる こと を 知った 。 そう なる と 、 バランス の とれた 判断 力 を 欠く だけ に 、 彼 は 極端な 恐怖 に かられた 。 帝国 首都 に おもむけば 二度と 還れ ない もの と 思いこんだ のである 。

カストロプ 公爵 家 に は 当然 ながら 多く の 親族 や 姻戚 が おり 、 事態 を 憂慮 した 彼ら は あいだ に たって 調停 を 試みた が 、 マクシミリアン の 猜 疑心 を 刺激 した だけ だった 。

彼 の 親族 の ひと り で 温和な 人柄 を 評価 さ れる マリーンドルフ 伯 フランツ が 、 説得 に おもむいて そのまま 監禁 されて しまう と 、 平和 的な 解決 は 絶望 的 と なった 。 完全に 血迷った マクシミリアン は 公 領 の 警備 隊 を 中心 に 私 兵 を 集め だ し 、 帝国 政府 は 討伐 軍 の 派遣 を 決定 した 。

シュムーデ 提督 の 指揮 する 艦隊 が オーディン を 進 発した の は 、 アスターテ 星 域 に おける 帝国 同盟 両軍 の 衝突 と 、 ほぼ 同 時期 である 。 ―― そして この 第 一 次 討伐 軍 が 敗北 する のだ 。

社会 人 と して 落第 の マクシミリアン が 、 純 軍事 的に は ある 程度 の 才能 を 有して いた こと 、 討伐 軍 が 敵 を 軽視 して 、 ろくに 作戦 も たて ず に 戦い に 臨んだ こと など 、 いく つ か の 理由 が その 結果 を もたらした のだ が 、 ともかく この 討伐 軍 は 強引に 着陸 した ところ を 奇襲 さ れ 、 シュムーデ 提督 が 戦死 して しまう 。

二 度 め の 討伐 軍 も 失敗 する と 、 図 に のった マクシミリアン は 、 隣接 する マリーンドルフ 伯領 を 併合 し 、 帝国 の 一角 に 半 独立 の 地方 王国 を 建設 しよう と はかった 。 当主 の フランツ は マクシミリアン に 監禁 されて いた が 、 侵攻 して きた マクシミリアン 軍 を マリーンドルフ 伯爵 家 の 警備 隊 は 善戦 して さ さえ 、 オーディン に 救援 を 依頼 した 。 このような 状況 の もと に 、 キルヒアイス が 乱 の 鎮定 を 命じ られた のである 。 そして 彼 は 、 半年 に わたった 乱 を 十 日間 で 鎮定 する こと に 成功 した のだった 。

まず 、 キルヒアイス は 、 マリーンドルフ 伯領 に 救援 に おもむく 情況 を しめして おき 、 急転 して カストロプ 公 領 を ついた 。 驚愕 した マクシミリアン は 、 本拠 地 を 奪われて は たまらない 、 と 、 マリーンドルフ 伯領 の 包囲 を 解き 、 全部 隊 を こぞって カストロプ 公 領 に 急行 さ せた 。 これ で まず 、 マリーンドルフ 伯領 の 危機 が 救わ れた 。 しかも 、 キルヒアイス が カストロプ 公 領 に むかった こと じたい 、 陽動 に すぎ なかった のである 。

本拠 地 の 危機 に 心 急く マクシミリアン は 、 後 背 の そなえ を 怠った 。 キルヒアイス は 小 惑星 帯 の 難所 に 艦隊 を 隠して それ を やりすごし 、 無防備な 後 背 から 急襲 を かけて 潰 滅 的な 打撃 を あたえた 。

いったん 戦場 から 離脱 した もの の 、 マクシミリアン は 、 罪 が かるく なる こと を のぞんだ 部下 の 手 で 殺さ れ 、 残 余 の 者 は 降伏 した 。

こうして カストロプ の 動乱 は 、 あっけなく 終わった 。 鎮定 に 十 日 を 要した と いって も 、 六 日 は 帝国 首都 から の 征 途 に 要した もの であり 、 二 日 は カストロプ で の 事後 処理 に かかった もの で 、 実際 の 戦闘 は 二 日間 に すぎ なかった 。

この 動乱 で キルヒアイス が しめした 用 兵 の 才能 は 非凡な もの で 、 ラインハルト は 満足 し 、 彼 の 元帥 府 の 提督 たち は うなずき 、 門 閥 貴族 たち は 驚愕 した 。 ラインハルト だけ なら ともかく 、 その 腹心 まで が 、 かくも 鮮やかな 手腕 を 有して いた と いう 事実 は 彼ら に とって 愉快な もの で は なかった 。

しかし 、 とにかく 武 勲 は 武 勲 である 。

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第 六 章 それぞれ の 星 (1) だい|むっ|しょう|||ほし Chapter 6 Each Star (1)

Ⅰ イゼルローン 要塞 陥落 ! |ようさい|かんらく 凶 報 は 銀河 帝国 を 震撼 さ せた 。 きょう|ほう||ぎんが|ていこく||しんかん||

「 イゼルローン は 難 攻 不 落 で は なかった の か 」 ||なん|おさむ|ふ|おと|||||

軍務 尚 書 エーレンベルク 元帥 は 蒼白な 顔 で つぶやいた きり 執務 卓 の 前 を うごこう と し なかった 。 ぐんむ|しよう|しょ||げんすい||そうはくな|かお||||しつむ|すぐる||ぜん|||||

「 信じ られ ぬ 、 誤報 で は ない の か 」 しんじ|||ごほう|||||

帝国 軍 統帥 本部 総長 シュタインホフ 元帥 は かすれ 声 で うめき 、 事実 を 確認 した あと 、 沈黙 の 砦 に たてこもって しまった 。 ていこく|ぐん|とうすい|ほんぶ|そうちょう||げんすい|||こえ|||じじつ||かくにん|||ちんもく||とりで|||

国政 にたいして 無関心 無気力 だった 皇帝 フリードリヒ 四 世 まで が 、 宮内 尚 書 ノイケルン を 介して 国務 尚 書 リヒテンラーデ 侯 に 事態 の 説明 を 要求 して きた と いう 。 こくせい||むかんしん|むきりょく||こうてい||よっ|よ|||くない|しよう|しょ|||かいして|こくむ|しよう|しょ||こう||じたい||せつめい||ようきゅう|||| 「 帝国 領土 は 外敵 にたいし 神聖 不可侵 で なければ なら ず 、 また 事実 そう であり ました 。 ていこく|りょうど||がいてき||しんせい|ふかしん||||||じじつ||| にもかかわらず 、 今日 、 かく の ごとき 事態 を 招き 、 陛下 の 宸襟 を 騒がせ たてまつり ました こと は 臣 の 不明の いたします ところ 、 まことに 慚愧 の 念 に たえ ませ ぬ 」 |きょう||||じたい||まねき|へいか||しんえり||さわがせ|||||しん||ふめいの||||ざんき||ねん|||| 恐 懼 して 侯 は 奉 答 した と 伝え られた 。 こわ|く||こう||たてまつ|こたえ|||つたえ|

「 おかしな 議論 だ な 、 キルヒアイス 」 |ぎろん|||

元帥 府 の 執務 室 で 、 ローエングラム 伯 ラインハルト は 腹心 の 友 に 語りかけた 。 げんすい|ふ||しつむ|しつ|||はく|||ふくしん||とも||かたりかけた

「 帝国 領土 は 寸 土 と いえ ども 外敵 に 侵されて は なら ぬ もの だ そうだ 。 ていこく|りょうど||すん|つち||||がいてき||おかされて||||||そう だ 叛乱 軍 が いつ から 対等の 外部 勢力 に なった のだ ? はんらん|ぐん||||たいとうの|がいぶ|せいりょく||| 現実 を 見 ない から 矛盾 を きたす こと に なる の さ 」 げんじつ||み|||むじゅん|||||||

元帥 府 を 開設 し 、 帝国 宇宙 艦隊 の 半数 を 指揮 下 に おさめた ラインハルト は 、 人事 に 腐心 する 毎日 だった 。 げんすい|ふ||かいせつ||ていこく|うちゅう|かんたい||はんすう||しき|した|||||じんじ||ふしん||まいにち|

基本 方針 と して 、 下級 貴族 や 平民 出身 の 若い 士官 を 登用 する こと が あり 、 一線級 の 指揮 官 の 平均 年齢 は 大幅に さがった 。 きほん|ほうしん|||かきゅう|きぞく||へいみん|しゅっしん||わかい|しかん||とうよう|||||いっせんきゅう||しき|かん||へいきん|ねんれい||おおはばに| ウォルフガング ・ ミッターマイヤー 、 オスカー ・ フォン ・ ロイエンタール 、 カール ・ グスタフ ・ ケンプ 、 フリッツ ・ ヨーゼフ ・ ビッテンフェルト など 、 少 壮 気鋭 の 士官 たち が あらたに 提督 の 称号 を おび 、 元帥 府 に は 若々しい 活力 と 覇気 が みちる こと に なった のである 。 うぉるふがんぐ||||||||||||しょう|そう|きえい||しかん||||ていとく||しょうごう|||げんすい|ふ|||わかわかしい|かつりょく||はき||||||

だが 、 ここ 数 日 、 ラインハルト は 不満 を 禁じ え ないで いた 。 ||すう|ひ|||ふまん||きんじ||| 勇敢で 戦術 能力 に 富んだ 前線 指揮 官 は そろえた が 、 参謀 役 を 見いだす こと が でき ない のである 。 ゆうかんで|せんじゅつ|のうりょく||とんだ|ぜんせん|しき|かん||||さんぼう|やく||みいだす|||||

士官 学校 で 優等 生 だった 貴族 出身 の 参謀 将校 など に 、 ラインハルト は 期待 して い なかった 。 しかん|がっこう||ゆうとう|せい||きぞく|しゅっしん||さんぼう|しょうこう|||||きたい||| 軍事 能力 は 学校 教育 で 育つ もの で は ない こと を 彼 は 知っていた 。 ぐんじ|のうりょく||がっこう|きょういく||そだつ|||||||かれ||しっていた 彼 自身 が そう である ように 、 天性 の 軍人 が 学校 秀才 である こと は あって も 、 その 逆 は あり え ない のである 。 かれ|じしん||||よう に|てんせい||ぐんじん||がっこう|しゅうさい|||||||ぎゃく|||||

キルヒアイス を 参謀 役 に は でき なかった 。 ||さんぼう|やく|||| 彼 に は ラインハルト の 分身 と して とき に は 数 個 艦隊 を 指揮 統率 さ せ ねば なら ない 。 かれ|||||ぶんしん||||||すう|こ|かんたい||しき|とうそつ||||| ラインハルト と ともに ある とき は 大局 を 見て 決断 を ともに して もらう 。 ||||||たいきょく||みて|けつだん|||| それ が 腹心 の はたす べき 責務 だった 。 ||ふくしん||||せきむ|

過日 、 ラインハルト は カストロプ 星 系 に おける 動乱 に 際し 、 キルヒアイス を 彼 の 代理人 と して 出征 さ せた 。 かじつ||||ほし|けい|||どうらん||さいし|||かれ||だいりにん|||しゅっせい|| キルヒアイス に 独自の 功績 を たて させ 、 彼 を ラインハルト 軍団 の 副 司令 官 と して 衆 目 に 認め させる ため の 措置 であった 。 ||どくじの|こうせき|||さ せ|かれ|||ぐんだん||ふく|しれい|かん|||しゅう|め||みとめ||||そち|

ラインハルト は 、 国務 尚 書 の リヒテンラーデ 侯 に 、 キルヒアイス に 勅命 が くだる よう 依頼 した 。 ||こくむ|しよう|しょ|||こう||||ちょくいのち||||いらい|

最初 、 リヒテンラーデ 侯 は 好 い 顔 を し なかった 。 さいしょ||こう||よしみ||かお||| ところが 侯 の 政務 補佐 官 に ワイツ と いう 人物 が いて 、 この 男 が 侯 に 意見 を 具申 した 。 |こう||せいむ|ほさ|かん|||||じんぶつ||||おとこ||こう||いけん||ぐしん|

「 よい では ありません か 。 キルヒアイス 少将 は ローエングラム 伯 の 腹心 中 の 腹心 です 。 |しょうしょう|||はく||ふくしん|なか||ふくしん| 討伐 に 成功 した とき に は 褒賞 を あたえて 恩 を 売って おけば 、 後日 、 なにかと 益 に なりましょう 。 とうばつ||せいこう|||||ほうしょう|||おん||うって||ごじつ||えき|| また 失敗 した ところ で 、 それ は 彼 を 推挙 した ローエングラム 伯 の 責任 と いう こと に なります 。 |しっぱい||||||かれ||すいきょ|||はく||せきにん||||| あらためて 伯 に 討伐 を 命じれば すむ こと です し 、 一 度 は 部下 が 失敗 した と なれば 、 伯 も 功 を 誇って ばかり は いら れます まい 」 |はく||とうばつ||めいじれば|||||ひと|たび||ぶか||しっぱい||||はく||いさお||ほこって||||| 「 なるほど 、 その とおり だ 」

侯 は 納得 し 、 キルヒアイス に カストロプ 討伐 の 勅命 が くだる よう 手続き を とった 。 こう||なっとく|||||とうばつ||ちょくいのち||||てつづき|| ラインハルト が ワイツ に ひそかに 金品 を 贈って 、 そう 具申 する ように 依頼 した こと まで は 、 侯 は 知ら ない 。 |||||きんぴん||おくって||ぐしん||よう に|いらい|||||こう||しら|

こうして キルヒアイス は 勅命 を うけた 。 |||ちょくいのち|| それ は 帝国 軍人 と して 箔 が ついた こと を 意味 する 。 ||ていこく|ぐんじん|||はく|||||いみ| ラインハルト の 元帥 府 に おいて 、 彼 は 階級 を おなじく する 同僚 たち に 抜きんで 、 ナンバー 2 の 位置 を 公的に 認められる こと に なった 。 ||げんすい|ふ|||かれ||かいきゅう||||どうりょう|||ぬきんで|なんばー||いち||こうてきに|みとめられる||| もっとも それ は 形式 上 の こと に すぎ ない 。 |||けいしき|うえ||||| それ を 実質 化 する に は 、 キルヒアイス は 実質 的な 武 勲 を たてる 必要 が あった 。 ||じっしつ|か||||||じっしつ|てきな|ぶ|いさお|||ひつよう||

カストロプ 星 系 の 動乱 の 起因 は つぎ の ような しだい である 。 |ほし|けい||どうらん||きいん||||||

この 年 、 カストロプ 公 オイゲン が 自家 用 宇宙 船 の 事故 で 不慮 の 死 を とげた 。 |とし||おおやけ|||じか|よう|うちゅう|せん||じこ||ふりょ||し||

彼 は 貴族 と して その 私 領 に おける 徴税 権 を 有し 、 当然 、 ゆたかな 富 力 を 誇って いた が 、 朝廷 の 重臣 と して も 前後 一五 年 に わたり 財務 尚 書 の 職 に あった 。 かれ||きぞく||||わたくし|りょう|||ちょうぜい|けん||ゆうし|とうぜん||とみ|ちから||ほこって|||ちょうてい||じゅうしん||||ぜんご|いちご|とし|||ざいむ|しよう|しょ||しょく|| その 間 、 職権 を 利して 蓄財 に 努め 、 不名誉な 疑獄 事件 に 関係 した こと も たびたび だった が 、 貴族 の 犯罪 にたいする 法 網 は いたって 目 が あらく 、 その 目 すら まぬがれ え ない ように なる と 、 権力 と 富 力 を 巧妙に 駆使 して 処罰 の 手 を のがれて きた のである 。 |あいだ|しょっけん||りして|ちくざい||つとめ|ふめいよな|ぎごく|じけん||かんけい|||||||きぞく||はんざい||ほう|あみ|||め||||め|||||よう に|||けんりょく||とみ|ちから||こうみょうに|くし||しょばつ||て|||| 当時 の 司法 尚 書 ルーゲ 伯 が 、〝 みごとな 奇術 〟 と 皮肉った ほど で 、 おなじ 門 閥 貴族 の 眼 から 見て も 、 その 特権 濫用 は 度 が すぎて いた 。 とうじ||しほう|しよう|しょ||はく|||きじゅつ||ひにくった||||もん|ばつ|きぞく||がん||みて|||とっけん|らんよう||たび||| 帝政 の 支柱 と して 、 もう すこし 公人 と して の 法則 を まもって もらわ なくて は こまる 。 ていせい||しちゅう|||||こうじん||||ほうそく|||||| ひと り の 重臣 にたいする 民衆 の 不満 は 、 体制 全体 にたいする 不信 に 、 容易に 増幅 する のだ 。 |||じゅうしん||みんしゅう||ふまん||たいせい|ぜんたい||ふしん||よういに|ぞうふく|| その カストロプ 公 が 死んだ 。 ||おおやけ||しんだ 帝国 の 財務 、 司法 の 両 省 に とって は 歓迎 す べき チャンス と いえた 。 ていこく||ざいむ|しほう||りょう|しょう||||かんげい|||ちゃんす|| あえて 死者 を 鞭打つ べきだ 。 |ししゃ||むちうつ| 大 貴族 と いえ ども けっして 法 の 支配 を まぬがれる こと は でき ない のだ 、 と 民衆 に 知ら しめ 、 貴族 たち の なか に 無数に 存在 する 小 カストロプ ども を 牽制 し 、 もって 帝国 の 法 と 行政 の 威 を しめさ なくて は なら ない 。 だい|きぞく|||||ほう||しはい|||||||||みんしゅう||しら||きぞく|||||むすうに|そんざい||しょう||||けんせい|||ていこく||ほう||ぎょうせい||たけし||しめ さ|||| まして 生前 、 カストロプ 公 が 私物 化 した 公金 や うけとった 賄賂 は 莫大な 額 に のぼる はずで 、 これ を 国庫 に おさめた とき 、 軍事 費 の 圧迫 に 苦しむ 財政 は 一時的に 息 を つける であろう 。 |せいぜん||おおやけ||しぶつ|か||こうきん|||わいろ||ばくだいな|がく||||||こっこ||||ぐんじ|ひ||あっぱく||くるしむ|ざいせい||いちじてきに|いき|||

財務 官僚 の なか に は 、 貴族 にたいする 課税 を 口 に する 者 も いた が 、 それ は ルドルフ 大帝 以来 の 国是 を 変更 する こと に なり 、 叛乱 や 宮廷 革命 を 招き かね なかった 。 ざいむ|かんりょう|||||きぞく||かぜい||くち|||もの|||||||たいてい|いらい||こくぜ||へんこう|||||はんらん||きゅうてい|かくめい||まねき|| だが 、 カストロプ 公 個人 が 対象 であれば 貴族 たち の 反対 も すくない 。 ||おおやけ|こじん||たいしょう||きぞく|||はんたい||

財務 省 の 調査 官 が カストロプ に 派遣 さ れた 。 ざいむ|しょう||ちょうさ|かん||||はけん|| そこ で トラブル が 発生 した のである 。 ||とらぶる||はっせい||

カストロプ 公 に は マクシミリアン と いう 息子 が あり 、 国務 尚 書 を つうじて 皇帝 から 認可 が おり しだい 、 亡父 の 爵位 と 資産 を 相続 する こと に なって いた 。 |おおやけ||||||むすこ|||こくむ|しよう|しょ|||こうてい||にんか||||ぼうふ||しゃくい||しさん||そうぞく||||| だが 、 そのような 事情 の ため 、 国務 尚 書 リヒテンラーデ 侯 は 相続 手続き を 延期 し 、 財務 省 の 調査 が 終了 した 時点 で 、 先代 の オイゲン が 不当に 取得 した 部分 を はぶいて 資産 相続 を 認める こと に した のだった 。 ||じじょう|||こくむ|しよう|しょ||こう||そうぞく|てつづき||えんき||ざいむ|しょう||ちょうさ||しゅうりょう||じてん||せんだい||||ふとうに|しゅとく||ぶぶん|||しさん|そうぞく||みとめる||||

マクシミリアン は それ に 反発 した 。 ||||はんぱつ| 重臣 、 大 貴族 の 子弟 と して 特権 と 富 を むさぼって きた 利己 的な 青年 は 、 亡父 が もって いた 悪い 意味 で の 政治 力 すら もちあわせて い なかった 。 じゅうしん|だい|きぞく||してい|||とっけん||とみ||||りこ|てきな|せいねん||ぼうふ||||わるい|いみ|||せいじ|ちから|||| 彼 は 財務 省 の 調査 官 に 猟犬 を けしかけて おいはらった 。 かれ||ざいむ|しょう||ちょうさ|かん||りょうけん||| この 猟犬 と いう の が 、 DNA 処理 に よって 頭部 に 円錐 状 の 角 を もつ ように なった 有 角 犬 で 、 貴族 権力 の 暴力 的な 一面 を 象徴 する 凶暴な 獣 だった のだ 。 |りょうけん||||||しょり|||とうぶ||えんすい|じょう||かど|||よう に||ゆう|かど|いぬ||きぞく|けんりょく||ぼうりょく|てきな|いちめん||しょうちょう||きょうぼうな|けだもの||

自分 の 行為 が 、 威信 を 重視 する 帝国 政府 の 横 面 を ひっぱたいた と いう こと に 、 想像 力 の 欠落 した 青年 は まるで 気づか なかった 。 じぶん||こうい||いしん||じゅうし||ていこく|せいふ||よこ|おもて|||||||そうぞう|ちから||けつらく||せいねん|||きづか| しかし ひっぱ たかれ たほう で は 、 屈辱 を そのまま 甘受 して は い なかった 。 ||||||くつじょく|||かんじゅ||||

再度 派遣 さ れた 調査 官 も 無法に おいはらわ れる と 、 財務 尚 書 ゲルラッハ 子爵 は 国務 尚 書 に マクシミリアン を 宮廷 に 呼びつける よう 要請 した 。 さいど|はけん|||ちょうさ|かん||むほうに||||ざいむ|しよう|しょ||ししゃく||こくむ|しよう|しょ||||きゅうてい||よびつける||ようせい|

手厳しい 調子 の 呼出 状 を うけとった とき 、 マクシミリアン は 初めて 自分 の 行為 が 問題 視 されて いる こと を 知った 。 てきびしい|ちょうし||よびだ|じょう||||||はじめて|じぶん||こうい||もんだい|し|||||しった そう なる と 、 バランス の とれた 判断 力 を 欠く だけ に 、 彼 は 極端な 恐怖 に かられた 。 |||ばらんす|||はんだん|ちから||かく|||かれ||きょくたんな|きょうふ|| 帝国 首都 に おもむけば 二度と 還れ ない もの と 思いこんだ のである 。 ていこく|しゅと|||にどと|かえれ||||おもいこんだ|

カストロプ 公爵 家 に は 当然 ながら 多く の 親族 や 姻戚 が おり 、 事態 を 憂慮 した 彼ら は あいだ に たって 調停 を 試みた が 、 マクシミリアン の 猜 疑心 を 刺激 した だけ だった 。 |こうしゃく|いえ|||とうぜん||おおく||しんぞく||いんせき|||じたい||ゆうりょ||かれら|||||ちょうてい||こころみた||||さい|ぎしん||しげき|||

彼 の 親族 の ひと り で 温和な 人柄 を 評価 さ れる マリーンドルフ 伯 フランツ が 、 説得 に おもむいて そのまま 監禁 されて しまう と 、 平和 的な 解決 は 絶望 的 と なった 。 かれ||しんぞく|||||おんわな|ひとがら||ひょうか||||はく|||せっとく||||かんきん||||へいわ|てきな|かいけつ||ぜつぼう|てき|| 完全に 血迷った マクシミリアン は 公 領 の 警備 隊 を 中心 に 私 兵 を 集め だ し 、 帝国 政府 は 討伐 軍 の 派遣 を 決定 した 。 かんぜんに|ちまよった|||おおやけ|りょう||けいび|たい||ちゅうしん||わたくし|つわもの||あつめ|||ていこく|せいふ||とうばつ|ぐん||はけん||けってい|

シュムーデ 提督 の 指揮 する 艦隊 が オーディン を 進 発した の は 、 アスターテ 星 域 に おける 帝国 同盟 両軍 の 衝突 と 、 ほぼ 同 時期 である 。 |ていとく||しき||かんたい||||すすむ|はっした||||ほし|いき|||ていこく|どうめい|りょうぐん||しょうとつ|||どう|じき| ―― そして この 第 一 次 討伐 軍 が 敗北 する のだ 。 ||だい|ひと|つぎ|とうばつ|ぐん||はいぼく||

社会 人 と して 落第 の マクシミリアン が 、 純 軍事 的に は ある 程度 の 才能 を 有して いた こと 、 討伐 軍 が 敵 を 軽視 して 、 ろくに 作戦 も たて ず に 戦い に 臨んだ こと など 、 いく つ か の 理由 が その 結果 を もたらした のだ が 、 ともかく この 討伐 軍 は 強引に 着陸 した ところ を 奇襲 さ れ 、 シュムーデ 提督 が 戦死 して しまう 。 しゃかい|じん|||らくだい||||じゅん|ぐんじ|てきに|||ていど||さいのう||ゆうして|||とうばつ|ぐん||てき||けいし|||さくせん|||||たたかい||のぞんだ|||||||りゆう|||けっか|||||||とうばつ|ぐん||ごういんに|ちゃくりく||||きしゅう||||ていとく||せんし||

二 度 め の 討伐 軍 も 失敗 する と 、 図 に のった マクシミリアン は 、 隣接 する マリーンドルフ 伯領 を 併合 し 、 帝国 の 一角 に 半 独立 の 地方 王国 を 建設 しよう と はかった 。 ふた|たび|||とうばつ|ぐん||しっぱい|||ず|||||りんせつ|||はくりょう||へいごう||ていこく||いっかく||はん|どくりつ||ちほう|おうこく||けんせつ||| 当主 の フランツ は マクシミリアン に 監禁 されて いた が 、 侵攻 して きた マクシミリアン 軍 を マリーンドルフ 伯爵 家 の 警備 隊 は 善戦 して さ さえ 、 オーディン に 救援 を 依頼 した 。 とうしゅ||||||かんきん||||しんこう||||ぐん|||はくしゃく|いえ||けいび|たい||ぜんせん||||||きゅうえん||いらい| このような 状況 の もと に 、 キルヒアイス が 乱 の 鎮定 を 命じ られた のである 。 |じょうきょう||||||らん||ちんてい||めいじ|| そして 彼 は 、 半年 に わたった 乱 を 十 日間 で 鎮定 する こと に 成功 した のだった 。 |かれ||はんとし|||らん||じゅう|にち かん||ちんてい||||せいこう||

まず 、 キルヒアイス は 、 マリーンドルフ 伯領 に 救援 に おもむく 情況 を しめして おき 、 急転 して カストロプ 公 領 を ついた 。 ||||はくりょう||きゅうえん|||じょうきょう||||きゅうてん|||おおやけ|りょう|| 驚愕 した マクシミリアン は 、 本拠 地 を 奪われて は たまらない 、 と 、 マリーンドルフ 伯領 の 包囲 を 解き 、 全部 隊 を こぞって カストロプ 公 領 に 急行 さ せた 。 きょうがく||||ほんきょ|ち||うばわれて|||||はくりょう||ほうい||とき|ぜんぶ|たい||||おおやけ|りょう||きゅうこう|| これ で まず 、 マリーンドルフ 伯領 の 危機 が 救わ れた 。 ||||はくりょう||きき||すくわ| しかも 、 キルヒアイス が カストロプ 公 領 に むかった こと じたい 、 陽動 に すぎ なかった のである 。 ||||おおやけ|りょう|||||ようどう||||

本拠 地 の 危機 に 心 急く マクシミリアン は 、 後 背 の そなえ を 怠った 。 ほんきょ|ち||きき||こころ|せく|||あと|せ||||おこたった キルヒアイス は 小 惑星 帯 の 難所 に 艦隊 を 隠して それ を やりすごし 、 無防備な 後 背 から 急襲 を かけて 潰 滅 的な 打撃 を あたえた 。 ||しょう|わくせい|おび||なんしょ||かんたい||かくして||||むぼうびな|あと|せ||きゅうしゅう|||つぶ|めつ|てきな|だげき||

いったん 戦場 から 離脱 した もの の 、 マクシミリアン は 、 罪 が かるく なる こと を のぞんだ 部下 の 手 で 殺さ れ 、 残 余 の 者 は 降伏 した 。 |せんじょう||りだつ||||||ざい|||||||ぶか||て||ころさ||ざん|よ||もの||こうふく|

こうして カストロプ の 動乱 は 、 あっけなく 終わった 。 |||どうらん|||おわった 鎮定 に 十 日 を 要した と いって も 、 六 日 は 帝国 首都 から の 征 途 に 要した もの であり 、 二 日 は カストロプ で の 事後 処理 に かかった もの で 、 実際 の 戦闘 は 二 日間 に すぎ なかった 。 ちんてい||じゅう|ひ||ようした||||むっ|ひ||ていこく|しゅと|||すすむ|と||ようした|||ふた|ひ|||||じご|しょり|||||じっさい||せんとう||ふた|にち かん|||

この 動乱 で キルヒアイス が しめした 用 兵 の 才能 は 非凡な もの で 、 ラインハルト は 満足 し 、 彼 の 元帥 府 の 提督 たち は うなずき 、 門 閥 貴族 たち は 驚愕 した 。 |どうらん|||||よう|つわもの||さいのう||ひぼんな|||||まんぞく||かれ||げんすい|ふ||ていとく||||もん|ばつ|きぞく|||きょうがく| ラインハルト だけ なら ともかく 、 その 腹心 まで が 、 かくも 鮮やかな 手腕 を 有して いた と いう 事実 は 彼ら に とって 愉快な もの で は なかった 。 |||||ふくしん||||あざやかな|しゅわん||ゆうして||||じじつ||かれら|||ゆかいな||||

しかし 、 とにかく 武 勲 は 武 勲 である 。 ||ぶ|いさお||ぶ|いさお|