JIN - 仁 - #04
≪( 洪 庵 ) このまま で は 江戸 の 町 は 死 の 町 に なって しまい ます
( 龍 馬 ) 先生 !
( 仁 ) 行って … なす べき こと を なさって ください
≪( 咲 ) お 戻り ください !→
先生 先生 !
戻って くる ぜ よ 先生
〈 あれ から 〉
弟子 に しとう せ !
〈 龍 馬 さん は 勝 先生 に 弟子入り 〉
( 橘 ) お上 が コロリ 対策 の 援助 を する と 決まり ました !
〈 恭 太郎 さん も 〉
〈 勝 先生 の 秘書 の ような こと を する ように なり 〉
≪( 茜 ) おいしい で すよ 黒 米 いなり いかがです か ?
〈 喜市 は 大吉 屋 で 奉公 を する こと に なった 〉
もう 少し 下 です
私 は 未来 から やってきた 人間 な んです
〈 咲 さん は 何事 も なかった ように 振る舞って くれて いた 〉
〈 ありがたい 〉
では 続き を ああ … はい
〈 俺 も 何とか 江戸 の 暮らし に も 慣れて きて 〉
〈 緒方 先生 の 肝いり で 〉
〈 西洋 医学 所 で 講義 を する ように なった 〉
ビタミン B 1 は 神経 や 筋肉 の 働き を 助ける 栄養素 で …
( 八木 ) 本当な んです か ね ?→
あの 先生 の 言う こと
( 山田 ) おい あれ を 見ろ
これ は 頑張ら ねば
心 の 臓 が 停止 する こと も ある そう なら ない ため に も …
では 次に 先ほど の 講義 で は
脚気 は ビタミン B 1 の 不足に よって 起きる 病 と か
はい 里 の 伝 書 に 「 脚気 に なれば 」
「 小豆 麦飯 を 食え 」 と ございます が
それ は それ で よろしい んです か ?
正しい と 思い ます
米ぬか や 玄米 さつまいも も いい で すね
こういった 食品 を 食べ 続ける と 症状 は よく なって く と 思い ます
そろそろ … はい !
船頭 が 長き 航海 に 出る とき 必ず ぬか 漬け を …
( 一同 ) おお …
これ が 南方 先生 の メス です か
〈 みんな それぞれ に 〉
〈 自分 の 道 を 前向きに 歩き 出して いた 〉
〈 だけど 君 の 写真 に は 何の 変化 も 起こら なかった 〉
〈 よくも 悪く も 〉
それ は 何の ?
頭 に 穴 を 開ける 道具 です
へえ ~
やって み ます か ? はい !
では こちら へ
左手 は ここ を 持って しっかり 固定 して
右 は ここ に 置いて
少し 押し込む ように して ゆっくり 回し ます
そう うまい うまい
あ ッ そう でした
あの …
夕げ の 豆腐 は 揚げ だ しか 湯豆腐 か …
ああ … 揚げ だし で
≪( 栄 ) 南方 先生
( 栄 ) お 客 様 が いらっしゃい ました が
私 に ?
( 栄 ) 南方 先生 と ずいぶん 仲 が よい ようです ね
母上 も 仁 先生 の こと は お 嫌い で は ない でしょう ?
好き と か 嫌い と か そういう こと で は あり ませ ん !
女 だ てら に 医術 など に 夢中に なって
これ 以上 婚 期 を 逃したら どう する のです !
≪( 龍 馬 ) ありゃ ~!
これ は 全部 医術 の 道具 かえ たま ある か ~
はい いろいろ 作って もらって る うち に
こんな こと に なって しまって
龍 馬 さん は 勝 先生 の 所 に ? ああ
いっそ がしゅう て のう
船 の 勉強 したり 越前 の お 偉い さん に
海 まわり の 備え の 説明 し に いったり
勝 先生 の とこ に おる と やる こと が 山 の ように
はは は …
でも 道 が 見つかった って 感じ です ね
どこ へ 出る 道 か は いま一つ 分から ん が じゃき
先生
今日 は この後 あい ちゅうか え ? は あ ?
では 先生 は お出かけ に なら れた のです か
「 坂本 殿 と 一緒だ から 今日 は 夕げ は よい 」 と
え ッ ?
あの ~
目 を 開けて は いけ ませ ん か ? いかん !
ですが 男 同士 手 を つなぐ の は ちょっと …
わし じゃ ち 我慢 しち ょる が じゃ
せめて どこ に 行く の か だけ でも 教えて もらえ ませ ん か ?
もう ええ ぜ よ →
ゆ ~ っく り 目 を 開け とう せ
はは は …→
ここ が 天下 の →
吉原 じゃき ! は は は …
まっ こと ここ は →
暗い 闇 の 中 に 浮かぶ 月 の 国 の よう じゃけん ど →
目 を つぶって やってくる と より 明るう
極楽 の ように 見える ろう きれいです ね
ほ いたら これ から 見世 に 行って みる き
前 に 「 鈴 屋 」 っ ちゅう 見世 の おやじ を 助けた こと が あって の
「 いつでも タダ で来て いい 」 と 言わ れ ちゅうき
いや でも 本当の 吉原 見 れた だけ で …
「 明 烏 」 っ ちゅう 落語 が あって のう
「 吉原 なん ぞ いやだ 」 っ ちゅう ボンボン を
吉原 に 慣れた 男 が だまして 連れ出す 話 で の う
へえ ~ まあ そういう こと で 行く ぜ よ
龍 馬 さん !
≪( 龍 馬 ) ほれ ! どうぜよ
「 今日 は 医者 が 一緒じゃ 」 と 言う が じゃ
龍 馬 さん やはり 私 は ここ で
何 言 うち ょる が ね ここ まで 来て
咲 さ んに 夕食 を 頼んで しまって ます んで
何 す んです か !
実は 前 から 好 いち ょる 女子 が おる けん ど …
それ が この 見世 で 一 番 の 「 呼び出し 」 っ ちゅう 花魁 で の う
知り ませ ん よ そんな こと
何度 会い に きて も 口 も きいて くれ へん き
けん ども 噂 に よる と
どうも その 花魁 は
医者 を 探し ちょ る らしゅう て
〈 未来 〉
〈 信じて もらえ ない だろう が 〉
〈 俺 は その とき とんでもない もの を 見た んだ 〉
《≪( 未来 ) いい よ 仁 先生 》
《 きっと また いつか 会える から 》
〈 吉原 で 出会った んだ よ 〉
〈 もう 一 人 の …〉
〈 君 と 〉
♪♪~
医者 を 探し ちゅう と 聞いて の あ ッ … こちら は →
南方 仁 先生 っ ちゅう 今 江戸 で 一 番 話題 の 医者 じゃ →
ほれ
( 野 風 ) どんな 病 も 治 せる であり ん す か ?
いや どんな 病 と いう わけに …
もちろん じゃ 何でも 治 せる き ねえ
あの … 名字 は ?
いや … 名字 聞いて も 仕方ない か
えっ と … お 子 さん は ?
( 龍 馬 ) あ ほ !
どう いたんじゃ ? 先生 おる わけな かろう が
は あ …
おやじ 様 の 恩人 でも
あ ちき は 浅 葱 裏 と 盃 を 交わす の は いやであり ん す
何度 も 言 いん した であり ん しょ
浅 葱 裏
( 若 衆 A ) 吉原 で は 花魁 が 気乗り し なければ
夫婦 固 めの 盃 は 断る こと が できる 決まり で げ して
≪( 客 ) 金 は いくら でも 積む と いう のに →
あいつ は わし を そで に して !
( 若 衆 B ) 申し訳 ございませ ん ( 客 ) 女 郎 風情 が
つけあがる の に も ほど が ある ! わし を 一体 誰 だ と 思って る
≪( 若 衆 B ) 申し訳 ございませ ん
野 風 花魁 に 執心 の 旦那 様 な のです が
一 日 と も あけ ず 通わ れて ひと 月 いまだ 口 も きいて もらわ れ ず
ほ いたら また 出直す と する き
今日 は 花魁 の 声 も 聞いた しの
先生 ええ かい ? はい
あの … 野 風 さん に 伝えて いただき たい のです が
( 女将 ) 坂本 様 おお 女将
野 風 の たびたび の 礼 を 失した 振る舞い
主人 に 代わり まして 心 より お 詫び 申し上げ ます
はは は … あれ で こそ 天下 の 吉原 じゃき
山 は 高い ほど 登り がい が ある っ ちゅうもん ぜ よ
今日 は 彦三郎 殿 は ? それ が …
二十 日 ほど 前 から 具合 が 悪く なり だし まして
おお 数 日 前 から は
呼びかけて も ろくに 返事 も でき ぬ ように なり
どんな お 医者 様 に 診て いただいて も
容体 は 悪く なる ばかりでして
それ で 花魁 は 医者 を
≪( 女将 ) それ は …
まあ それ も ある の かも しれ ませ ん が
まあ ええ
この 男 は 医者 で の う 南方 仁 と いう
今 江戸 で 評判 の 名医 じゃ
彦三郎 殿 を 診て もろう たら ええ
え ッ ? 誠 で ございます か ?
ああ この 先生 に かかれば
何も かん も 嘘 の ように 治って しまう ぜ よ
ちょっと … 龍 馬 さん え ッ ?
≪( 若 衆 A ) 野 風 花魁 よろしい で げ す か ?
実は 先ほど の お 医者 様 が
花魁 は 「 貧血 」 と いう もの で は ない か と
ひんけつ ?
( 若 衆 A ) 血 が 足りない と いう こと だ そうで げ す
すると くら り と きたり 心 の 臓 が 強く 打ったり →
息切れ が したり する そうで 花魁 の 目 の 下 が 異様に 白い んで
そう で は ない か と 思わ れた そうで げ す →
それ に は のり や ワカメ →
コブ など を 多く 食べる と よく なる と
≪( 龍 馬 ) 何 じゃ あの 医者 は
ちょうど 診て いただいて いて
帰って くれ ん かった が か
「 治 せる もん なら わし の 目の前 で 治して みろ 」 と
女将 さん ご 主人 が 頭痛 を 訴え だす 前 に
何 か 変わった こと あり ませ ん でした か ?
たとえば どこ か で 転んだ と か ぶつかった と か
ああ … そこ の 神棚 の 水 を かえよう と して
足 を 踏み外し ました →
左 の 額 に たん こぶ を つくって しまって
その とき は かなり 痛 がって おり ました
でも こぶ は すぐに 治って しまい ました し →
それ から ひと 月 ほど は 元気に 過ごして おり ました
ご 主人 は 「 慢性 硬 膜 下血 腫 」 で は ない か と 思わ れ ます
まんせい … こ ?
軽い 頭 の ケガ の あと 数 週間 して から
頭 の 中 に 血 が たまって くる と いう 病 です
数 週 … あ … 頭 の 中 に 血 が !?
そんな … 治す 方法 は ある のでしょう か ?
はい 頭 に これ ぐらい の 小さな 穴 を 開けて
血 の かたまり を 出す 手術 を すれば
十中八九 は よく なる はずです 頭 に 穴 を !?
ご 主人 は すでに 重体 です
このまま 放置 すれば 廃 人
もしくは 命 に かかわる こと に なる と 思い ます
( 蘭 方 医 ) そんな 治療 は 聞いた こと が あり ませ ぬ
そんな こと を すれば 間 違いなく 死んで しまい ます
先生 が 「 大丈夫 」 と いう が じゃき
大丈夫じゃ ね ッ ! 先生
ですが 問題 が 一 つ あり ます え ッ …
慢性 硬 膜 下血 腫 で は ない こと も あり え ます
脳 梗塞 や 脳 腫瘍 など
もっと 脳 の 深い ところ の 病 の 場合
残念です が … 手 の くだし よう が あり ませ ん
頭 に 穴 を 開けた ところ で ムダ だ と いう こと も
あり える と いう こと です か ? 可能 性 と して は
分かった ぞ お ぬし は ただ 頭 の 中 が 見て み たい だけ であろう
いたずらに 治療 を 試し 死んだら 腑分 け を する 腹 じゃ →
女将 だまさ れて は なり ませ ん ぞ
「 このまま 何も せ ねば 確実に 死んで しまう 」 と
言 うち ょる が じゃ ! 手術 を すれば …
いたずらに 体 を 傷つけ
苦し み を 与える だけ かも しれ ぬ で は ない か !
≪( 龍 馬 ) お ま …
先生 ! 先生 は どう する が ええ と 思う が じゃ
私 です か … お うよ
私 は …
手術 を
どうか その 手術 と やら を して おくれ な ん し
お下がり 野 風 ! お前 が 口出し する こと じゃ ない よ
あ ちき は 今 まで 山 の ように
お 医者 様 に お 会い して きた であり ん す
されど あ ちき の 貧血 と やら を 言い当てた 方 は おら れ ず
それ を この 先生 は あの つかの間 で 見抜か れ ん した
≪( 龍 馬 ) ほうか
これ ぞ 誠 の 名医 →
おやじ 様 を お 助け できる と したら
この 方 しか お りんせん
どうか お っ 母さん
まっとう な ご 判断 を お 願い いた しん す
私 が ボンクラ だって そう 言って ん の かい !?
め っ そう も ご ざん せ ん あ ちき は ただ
おやじ 様 に 助かって いただき たい だけ であり ん す
分かった よ 手術 と やら を し ようじゃ ない か →
でも … 助から なかったら その とき は
どう 落とし 前 つけて くれる ん だい ?
その とき は …
あの 旦那 様 と 盃 を 交わし ん しょ
おお ッ 野 風 さん それ は …
哀れ と 思う て くださる の なら
何とぞ おやじ 様 を
お 助け ください なん し
急ぎ 手術 を する こと に なった ゆえ
ここ に 記して ある 道具 を 持ってきて ほしい と いう こと だ
かしこまり ました !
ああ ッ … 道具 を そろえて くれる だけ で いい
持っていく の は 私 が やる
私 が まいり ます その …
届け 先 は … 吉原 な のだ
女 は 入る こと は かなわ ん
ああ ッ 吉原 !?
汚らわしい !
( 橘 ) 咲 悪い が 早く 道具 を そろえて くれ
はい …
よく できた 絵
何 ?
( 八木 ) しか し 南方 先生 は →
一体 どこ で 医術 を 学ば れた のであろう ?
( 横 松 ) 流派 と いえば 佐分利 殿 は
実は 華岡 流 で は ない か と いう 話 です
華岡 流 !? 私 は 長崎 で 学んで いた と 聞いた が
しかし 華岡 流 の 道具 を 持って る の を 見た 者 が
なぜ そのような 嘘 を つか ねば なら ぬ
≪( 男 ) は あ は あ …
( 男 ) は あ は あ …
ありがとう ございます 恭 太郎 さん
では 私 は 控えて い ます
おう 橘 の
どう じゃ ? 一 杯 結構です
隣 で は 手術 が 行わ れて おり ます ゆえ
( 彦三郎 ) う う ッ …
大丈夫です すぐに 治まり ます から
これ は 一体 …
エーテル で 麻酔 を 行い ました
続いて 頭部 の 消毒 を し ます
ここ に その 血 の かたまり と やら が ある のです か ?
ええ … あり ます
〈 嘘 を ついた 〉
〈 レントゲン も なければ CT スキャン も ない 〉
〈 たとえ 血 腫 が あった と して も 〉
〈 場所 を 特定 する こと は 不可能だ 〉
〈 でも …〉
《 何とぞ … おやじ 様 を 》
《 お 助け ください なん し 》
神 は … 乗り越え られる 試練 しか 与え ない
あ ~ ッ !
( ゴリゴリ と いう 音 )
何 じゃ ? この 音 は
恐らく 頭 に 穴 を 開けて いる のでしょう
頭 きる た あ 大変な こと じゃ のう
坂本 殿 不謹慎で は ございませ ぬ か ?
大丈夫じゃ
南方 仁 なら
ああ …
匂う のう 何 が です か ?
花魁 達 の 肌 の 匂い ぜ よ
外 で 待って おり ます
一 人 に なる と ますます 匂う
何と まあ 鼻 の 利く お 人 であり ん す なあ
おお ッ ! おお …
せっし ゃに 何 か ?
急が ない と
あって くれよ 血 腫
そんな …
≪( 蘭 方 医 ) 血 など たまって おら ぬ で は ない か !
もう 一 つ 穴 を 開け ます
ふ … 二 つ も 開ける ので ございます か !?
始め ます
( ゴリゴリ と いう 音 )
よっぽど 慕って おる んじゃ のう
今 の あ ちき が ある の は おやじ 様 の おかげ であり ん す ゆえ
ほお ~ ち っく と 聞か せ と おせ
あん 先生 を 連れて きた が 誰 や と 思う ちゅう
あ ちき が ここ へ 売ら れて きた の は
十 の 頃 で ご ざん した
≪( 野 風 ) 白い 飯 が 腹 いっぱい 食える と 聞か さ れ →
訳 も 分から ず 来た であり ん すよ
≪( 野 風 ) けん ど →
その うち ここ が どういう 所 か 分かって きて →
たまらなく いやに なり ん した
≪( 野 風 ) わざと 追い出さ れよう と →
愚 に も つか ぬ いたずら を 繰り返し まして な
《 うえ ッ !》
≪( 野 風 ) けん ど せっかん さ れる ばかりで →
いっこうに 追い出して は もらえ ず
≪( 野 風 ) ある 日 ついに 心 を 決めた であり ん すよ
やった が かえ ?
そった のであり ん すよ
髪 を そり →
男の子 に 化け ここ から 逃げ出し ん した
≪( 野 風 ) 幸い うまく 大 門 を 抜け られ
≪( 野 風 ) その 日 は 一 日 中 江戸 の 町 を 歩き回り
そりゃ あ もう 楽しかった であり ん すよ
けん ど 一 日 が 終わる と …
《( 母親 ) 今日 は お め え 何 が 食べ たい ん だい ?》
《( 父親 ) 父 っつ ぁん 今日 は 稼ぎ が いい から さ 》
《( 子供 ) おっと さん 今日 何でも いい の ?》
≪( 野 風 ) どこ に も 行く 所 の ない こと に 気づき →
その うち 腹 も すいて きて
≪( 野 風 ) 結局 ぶざまに 戻る しか なかった で ご ざん す
《 どこ へ 行って おった のだ ? 心配 する で は ない か 》
《( 彦三郎 ) 腹 が 減って おる だろう さあ 遠慮 など せ ず に 》
《 うまい か ?→》
《 どんどん 食べ なさい 》 《 あい 》
≪( 野 風 ) 本当 は こんな 所 の 飯 など 食 いたく も ない →
けん ど … うまくて 止まら ない のであり ん す
あ ちき は 人 で は ない
犬 と 同じだ と 思い ん して な
そんな あ ちき に …
おやじ 様 は 話 が ある と …
《 知って おる か ? ここ は この 日 の 本 で 唯一 》
《 女 が 下 剋上 できる 所 だ 》
《 犬 に も 等しい 女 郎 が 》
《 菩薩 に 成り 上がれる 所 だ 》
《 最上 格 の 「 呼び出し 」 と 呼ば れる 花魁 に なれば →》
《 皆 は お前 に ひれ伏し 》
《 お前 の 情け を 乞 い た がる →》
《 どんな お 大 尽 でも →》
《「 野暮 」 だ と 振って やる こと が できる 》
《 まったく 商売 を せ ぬ わけに は いか ぬ が →》
《 いやな 客 と 寝る こと は ない 》
《 金 も 意気 も ある 本物 の 男 を 色 に する こと も できる 》
《 ここ に は そういう 栄華 が ある 》
《( 彦三郎 ) ただし 》
《 それ が できる の は 一握り の 花魁 だけ だ →》
《 ほとんど の 女 郎 は さげすま れて 死んで いく 》
《 これ も 事実 》
《 お前 は 姿形 も 才気 も 恵まれて いる 》
《 気 の 強 さ も いずれ 大きな 魅力 に なろう 》
《 どう だ ?》
《 逃げる より も いっそ 》
《 てっぺん を 目指して み ない か ?》
《 やる 》
《 あたい 菩薩 に なる よ 》
《 おやじ 様 》
《 頭 は … もう 菩薩 の ようだ な 》
《 は は は …》
それ から は 本当の 親 の ように
いえ … それ 以上 に 育てて いただき
ゆえに 困る のであり ん す
おやじ 様 に は
亡くなって もらって は どうにも 困る のであり ん すよ
あった …
あ ~ ッ ! うわ ~ ッ !
落ち着いて ください
この 血 を 全て 抜き取れば ご 主人 助かり ます
血 腫 が あった んです ご 主人 助かった んです よ
は あ … 助かった
そう なる と 思う ちょ った ぜ よ !
なあ ! わし の 見込み に 間違い は なかろう
あの … これ で 野 風 さん の お 話 なく なり ます よ ね ?
意 に そわ ない 客 を 取る と いう 話 は …
もちろん … ご破算 で ございます
よかった
よかった です
そんな こと を 覚えて …
≪( 野 風 ) 南方 様
ぜひ また ご 登 楼 を
その 際 に は 心 より
もてなし さ せて いただく であり ん す
いや そんな … おい わし は ?
坂本 様 は お 忙しい 方 と お伺い しん した ゆえ
お まん は わし を 浅 葱 裏 ち 呼んだ のう
龍 馬 さん さて … 覚え が
わし は 田舎 侍 に は 違いない けん ど
江戸 勤 番 の 武士 で は ない ぜ よ
浅 葱 裏 っ ちゅう が は 野暮 やけん ど
れっきとした 武士 の こと を 言う が じゃ ろ
わしゃ そんな ええ もん や ない ぜ よ
ただ の 脱 藩 浪人 じゃ
脱 藩 浪人 の 坂本 龍 馬
浅 葱 裏 に 失礼 じゃき 今度 は 間違わ んで くれる かのう
あい
脱 藩 浪人 の 坂本 龍 馬 様
しかと 覚えて おく であり ん す
≪( 龍 馬 ) うむ
ふ ふ ふ …
( 烏 の 鳴き声 )
明 烏 か よ
あ ッ … あれ
明 烏 って 結局 どういう 話 な んです か ?
ふん ! お もろ ない 話 ぜ よ
あの … 先生
咲 は 先生 が 吉原 に 行か れた こと に
相当 動揺 して いる と 思い ます から
そう です よ ね 若い 娘 さん に したら …
お 帰り なさい ませ !
手術 は うまく いき ました か ?
あ ッ … 咲 は 気 に など して おり ませ ぬ ゆえ
誤解 して ます よ 咲 さ ん !
〈 未来 教えて ほしい こと が ある 〉
〈 野 風 さん は 君 の ご 先祖 様 なんだろう か ?〉
〈 彼女 と かかわる こと は 〉
〈 君 の 未来 を いい 方向 に 変えて いく の か 〉
〈 悪い 方向 に 導いて いく の か 〉
〈 それとも 何の 関係 も ない の か 〉
グズグズ して も 仕方ない か
〈 ただ 俺 と して は この 出会い が …〉
日付 …
変わって ない !
寿命 が …
〈 この 出会い が 〉
〈 君 に 幸 あれ か し と 〉
〈 願う ばかりだ 〉
「 女性 は 入れ ない 」 と 聞き ました が
兄 に 大 門 の 切手 を 取って もらい ました
何 か 怒って ます ?
はは は … いや ~
生まれ変わった ようで ございます
先生 今度 こそ ぜひ 遊んで いって ください ませ
今度 … こそ ?
「 遊んで け 」 って 言う のに
「 揚げ だ し 豆腐 が 食べ たい から 」 って →
さっさと 帰っちゃ って
今日 揚げ だ し 豆腐 に し ます から
はい
≪( 野 風 ) お 待ち ください なん し 先生
実は もう 一 人 先生 に 診て いただき たい 病人 が
いい です よ 診 ましょう
ありがとう ございます こちら で
お 武家 の お ひ い 様 は こちら で
あまり お 目 に よろしい もの で は ご ざん せ ん ゆえ
平気で ございます !
私 は 先生 の 助手 です から
姐 さん
お 医者 様 を お 連れ した であり ん す
江戸 で 一 番 の 先生 であり ん す ゆえ
〈 未来 … 俺 は この とき 〉
〈 とんでもない もの を 見た んだ 〉
〈 それ は 現代 で は まず 見かける こと は ない 〉
〈 末期 の …〉