24.2 或る 女 ある|おんな 24.2 Una mujer

しばらく そんな 表面 的な うわさ 話 など に 時 を 過ごして いた が 、 いつまでも そう は して いられ ない 事 を 葉子 は 知っていた 。 ||ひょうめん|てきな||はなし|||じ||すごして|||||||いら れ||こと||ようこ||しっていた この 年齢 の 違った 二 人 の 妹 に 、 どっち に も 堪 念 の 行く ように 今 の 自分 の 立場 を 話して 聞か せて 、 悪い 結果 を その 幼い 心 に 残さ ない ように しむける の は さすが に 容易な 事 で は なかった 。 |ねんれい||ちがった|ふた|じん||いもうと|||||たま|ねん||いく||いま||じぶん||たちば||はなして|きか||わるい|けっか|||おさない|こころ||のこさ||||||||よういな|こと||| ||||||||||||endure||||||||||||||||||||||||to guide||||||||| 葉子 は 先刻 から しきりに それ を 案じて いた のだ 。 ようこ||せんこく|||||あんじて|| ・・

「 これ でも 召し上がれ 」・・ ||めしあがれ ||please eat

食事 が 済んで から 葉子 は 米国 から 持って 来た キャンディー を 二 人 の 前 に 置いて 、 自分 は 煙草 を 吸った 。 しょくじ||すんで||ようこ||べいこく||もって|きた|||ふた|じん||ぜん||おいて|じぶん||たばこ||すった ||||||||||candy||||||||||||smoked 貞 世 は 目 を 丸く して 姉 の する 事 を 見 やって いた 。 さだ|よ||め||まるく||あね|||こと||み|| |||||round||||||||| ・・

「 ねえ さま そんな もの 吸って いい の ？ ||||すって|| ||||smoking|| 」・・

と 会釈 なく 尋ねた 。 |えしゃく||たずねた 愛子 も 不思議 そうな 顔 を して いた 。 あいこ||ふしぎ|そう な|かお||| ・・

「 え ゝ こんな 悪い 癖 が ついて しまった の 。 |||わるい|くせ|||| けれども ねえさん に は あなた 方 の 考えて もみられ ない ような 心配な 事 や 困る 事 が ある もの だ から 、 つい 憂さ晴らし に こんな 事 も 覚えて しまった の 。 |||||かた||かんがえて|もみ られ|||しんぱいな|こと||こまる|こと|||||||うさばらし|||こと||おぼえて|| ||||||||couldn't be considered|||worrisome|||||||||||distraction||||||| However, my sister has worries and troubles that you can't even imagine, so I remembered this to relieve my worries. 今夜 は あなた 方 に わかる ように ねえさん が 話して 上げて みる から 、 よく 聞いて ちょうだい よ 」・・ こんや|||かた||||||はなして|あげて||||きいて||

倉地 の 胸 に 抱か れ ながら 、 酔いしれた ように その 頑丈な 、 日 に 焼けた 、 男性 的な 顔 を 見 やる 葉子 の 、 乙女 と いう より も もっと 子供 らしい 様子 は 、 二 人 の 妹 を 前 に 置いて きちんと 居ずまい を 正した 葉子 の どこ に も 見いださ れ なかった 。 くらち||むね||いだか|||よいしれた|||がんじょうな|ひ||やけた|だんせい|てきな|かお||み||ようこ||おとめ||||||こども||ようす||ふた|じん||いもうと||ぜん||おいて||いずまい||ただした|ようこ|||||みいださ|| ||||held|||swayed||||||||||||||||||||||||||||||||||||straightened|||||||| その 姿 は 三十 前後 の 、 充分 分別 の ある 、 しっかり した 一 人 の 女性 を 思わ せた 。 |すがた||さんじゅう|ぜんご||じゅうぶん|ぶんべつ|||||ひと|じん||じょせい||おもわ| 貞 世 も そういう 時 の 姉 に 対する 手心 を 心得て いて 、 葉子 から 離れて まじめに すわり 直した 。 さだ|よ|||じ||あね||たいする|てごころ||こころえて||ようこ||はなれて|||なおした Sadayo also knew what to do with his sister at such times, and he separated himself from Yoko and sat down again. こんな 時 うっかり その 威厳 を 冒す ような 事 でも する と 、 貞 世に でも だれ に でも 葉子 は 少し の 容赦 も し なかった 。 |じ|||いげん||おかす||こと||||さだ|よに|||||ようこ||すこし||ようしゃ||| ||||||risk||||||||||||||||||| しかし 見た 所 は いかにも 慇懃 に 口 を 開いた 。 |みた|しょ|||いんぎん||くち||あいた ・・

「 わたし が 木村 さん の 所 に お 嫁 に 行く ように なった の は よく 知ってます ね 。 ||きむら|||しょ|||よめ||いく||||||しって ます| ||||||||||||||||know| 米国 に 出かける ように なった の も その ため だった のだ けれども ね 、 もともと 木村 さん は 私 の ように 一 度 先 に お 嫁入り した 人 を もらう ような 方 で は なかった んだ し する から 、 ほんとう は わたし どうしても 心 は 進ま なかった んです よ 。 べいこく||でかける||||||||||||きむら|||わたくし|||ひと|たび|さき|||よめいり||じん||||かた||||||||||||こころ||すすま||| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||could not move||| That's why I started going to the United States, but from the start, Mr. Kimura wasn't the type of person like me to get married to someone who had already been married, so it's true. I was really reluctant to move forward. でも 約束 だ から ちゃんと 守って 行く に は 行った の 。 |やくそく||||まもって|いく|||おこなった| けれども ね 先方 に 着いて みる と わたし の から だ の 具合 が どうも よく なくって 上陸 は とても でき なかった からし かたなしに また 同じ 船 で 帰る ように なった の 。 ||せんぽう||ついて||||||||ぐあい||||なく って|じょうりく||||||||おなじ|せん||かえる||| ||||||||||||condition||||||||||mustard|仕方なしに|||||||| 木村 さん は どこまでも わたし を お 嫁 に して くださる つもりだ から 、 わたし も その 気 で は いる のだ けれども 、 病気 で は しかたがない でしょう 。 きむら|||||||よめ|||||||||き||||||びょうき|||| それ に 恥ずかしい 事 を 打ち明ける ようだ けれども 、 木村 さん に も わたし に も 有り余る ような お 金 が ない もの だ から 、 行き も 帰り も その 船 の 事務 長 と いう 大切な 役目 の 方 に お 世話に なら なければ なら なかった の よ 。 ||はずかしい|こと||うちあける|||きむら|||||||ありあまる|||きむ||||||いき||かえり|||せん||じむ|ちょう|||たいせつな|やくめ||かた|||せわに|||||| |||||||||||||||excessive|||||||||||||||||||||||||||||||| It seems like I'm embarrassed to tell you something, but Mr. Kimura and I don't have a lot of money, so I have to ask the important role of the ship's secretary to take care of me when I come and go. I had to. その方 が 御 親切に も わたし を ここ まで 連れて 帰って くださった ばかりで 、 もう 一 度 あなた 方 に も あう 事 が できた んだ から 、 わたし は その 倉地 と いう 方 ―― 倉 は お 倉 の 倉 で 、 地 は 地球 の 地 と 書く の 。 そのほう||ご|しんせつに||||||つれて|かえって||||ひと|たび||かた||||こと||||||||くらち|||かた|くら|||くら||くら||ち||ちきゅう||ち||かく| |||||||||||gave||||||||||||||||||||||warehouse|||||||||earth||||| 三吉 と いう お 名前 は 貞 ちゃん に も わかる でしょう ―― その 倉地 さん に は ほんとうに お 礼 の 申し よう も ない くらい な んです よ 。 みよし||||なまえ||さだ|||||||くらち||||||れい||もうし||||||| 愛 さん なんか は その方 の 事 で 叔母さん な ん ぞ から いろいろな 事 を 聞か されて 、 ねえさん を 疑って いやし ない か と 思う けれども 、 それ に は また それ で めんどうな わけ の ある 事 な のだ から 、 夢にも 人 の いう 事 な ん ぞ を そのまま 受け取って もらっちゃ 困ります よ 。 あい||||そのほう||こと||おばさん||||||こと||きか|さ れて|||うたがって|||||おもう||||||||||||こと||||ゆめにも|じん|||こと||||||うけとって||こまり ます| ||||||||||quotation particle|quotation particle||||||||||||||||||||||troublesome||||||||||||||quotation particle||||||| ねえさん を 信じて おくれ 、 ね 、 よ ご ざん す か 。 ||しんじて||||||| わたし は お 嫁 な ん ぞ に 行か ない でも いい 、 あなた 方 と こうして いる ほど うれしい 事 は ない と 思います よ 。 |||よめ|||||いか|||||かた||||||こと||||おもい ます| 木村 さん の ほう に お 金 でも できて 、 わたし の 病気 が なおり さえ すれば 結婚 する ように なる かも しれ ない けれども 、 それ は いつ の 事 と も わから ない し 、 それ まで は わたし は こうした まま で 、 あなた 方 と 一緒に どこ か に お家 を 持って 楽しく 暮らしましょう ね 。 きむら||||||きむ|||||びょうき|||||けっこん||||||||||||こと|||||||||||||||かた||いっしょに||||おいえ||もって|たのしく|くらし ましょう| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||house||||live| いい だろう 貞 ちゃん 。 ||さだ| もう 寄宿 なん ぞ に い なくって も ようご ざん す よ 」・・ |きしゅく|||||なく って||||| |boarding||||||||||

「 おね え さま わたし 寄宿 で は 夜 に なる と ほんとう は 泣いて ばかり いた の よ 。 ||||きしゅく|||よ||||||ないて|||| older sister||||||||||||||||| "Sister, I used to cry at night at the boarding house. 愛 ねえさん は よく お 寝 に なって も わたし は 小さい から 悲しかった んです もの 」・・ あい|||||ね||||||ちいさい||かなしかった||

そう 貞 世 は 白状 する ように いった 。 |さだ|よ||はくじょう||| さっき まで は いかにも 楽し そうに いって いた その 可憐な 同じ 口 び る から 、 こんな 哀れな 告白 を 聞く と 葉子 は 一 入 しんみり した 心持ち に なった 。 ||||たのし|そう に||||かれんな|おなじ|くち|||||あわれな|こくはく||きく||ようこ||ひと|はい|||こころもち|| ・・

「 わたし だって も よ 。 貞 ちゃん は 宵 の 口 だけ くすくす 泣いて も あと は よく 寝て いた わ 。 さだ|||よい||くち|||ないて|||||ねて|| ねえ 様 、 私 は 今 まで 貞 ちゃん に も いわ ないで いました けれども …… みんな が 聞こえよ がし に ねえ 様 の 事 を かれこれ いいます のに 、 たまに 悪い と 思って 貞 ちゃん と 叔母さん の 所 に 行ったり な ん ぞ する と 、 それ は ほんとうに ひどい …… ひどい 事 を おっしゃる ので 、 どっち に 行って も くやしゅう ございました わ 。 |さま|わたくし||いま||さだ||||||い ました||||きこえよ||||さま||こと|||いい ます|||わるい||おもって|さだ|||おばさん||しょ||おこなったり|||||||||||こと||||||おこなって|||| ||||||||||||||||can hear||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||| 古藤 さん だって このごろ は お 手紙 さえ くださら ない し …… 田島 先生 だけ は わたし たち 二 人 を かわいそう がって くださいました けれども ……」・・ ことう||||||てがみ|||||たしま|せんせい|||||ふた|じん||||くださ い ました| ||||||||||||||||||||||please| Even Mr. Furudo hasn't even sent me a letter these days... Only Mr. Tajima took pity on the two of us, but..."

葉子 の 思い は 胸 の 中 で 煮え 返る ようだった 。 ようこ||おもい||むね||なか||にえ|かえる| ・・

「 もう いい 堪忍 して ください よ 。 ||かんにん||| ねえさん が やはり 至らなかった んだ から 。 |||いたらなかった|| |||did not reach|| お とうさん が いらっしゃれば お互いに こんな いやな 目 に は あわ ない んだろう けれども （ こういう 場合 葉子 は おくび に も 母 の 名 は 出さ なかった ） 親 の ない わたし たち は 肩身 が 狭い わ ね 。 ||||おたがいに|||め||||||||ばあい|ようこ|||||はは||な||ださ||おや||||||かたみ||せまい|| |father|||each other|||||||||||||||||||||||||||||shoulders|||| まあ あなた 方 は そんなに 泣いちゃ だめ 。 ||かた|||ないちゃ| |||||will cry| 愛 さん な んです ね あなた から 先 に 立って 。 あい|||||||さき||たって |||||you|||| ねえさん が 帰った 以上 は ねえさん に なんでも 任して 安心 して 勉強 して ください よ 。 ||かえった|いじょう|||||まかして|あんしん||べんきょう||| ||||||||entrust|||||| そして 世間 の 人 を 見返して お やり 」・・ |せけん||じん||みかえして|| |||||glance back at||

葉子 は 自分 の 心持ち を 憤 ろし くい い張って いる のに 気 が ついた 。 ようこ||じぶん||こころもち||いきどお|||いばって|||き|| |||||||angrily||stubbornly||||| いつのまにか 自分 まで が 激しく 興奮 して いた 。 |じぶん|||はげしく|こうふん|| ・・

火鉢 の 火 は いつか 灰 に なって 、 夜寒 が ひそやかに 三 人 の 姉妹 に はい よって いた 。 ひばち||ひ|||はい|||よさむ|||みっ|じん||しまい|||| ||||||||||quietly|||||||| もう 少し 睡気 を 催して 来た 貞 世 は 、 泣いた あと の 渋い 目 を 手の甲 で こすり ながら 、 不思議 そうに 興奮 した 青白い 姉 の 顔 を 見 やって いた 。 |すこし|すいき||もよおして|きた|さだ|よ||ないた|||しぶい|め||てのこう||||ふしぎ|そう に|こうふん||あおじろい|あね||かお||み|| |||||||||||||||back of the hand||||||||||||||| 愛子 は 瓦 斯 の 灯 に 顔 を そむけ ながら しくしく と 泣き 始めた 。 あいこ||かわら|し||とう||かお||||||なき|はじめた ||tile|saki||||||turned||sobbing||| ・・

葉子 は もう それ を 止めよう と は し なかった 。 ようこ|||||とどめよう|||| |||||let's stop|||| 自分 で すら 声 を 出して 泣いて みたい ような 衝動 を つき返し つき返し 水落 の 所 に 感じ ながら 、 火鉢 の 中 を 見入った まま 細かく 震えて いた 。 じぶん|||こえ||だして|ないて|||しょうどう||つきかえし|つきかえし|みずおち||しょ||かんじ||ひばち||なか||みいった||こまかく|ふるえて| |||||||||||rebound||water falling|||||||||||||| ・・

生まれかわら なければ 回復 しよう の ない ような 自分 の 越し 方 行く末 が 絶望 的に はっきり と 葉子 の 心 を 寒く 引き締めて いた 。 うまれかわら||かいふく|||||じぶん||こし|かた|ゆくすえ||ぜつぼう|てきに|||ようこ||こころ||さむく|ひきしめて| would be reborn||||||||||||||||||||||| The hopelessness of her past and future, which could not be recovered unless she was born again, made Yoko's heart cold and stiff. ・・

それ でも 三 人 が 十六 畳 に 床 を 敷いて 寝て だいぶ たって から 、 横浜 から 帰って 来た 倉地 が 廊下 を 隔てた 隣 の 部屋 に 行く の を 聞き 知る と 、 葉子 は すぐ 起き かえって しばらく 妹 たち の 寝息 気 を うかがって いた が 、 二 人 が いかにも 無心に 赤々 と した 頬 を して よく 寝入って いる の を 見 窮める と 、 そっと どてら を 引っかけ ながら その 部屋 を 脱け出した 。 ||みっ|じん||じゅうろく|たたみ||とこ||しいて|ねて||||よこはま||かえって|きた|くらち||ろうか||へだてた|となり||へや||いく|||きき|しる||ようこ|||おき|||いもうと|||ねいき|き|||||ふた|じん|||むしんに|あかあか|||ほお||||ねいって||||み|きわめる|||||ひっかけ|||へや||ぬけだした |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||without thought|||||||||||||to the utmost|||||hook|||||escaped Even so, a long time after the three of them had slept on the 16 tatami mat floor, she heard that Kurachi, who had returned from Yokohama, was going to the next room across the corridor. When I saw that the two of them were sleeping well with bright red cheeks, I gently grabbed them and escaped from the room.