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刀語, Katanagatari Episode 1 (1)

Katanagatari Episode 1 (1)

反逆 者 飛騨 鷹 比 等

虚 刀 流 の

そう か 僕 は こういうふうに 失敗 する の か

今 と なって は せ ん なき こと だ

お 客 さん あっ 見えて き ました よ

あんな 無人 島 に 何の ご用 な んです か ね ?

無人 島 など で は ない

あれ は 大 乱 の 英雄 の 流刑 の 地

大 乱 後 の 世 を 治めた 将軍家 鳴 は

英雄 鑢 六 枝 の 剣 法 を 恐れ

彼 の 家族 と 共に この 無人 島 に 幽閉 し ました

それ から 20 年

誰 も この 地 を 訪れる こと は あり ませ ん でした

あー 面倒だ な

何 して いる の 七 花

姉ちゃん

ああ かめ の 水 が なくなり そうだった から

そんな 格好 で 出て くる な よ 寒い だろう

大丈夫

少し くらい なら 気持ち いい ぐらい よ

それ より 今日 の 家事 当番 は わたし だった はずだ けど

そう だ っけ ?

私 の こと を 腫れ物 みたいに 扱う の は やめて って 言って る でしょ

そんな つもり は ない よ

いい だ ろ これ も 修行 の 一環 だ

余計な 気 回し を 教えた 覚え は なく って よ

ほら うち に 入って ろ って

修行 なんて もう 何の 意味 も ない じゃ ない

姉ちゃん

あなた の 代 で 終わる 流派 を 保つ こと に

どんな 意味 が ある と いう の

意味 なんて 考えて ない けど

七 花 父さん が 死んで もう 1 年 に なる の よ

そろそろ いい んじゃ ない の

そんな 言い 方 は ないだ ろ

昨日 なんか さ 新しい 必殺 技 と か 考えた んだ ぜ

すげ え カッコイイ やつ …

もともと 島流し の 憂き目 に 遭った の は 父さん 一 人 な んだ し

わたし は 無理だ けど あなた 一 人 なら 舟 を 作って …

バカな こと 言わ ないで くれよ

起き 抜け に する 話 じゃ なかった わ ね

朝 ご飯 の 支度 は して おく から 早く 行って らっしゃい

ああ

新しい 必殺 技 と いう の は

そう ね 後 で 見て あげる わ

島 を 出る か そりゃ いつか は 出る 話 だ と 思って た けど さ

これ が 唯一 親父 から 受け継いだ もの だ から

大事に できる うち は 大事に して おき たい んだ

俺 に は ほか に 何も ない から

ハァ 面倒だ なぁ

親父 が いたら 一 発 で 切り捨て 御免 なんだろう が

おい

本土 の 人間 か

初めて 見た

刀 か

それ も 初めて 見た

別に よそ者 だろう が 誰 だろう が 入って くる の は 構わ ない んだ けど よ

えっ と

この 島 へ の 刃物 の 持ち込み は 固く 禁じ られて いる

そう か

そう だ

それ は 失礼 した

知ら なかった もの で な 許して おけ

まあ 俺 が 決めた わけじゃ ない けど さ

あんた どう やって この 島 に 来た ?

舟 で 来た に 決まって おる

特に 俺 が 知り たい わけじゃ ない んだ けど な

こういう とき は そう しろ って 言わ れて きた から な

次 は

「 何 を し に 来た ?」 だ ろ

そう だ 何 を しに 来た

この 島 に 虚 刀 流 六 代 目 鑢 六 枝 殿 が おる と 聞いた のだ が

そ なた 知ら ぬ か ?

親父 なら 死んだ よ 1 年 前

そう か

今 は 俺 が 当主 だ

虚 刀 流 七 代 目 当主 鑢 七 花

ああ いや これ は 愚問 であった

20 年 も 前 の 話 に なる 故 な

そういう こと も ある と は 思って おった が

なるほど いい 体 を して おる

見てくれ も まあまあだ

及第 点 と いった ところ だ な

何の 話 だ ?

こっち の 話 だ

親父 に 用事 だった みたいだ けど 悪かった な

その とおり だ が 少し 違う

用 が あった の は 虚 刀 流 当主 に だ

故に 六 枝 殿 へ の 用事 は

今 そ なた へ の 用事 へ と 変わった のだ

七 花 名乗り が 遅れて しまった な わたし は とがめ と いう

とがめ ? 変な 名前

幕府 の 軍 所 総 監督 奇 策 士 を なり わ い と して おる

まずは 虚 刀 流 試さ せて もらう

富 岳 三十六 刀工 が 一 人 壬生 傘 麿呂 が 初期 作品 だ

試す ?

言葉 どおり の 意味 だ 参る !

ギャフン !?

鑢 七 花 奇 策 士 とがめ

数奇な 運命 を 共に する 2 人 が 出会った の は

まだ 「 ギャフン 」 と いう 言葉 が 古く なかった 時代

睦月 中旬 の こと でした

ただいま

奇 策 士 の とがめ さ んでした っけ ?

この 島 に いら した 初めて の お 客 さま です ので

もてなす 作法 を 心得て は いま せ ん が

いや こちら こそ 突然の 来訪 申し訳ない

鑢 六 枝 の 娘 七 実 と 申し ます

父 を 訪ねて こ られた と いう こと です が

父 と は どういった ゆかり が お あり な んです か ?

ゆかり と 言える ほど の つながり は ない

あり ませ ぬ か

ない ただ の 飛び込み と 考えて もらって 結構だ 七 実

刀 は 預から せて もらって い ます

この 島 は 刃物 の 持ち込み 使用 を 禁じて い ます から

虚 刀 流 故 に かな

「 虚 しい 刀 の 流れ 」 と 書いて 虚 刀 流

刀 を 用い ない 闇 の 流派

その 技術 が わずかに 日 の 目 を 見た の は

初代 鑢 一 根 と 六 代 目 当主 鑢 六 枝 の 代 だけ

戦国 と 大 乱

戦場 の 混乱 と の 中 で のみ 振るわ れる

最強の 殺人 剣 術

あの 男 が 七 代 目

とがめ さ ん あなた は 弟 に 斬り つけよう と した と か ?

虚 刀 流 の 神髄 を 手っ取り早く 見せて もらおう と 思って な

しかし 慣れ ぬ こと は せ ん もの だ

わたし は 奇 策 士 であって 剣士 で は ない

その わりに は 見事な もの だった けど な

フッ あれ だけ は 練習 して きた のだ

もっと 最後 まで 練習 して こい

乱暴な 方法 です ね

そう 思わ れて も 仕方ない が

こちら に も 思惑 が あった

鑢 六 枝 の 名 は 聞こえて は いた が

わたし は その 顔 を 知ら なかった から な

人違い が 起きて は 大変だ

虚 刀 流 の 技 を 示して もらえる ようならば

それ が 何より の 名札 代わり だ

六 枝 が 七 花 でも それ は 同じです か

では もう 一 度 試して み ます か ?

小岩 に 足 を 取ら れた こと は 幸運だった と 思って ください

もしも 刀 身 が 七 花 の 肉体 に 届いて いた なら

額 に こぶ 程度 で は 済み ませ ん でした よ

否 その 言葉 を もって 虚 刀 流 の 名札 と 受け取って おく と しよう さ ようです か

では お 話 を 伺い ましょう

う そ なた 天下 が 欲しく ない か ? いら ん

そう であろう

それ は この世 に 生 を 受けた からに は 当然の こと だ

野心 の 強 さ を 恥じる こと は ない

か の 反逆 者 たち の 心意気 そのもの まで も 誰 が 否定 できよう

突き詰めれば 今 の 将軍家 も

もともと は 下 克 上 で 成り 上がった 家系 で は ない か

ならば … って いら ん の かい !

ああ あんた の 話 は よく 分から ん

分から ん だ と

とがめ さ ん なにぶん わたし たち は 島 育ち の 世間知らずです

遠回しな 表現 は 通じ ぬ もの と 思って いただいた 方 が

う っ そう か

そう なる と

七 実に は 席 を 外して もらい たい のだ が

それ は 無理な 相談 だ

理由 は 2 つ ある

一 つ は 虚 刀 流 は 血族 の 技 だ から だ

たとえ 親父 が 生きて たって

俺 と 姉ちゃん を この 場 に 同席 さ せた だろう

そして もう 一 つ

俺 は 物 を 考える の が 苦手だ

そう か 物 を 考える こと が 苦手 か

では 他言 無用 と いう こと で 話 を さ せて もらう こと に しよう

四季 崎記 紀 と いう 刀 かじ を 知って おる な ?

知ら ん

そう であろう このような 離れ 小 島 に 住んで おった ところ で

剣 客 を 名乗る 以上 は その 名 を 知ら ぬ と いう わけに は ゆく まい

刀 を 使わ ぬ 虚 刀 流 に とって は

四季 崎 は 天敵 の ような 存在 に なる の か

うん うん

… って 知ら ん の かい !

大層な やつ だ と いう こと は 分かった

四季 崎記 紀 確か 戦国 時代 の 有名な 刀 かじ でした か

その 程度 の 認識 しか ない の か

虚 刀 流 の 開祖 と 浅から ぬ 因縁 が あった と いう こと だけ は

聞いて い ます が

四季 崎 は どの 流派 に も 属さ ない 孤独に して 孤高

異端 中 の 異端 の 刀 かじ

しかし 彼 こそ が 戦国 を 最も 支配 した 刀 かじ と いわ れて おる

戦国 を 支配 ?

言葉 の 意味 が 分かり ませ ん が

彼 は どこ の 国 どこ の 家 に も 属さ ず

おの が 打った 刀 を 全国 に 節操 なく ばらまいた

総計 25 カ国 に 合計 1,000 本 の 刀 を だ

1,000 本 多い な

少ない で すね

少ない の 方 で

四季 崎 の 刀 が 多い 国 ほど

優勢に 戦闘 を 進めた

それ を 戦国 を 支配 した と 言わ ず して 何と 言おう

それ は 逆な ので は

戦闘 を 優位に 進め られる ほど の 大きな 国 だ から こそ

四季 崎 の 刀 を 多く 集める こと が できた のだ と

確かに 現実 的に は そう 見る べきだろう

しかし そういう 幻想 が 生じた こと も また 確かだ

150 年 前 その 幻想 に 取りつか れた 旧 将軍 が

天下 統一 を 成し遂げた 際 過半数 507 本 の 刀 が あった と いう

大人 げ ねえ

その後 四季 崎 の 刀 を 妄信 した 旧 将軍 が 行った 政 が

か の 悪法 刀狩り だ

大 仏 造り の ため と か どう と かって やつ ?

それ は 表向き の 話 だ

真 の 目的 は 剣 客 狩り だった と 聞いて い ます

いや 誠 の 目的 は

四季 崎 の 刀 の 収集 に あった

その とおり だ

何とも あきれた 話 です ね

とはいえ それ で 10万 本 を 超える 刀 が 旧 将軍 の 下 に 集まった のだ

10万 本 少ない な

多い で すね

多い の 方 で

で その 四季 崎 の 刀 が 集まった って ことか

いや 最終 的に 旧 将軍 は あきらめた のだ

はっ ?

1,000 本 全て 所在 まで は 突き止める こと が できて いた

所在 まで は な

だったら 収集 できた だろう ?

将軍 の 権力 が あった んだ から さ

そう は 問屋 が 卸さ ん のだ よ この 話 は

1,000 本 の うち 最後に 残った 12 本 と いう の が な

どう しよう も ない 際 物 で な

988 本 は

その たった 12 本 を 制作 する ため の 習作 だった と いう の が

現在 の 考え 方 だ

12 本 の ため の 1,000 本

いい 狂い っぷり であろう ?

鉋 鈍 つる ぎ 針 鎧 鎚 鐚 釵 鋸 銓 镀 銃 そして それ ら の 凶悪 さ は よく 聞こえた 名 刀 妖刀 など で は 比較 に なら ない

旧 将軍 の 命 で 収集 に 出向いた 軍隊 が

ただ 一 本 の 刀 に 全滅 さ せ られた と いう 記録 が ある

初めて 聞く 話 です

そこ で わたし が この 島 に やって 来た 用件 だ

虚 刀 流 当主 鑢 七 花

伝説 の 刀 かじ 四季 崎記 紀 が

最後 の 12 本 それ を 収集 する 命 を そな たに 与え たい

Katanagatari Episode 1 (1) katanagatari|episode Katanagatari Episode 1 (1) 片语第 1 集 (1)

反逆 者   飛騨 鷹 比 等 はんぎゃく|もの|ひだ|たか|ひ|とう

虚 刀 流 の きょ|かたな|りゅう|

そう か 僕 は こういうふうに 失敗 する の か ||ぼく|||しっぱい|||

今 と なって は せ ん なき こと だ いま||||||||

お 客 さん あっ 見えて き ました よ |きゃく|||みえて|||

あんな 無人 島 に 何の ご用 な んです か ね ? |むじん|しま||なんの|ごよう||||

無人 島 など で は ない むじん|しま||||

あれ は   大 乱 の 英雄 の 流刑 の 地 ||だい|らん||えいゆう||るけい||ち

大 乱 後 の 世 を 治めた 将軍家 鳴 は だい|らん|あと||よ||おさめた|しょうぐんけ|な|

英雄 鑢 六 枝 の 剣 法 を 恐れ えいゆう|やすり|むっ|えだ||けん|ほう||おそれ

彼 の 家族 と 共に この 無人 島 に 幽閉 し ました かれ||かぞく||ともに||むじん|しま||ゆうへい||

それ から 20 年 ||とし

誰 も この 地 を 訪れる こと は あり ませ ん でした だれ|||ち||おとずれる||||||

あー 面倒だ な |めんどうだ|

何 して いる の   七 花 なん||||なな|か

姉ちゃん ねえちゃん

ああ   かめ の 水 が なくなり そうだった から |||すい|||そう だった|

そんな 格好 で 出て くる な よ 寒い だろう |かっこう||でて||||さむい|

大丈夫 だいじょうぶ

少し くらい なら 気持ち いい ぐらい よ すこし|||きもち|||

それ より   今日 の 家事 当番 は わたし だった はずだ けど ||きょう||かじ|とうばん|||||

そう だ っけ ?

私 の こと を 腫れ物 みたいに 扱う の は やめて って 言って る でしょ わたくし||||はれもの||あつかう|||||いって||

そんな つもり は ない よ

いい だ ろ これ も 修行 の 一環 だ |||||しゅぎょう||いっかん|

余計な 気 回し を 教えた 覚え は なく って よ よけいな|き|まわし||おしえた|おぼえ||||

ほら うち に 入って ろ って |||はいって||

修行 なんて もう 何の 意味 も ない じゃ ない しゅぎょう|||なんの|いみ||||

姉ちゃん ねえちゃん

あなた の 代 で 終わる 流派 を 保つ こと に ||だい||おわる|りゅうは||たもつ||

どんな 意味 が ある と いう の |いみ|||||

意味 なんて   考えて ない けど いみ||かんがえて||

七 花 父さん が 死んで もう 1 年 に なる の よ なな|か|とうさん||しんで||とし||||

そろそろ いい んじゃ ない の

そんな 言い 方 は ないだ ろ |いい|かた|||

昨日 なんか さ 新しい 必殺 技 と か 考えた んだ ぜ きのう|||あたらしい|ひっさつ|わざ|||かんがえた||

すげ え カッコイイ やつ …

もともと   島流し の 憂き目 に 遭った の は 父さん 一 人 な んだ し |しまながし||うきめ||あった|||とうさん|ひと|じん|||

わたし は 無理だ けど あなた 一 人 なら   舟 を 作って … ||むりだ|||ひと|じん||ふね||つくって

バカな こと 言わ ないで くれよ ばかな||いわ||

起き 抜け に する 話 じゃ なかった わ ね おき|ぬけ|||はなし||||

朝 ご飯 の 支度 は して おく から 早く 行って らっしゃい あさ|ごはん||したく|||||はやく|おこなって|

ああ

新しい 必殺 技 と いう の は あたらしい|ひっさつ|わざ||||

そう ね 後 で 見て あげる わ ||あと||みて||

島 を 出る か そりゃ いつか は 出る 話 だ と 思って た けど さ しま||でる|||||でる|はなし|||おもって|||

これ が 唯一 親父 から 受け継いだ もの だ から ||ゆいいつ|おやじ||うけついだ|||

大事に できる うち は 大事に して おき たい んだ だいじに||||だいじに||||

俺 に は ほか に 何も ない から おれ|||||なにも||

ハァ 面倒だ なぁ |めんどうだ|

親父 が いたら   一 発 で 切り捨て 御免 なんだろう が おやじ|||ひと|はつ||きりすて|ごめん||

おい

本土 の 人間 か ほんど||にんげん|

初めて 見た はじめて|みた

刀 か かたな|

それ も 初めて 見た ||はじめて|みた

別に よそ者 だろう が 誰 だろう が 入って くる の は 構わ ない んだ けど よ べつに|よそもの|||だれ|||はいって||||かまわ||||

えっ と

この 島 へ の 刃物 の 持ち込み は 固く 禁じ られて いる |しま|||はもの||もちこみ||かたく|きんじ||

そう か

そう だ

それ は 失礼 した ||しつれい|

知ら なかった もの で な 許して おけ しら|||||ゆるして|

まあ   俺 が 決めた わけじゃ ない けど さ |おれ||きめた||||

あんた どう やって この 島 に 来た ? ||||しま||きた

舟 で 来た に 決まって おる ふね||きた||きまって|

特に 俺 が 知り たい わけじゃ ない んだ けど な とくに|おれ||しり||||||

こういう とき は そう しろ って 言わ れて きた から な ||||||いわ||||

次 は つぎ|

「 何 を し に 来た ?」 だ ろ なん||||きた||

そう だ   何 を しに 来た ||なん|||きた

この 島 に 虚 刀 流 六 代 目 鑢 六 枝 殿 が おる と 聞いた のだ が |しま||きょ|かたな|りゅう|むっ|だい|め|やすり|むっ|えだ|しんがり||||きいた||

そ なた   知ら ぬ か ? ||しら||

親父 なら 死んだ よ 1 年 前 おやじ||しんだ||とし|ぜん

そう か

今 は   俺 が 当主 だ いま||おれ||とうしゅ|

虚 刀 流   七 代 目 当主   鑢 七 花 きょ|かたな|りゅう|なな|だい|め|とうしゅ|やすり|なな|か

ああ いや これ は 愚問 であった ||||ぐもん|

20 年 も 前 の 話 に なる 故 な とし||ぜん||はなし|||こ|

そういう こと も   ある と は 思って おった が ||||||おもって||

なるほど いい 体 を して おる ||からだ|||

見てくれ も まあまあだ みてくれ||

及第 点 と いった ところ だ な きゅうだい|てん|||||

何の 話 だ ? なんの|はなし|

こっち の 話 だ ||はなし|

親父 に 用事 だった みたいだ けど 悪かった な おやじ||ようじ||||わるかった|

その とおり だ が   少し 違う ||||すこし|ちがう

用 が あった の は 虚 刀 流 当主 に だ よう|||||きょ|かたな|りゅう|とうしゅ||

故に 六 枝 殿 へ の 用事 は ゆえに|むっ|えだ|しんがり|||ようじ|

今 そ なた へ の 用事 へ と 変わった のだ いま|||||ようじ|||かわった|

七 花 名乗り が 遅れて しまった な わたし は とがめ と いう なな|か|なのり||おくれて|||||||

とがめ ? 変な 名前 |へんな|なまえ

幕府 の 軍 所 総 監督 奇 策 士 を なり わ い と して おる ばくふ||ぐん|しょ|そう|かんとく|き|さく|し|||||||

まずは 虚 刀 流 試さ せて もらう |きょ|かたな|りゅう|ためさ||

富 岳 三十六 刀工 が 一 人 壬生 傘 麿呂 が 初期 作品 だ とみ|たけ|さんじゅうろく|とうこう||ひと|じん|みぶ|かさ|まろろ||しょき|さくひん|

試す ? ためす

言葉 どおり の 意味 だ   参る ! ことば|||いみ||まいる

ギャフン !?

鑢 七 花 奇 策 士 とがめ やすり|なな|か|き|さく|し|

数奇な 運命 を 共に する 2 人 が 出会った の は すうきな|うんめい||ともに||じん||であった||

まだ 「 ギャフン 」 と いう 言葉 が 古く なかった 時代 ||||ことば||ふるく||じだい

睦月 中旬 の こと でした むつき|ちゅうじゅん|||

ただいま

奇 策 士 の とがめ さ んでした っけ ? き|さく|し|||||

この 島 に いら した 初めて の お 客 さま です ので |しま||||はじめて|||きゃく|||

もてなす 作法 を 心得て は いま せ ん が |さほう||こころえて|||||

いや こちら こそ 突然の 来訪 申し訳ない |||とつぜんの|らいほう|もうしわけない

鑢 六 枝 の 娘 七 実 と 申し ます やすり|むっ|えだ||むすめ|なな|み||もうし|

父 を 訪ねて こ られた と いう こと です が ちち||たずねて|||||||

父 と は どういった   ゆかり が お あり な んです か ? ちち||||||||||

ゆかり と 言える ほど の つながり は ない ||いえる|||||

あり ませ ぬ か

ない ただ の   飛び込み と 考えて もらって 結構だ 七 実 |||とびこみ||かんがえて||けっこうだ|なな|み

刀 は 預から せて もらって い ます かたな||あずから||||

この 島 は   刃物 の 持ち込み   使用 を 禁じて い ます から |しま||はもの||もちこみ|しよう||きんじて|||

虚 刀 流 故 に かな きょ|かたな|りゅう|こ||

「 虚 しい 刀 の 流れ 」 と 書いて 虚 刀 流 きょ||かたな||ながれ||かいて|きょ|かたな|りゅう

刀 を 用い ない   闇 の 流派 かたな||もちい||やみ||りゅうは

その 技術 が わずかに 日 の 目 を 見た の は |ぎじゅつ|||ひ||め||みた||

初代 鑢 一 根 と 六 代 目 当主 鑢 六 枝 の 代 だけ しょだい|やすり|ひと|ね||むっ|だい|め|とうしゅ|やすり|むっ|えだ||だい|

戦国 と 大 乱 せんごく||だい|らん

戦場 の 混乱 と の 中 で のみ 振るわ れる せんじょう||こんらん|||なか|||ふるわ|

最強の 殺人 剣 術 さいきょうの|さつじん|けん|じゅつ

あの 男 が 七 代 目 |おとこ||なな|だい|め

とがめ さ ん あなた は 弟 に 斬り つけよう と した と か ? |||||おとうと||きり|||||

虚 刀 流 の 神髄 を 手っ取り早く 見せて もらおう と 思って な きょ|かたな|りゅう||しんずい||てっとりばやく|みせて|||おもって|

しかし   慣れ ぬ こと は せ ん もの だ |なれ|||||||

わたし は 奇 策 士 であって 剣士 で は ない ||き|さく|し||けんし|||

その わりに は 見事な もの だった けど な |||みごとな||||

フッ あれ だけ は 練習 して きた のだ ||||れんしゅう|||

もっと 最後 まで 練習 して こい |さいご||れんしゅう||

乱暴な 方法 です ね らんぼうな|ほうほう||

そう 思わ れて も 仕方ない が |おもわ|||しかたない|

こちら に も   思惑 が あった |||おもわく||

鑢 六 枝 の 名 は 聞こえて は いた が やすり|むっ|えだ||な||きこえて|||

わたし は その 顔 を 知ら なかった から な |||かお||しら|||

人違い が 起きて は 大変だ ひとちがい||おきて||たいへんだ

虚 刀 流 の 技 を 示して もらえる ようならば きょ|かたな|りゅう||わざ||しめして||

それ が   何より の 名札 代わり だ ||なにより||なふだ|かわり|

六 枝 が 七 花 でも それ は 同じです か むっ|えだ||なな|か||||おなじです|

では   もう 一 度 試して み ます か ? ||ひと|たび|ためして|||

小岩 に 足 を 取ら れた こと は 幸運だった と 思って ください こいわ||あし||とら||||こううんだった||おもって|

もしも   刀 身 が 七 花 の 肉体 に 届いて いた なら |かたな|み||なな|か||にくたい||とどいて||

額 に こぶ 程度 で は 済み ませ ん でした よ がく|||ていど|||すみ||||

否 その 言葉 を もって 虚 刀 流 の 名札 と 受け取って おく と しよう いな||ことば|||きょ|かたな|りゅう||なふだ||うけとって||| さ ようです か

では   お 話 を 伺い ましょう ||はなし||うかがい|

う そ なた 天下 が 欲しく ない か ? |||てんか||ほしく|| いら ん

そう であろう

それ は この世 に 生 を 受けた からに は 当然の こと だ ||このよ||せい||うけた|||とうぜんの||

野心 の 強 さ を 恥じる こと は ない やしん||つよ|||はじる|||

か の 反逆 者 たち の 心意気 そのもの まで も 誰 が 否定 できよう ||はんぎゃく|もの|||こころいき|その もの|||だれ||ひてい|

突き詰めれば 今 の 将軍家 も つきつめれば|いま||しょうぐんけ|

もともと は 下 克 上 で 成り 上がった 家系 で は ない か ||した|かつ|うえ||なり|あがった|かけい||||

ならば  … って   いら ん の かい !

ああ   あんた の 話 は よく 分から ん |||はなし|||わから|

分から ん だ と わから|||

とがめ さ ん なにぶん   わたし たち は 島 育ち の 世間知らずです |||||||しま|そだち||せけんしらずです

遠回しな 表現 は 通じ ぬ もの と 思って いただいた 方 が とおまわしな|ひょうげん||つうじ||||おもって||かた|

う っ そう か

そう なる と

七 実に は 席 を 外して もらい たい のだ が なな|じつに||せき||はずして||||

それ は 無理な 相談 だ ||むりな|そうだん|

理由 は 2 つ ある りゆう|||

一 つ は 虚 刀 流 は 血族 の 技 だ から だ ひと|||きょ|かたな|りゅう||けつぞく||わざ|||

たとえ 親父 が 生きて たって |おやじ||いきて|

俺 と 姉ちゃん を この 場 に 同席 さ せた だろう おれ||ねえちゃん|||じょう||どうせき|||

そして もう 一 つ ||ひと|

俺 は 物 を 考える の が 苦手だ おれ||ぶつ||かんがえる|||にがてだ

そう か 物 を 考える こと が 苦手 か ||ぶつ||かんがえる|||にがて|

では   他言 無用 と いう こと で 話 を さ せて もらう こと に しよう |たごん|むよう|||||はなし|||||||

四季 崎記 紀 と いう 刀 かじ を 知って おる な ? しき|さきき|き|||かたな|||しって||

知ら ん しら|

そう であろう このような 離れ 小 島 に 住んで おった ところ で |||はなれ|しょう|しま||すんで|||

剣 客 を 名乗る 以上 は その 名 を 知ら ぬ と いう わけに は ゆく まい けん|きゃく||なのる|いじょう|||な||しら|||||||

刀 を 使わ ぬ 虚 刀 流 に とって は かたな||つかわ||きょ|かたな|りゅう|||

四季 崎 は 天敵 の ような 存在 に なる の か しき|さき||てんてき|||そんざい||||

うん うん

… って   知ら ん の かい ! |しら|||

大層な やつ だ と いう こと は 分かった たいそうな|||||||わかった

四季 崎記 紀   確か 戦国 時代 の 有名な 刀 かじ でした か しき|さきき|き|たしか|せんごく|じだい||ゆうめいな|かたな|||

その 程度 の 認識 しか ない の か |ていど||にんしき||||

虚 刀 流 の 開祖 と 浅から ぬ 因縁 が あった と いう こと だけ は きょ|かたな|りゅう||かいそ||あさから||いんねん|||||||

聞いて い ます が きいて|||

四季 崎 は どの 流派 に も 属さ ない 孤独に して 孤高 しき|さき|||りゅうは|||ぞくさ||こどくに||ここう

異端 中 の 異端 の 刀 かじ いたん|なか||いたん||かたな|

しかし   彼 こそ が 戦国 を 最も 支配 した 刀 かじ と いわ れて おる |かれ|||せんごく||もっとも|しはい||かたな|||||

戦国 を 支配 ? せんごく||しはい

言葉 の 意味 が 分かり ませ ん が ことば||いみ||わかり|||

彼 は どこ の 国 どこ の 家 に も 属さ ず かれ||||くに|||いえ|||ぞくさ|

おの が 打った 刀 を 全国 に 節操 なく ばらまいた ||うった|かたな||ぜんこく||せっそう||

総計 25 カ国 に 合計 1,000 本 の 刀 を だ そうけい|かこく||ごうけい|ほん||かたな||

1,000 本 多い な ほん|おおい|

少ない で すね すくない||

少ない の 方 で すくない||かた|

四季 崎 の 刀 が 多い 国 ほど しき|さき||かたな||おおい|くに|

優勢に 戦闘 を 進めた ゆうせいに|せんとう||すすめた

それ を 戦国 を 支配 した と 言わ ず して   何と 言おう ||せんごく||しはい|||いわ|||なんと|いおう

それ は 逆な ので は ||ぎゃくな||

戦闘 を 優位に 進め られる ほど の 大きな 国 だ から こそ せんとう||ゆういに|すすめ||||おおきな|くに|||

四季 崎 の 刀 を 多く 集める こと が できた のだ と しき|さき||かたな||おおく|あつめる|||||

確かに 現実 的に は そう 見る べきだろう たしかに|げんじつ|てきに|||みる|

しかし   そういう 幻想 が 生じた こと も また 確かだ ||げんそう||しょうじた||||たしかだ

150 年 前 その 幻想 に 取りつか れた 旧 将軍 が とし|ぜん||げんそう||とりつか||きゅう|しょうぐん|

天下 統一 を 成し遂げた 際 過半数 507 本 の 刀 が あった と いう てんか|とういつ||なしとげた|さい|かはんすう|ほん||かたな||||

大人 げ ねえ おとな||

その後   四季 崎 の 刀 を 妄信 した 旧 将軍 が 行った 政 が そのご|しき|さき||かたな||もうしん||きゅう|しょうぐん||おこなった|まつりごと|

か の 悪法   刀狩り だ ||あくほう|かたながり|

大 仏 造り の ため と か どう と かって やつ ? だい|ふつ|つくり||||||||

それ は 表向き の 話 だ ||おもてむき||はなし|

真 の 目的 は 剣 客 狩り だった と 聞いて い ます まこと||もくてき||けん|きゃく|かり|||きいて||

いや 誠 の 目的 は |まこと||もくてき|

四季 崎 の 刀 の 収集 に あった しき|さき||かたな||しゅうしゅう||

その とおり だ

何とも あきれた 話 です ね なんとも||はなし||

とはいえ それ で 10万 本 を 超える 刀 が 旧 将軍 の 下 に 集まった のだ |||よろず|ほん||こえる|かたな||きゅう|しょうぐん||した||あつまった|

10万 本 少ない な よろず|ほん|すくない|

多い で すね おおい||

多い の 方 で おおい||かた|

で その 四季 崎 の 刀 が 集まった って ことか ||しき|さき||かたな||あつまった||

いや 最終 的に 旧 将軍 は あきらめた のだ |さいしゅう|てきに|きゅう|しょうぐん|||

はっ ?

1,000 本   全て 所在 まで は 突き止める こと が できて いた ほん|すべて|しょざい|||つきとめる||||

所在 まで は な しょざい|||

だったら 収集 できた だろう ? |しゅうしゅう||

将軍 の 権力 が あった んだ から さ しょうぐん||けんりょく|||||

そう は 問屋 が 卸さ ん のだ よ この 話 は ||とんや||おろさ|||||はなし|

1,000 本 の うち 最後に 残った 12 本 と いう の が な ほん|||さいごに|のこった|ほん|||||

どう しよう も ない 際 物 で な ||||さい|ぶつ||

988 本 は ほん|

その たった 12 本 を 制作 する ため の 習作 だった と いう の が ||ほん||せいさく||||しゅうさく|||||

現在 の 考え 方 だ げんざい||かんがえ|かた|

12 本 の ため の 1,000 本 ほん||||ほん

いい 狂い っぷり であろう ? |くるい||

鉋 鈍 つる ぎ かんな|どん|| 針 鎧 鎚 鐚 釵 鋸 銓 镀 銃 そして それ ら の 凶悪 さ は よく 聞こえた はり|よろい|つち|びた|さい|のこぎり|せん||じゅう|||||きょうあく||||きこえた 名 刀 妖刀 など で は 比較 に なら ない な|かたな|ようかたな||||ひかく|||

旧 将軍 の 命 で 収集 に 出向いた 軍隊 が きゅう|しょうぐん||いのち||しゅうしゅう||でむいた|ぐんたい|

ただ 一 本 の 刀 に 全滅 さ せ られた と いう 記録 が ある |ひと|ほん||かたな||ぜんめつ||||||きろく||

初めて 聞く 話 です はじめて|きく|はなし|

そこ で わたし が この 島 に やって 来た 用件 だ |||||しま|||きた|ようけん|

虚 刀 流 当主   鑢 七 花 きょ|かたな|りゅう|とうしゅ|やすり|なな|か

伝説 の 刀 かじ 四季 崎記 紀 が でんせつ||かたな||しき|さきき|き|

最後 の 12 本   それ を 収集 する 命 を そな たに 与え たい さいご||ほん|||しゅうしゅう||いのち||||あたえ|