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I Am a Cat by Soseki Natsume, Chapter I - 09

Chapter I - 09

その後 吾輩 は 度々 黒 と 邂逅 する 。 邂逅 する 毎 に 彼 は 車屋 相当 の 気焔 を 吐く 。 先 に 吾輩 が 耳 に した と いう 不徳 事件 も 実は 黒 から 聞いた のである 。 或る 日 例 の ごとく 吾輩 と 黒 は 暖かい 茶畠 の 中 で 寝転び ながら いろいろ 雑談 を して いる と 、 彼 は いつも の 自慢 話し を さも 新し そうに 繰り返した あと で 、 吾輩 に 向って 下 の ごとく 質問 した 。 「 御めえ は 今 まで に 鼠 を 何匹 とった 事 が ある 」 智識 は 黒 より も 余程 発達 して いる つもり だ が 腕力 と 勇気 と に 至って は 到底 黒 の 比較 に は ならない と 覚悟 は して いた もの の 、 この 問 に 接し たる 時 は 、 さすが に 極り が 善く は なかった 。 けれども 事実 は 事実 で 詐る 訳 に は いかない から 、 吾輩 は 「 実は とろう とろう と 思って まだ 捕らない 」 と 答えた 。 黒 は 彼 の 鼻 の 先 から ぴんと 突張って いる 長い 髭 を びりびり と 震わせて 非常に 笑った 。 元来 黒 は 自慢 を する 丈に どこ か 足りない ところ が あって 、 彼 の 気焔 を 感心 した ように 咽喉 を ころころ 鳴らして 謹聴 して いれば はなはだ 御し やすい 猫 である 。 吾輩 は 彼 と 近付 に なって から 直 に この 呼吸 を 飲み込んだ から この 場合 に も な 近付 己れ を 弁護 して ますます 形勢 を わるく する の も 愚 である 、 いっそ の 事 彼 に 自分 の 手柄話 を しゃべら して 御茶 を 濁す に 若く は ない と 思案 を 定めた 。 そこ で おとなしく 「 君 など は 年 が 年 である から 大分 とった ろう 」 と そそのかして 見た 。 果然 彼 は 墻壁 の 欠所 に 吶喊 して 来た 。 「 たんと でも ねえ が 三 四 十 は とった ろう 」 と は 得意気 なる 彼 の 答 であった 。 彼 は なお 語 を つづけて 「 鼠 の 百 や 二百 は 一 人 で いつでも 引き受ける が いたち って え 奴 は 手 に 合わ ねえ 。 一度 いたち に 向って 酷い 目 に 逢った 」「 へえ なるほど 」 と 相槌 を 打つ 。 黒 は 大きな 眼 を ぱち つかせて 云う 。 「 去年 の 大掃除 の 時 だ 。 うち の 亭主 が 石灰 の 袋 を 持って 椽 の 下 へ 這い込んだら 御めえ 大きな いたち の 野郎 が 面喰 って 飛び出した と 思い ねえ 」「 ふん 」 と 感心 して 見せる 。 「 いたち って けども 何 鼠 の 少し 大きい グレー の もの だ 。 こん 畜生 って 気 で 追っかけて とうとう 泥溝 の 中 へ 追い込んだ と 思い ねえ 」「 うまく やった ね 」 と 喝采 して やる 。 「 ところが 御めえ いざ って え 段になる と 奴 め 最後 っ 屁をこきゃがった 。 臭 え の 臭く ねえ の って それから って えもの は いたち を 見る と 胸 が 悪く なら あ 」 彼 は ここ に 至って あたかも 去年 の 臭気 を 今なお 感ずる ごとく 前足 を 揚げて 鼻 の 頭 を 二 三 遍 な で 廻した 。 吾輩 も 少々 気の毒な 感じ が する 。

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Chapter I - 09 chapter|i Chapter I - 09 Capítulo I - 09 第 I-09 章 第 I-09 章

その後 吾輩 は 度々 黒 と 邂逅 する 。 そのご|わがはい||たびたび|くろ||かいこう| |I||often|||encounter| |||spesso|||incontro| After that, I often say black. Dopo di che, io incontro spesso il nero. 邂逅 する 毎 に 彼 は 車屋 相当 の 気焔 を 吐く 。 かいこう||まい||かれ||くるまや|そうとう||き ほのお||はく |||||||||||emette Every time he hesitates, he exudes the equivalent of a car shop. Ogni volta che ci incontriamo, lui emette un vapore paragonabile a un garage. 先 に 吾輩 が 耳 に した と いう 不徳 事件 も 実は 黒 から 聞いた のである 。 さき||わがはい||みみ|||||ふとく|じけん||じつは|くろ||きいた| Der Vorfall mit der Unmoral, von dem ich vorhin gehört habe, wurde mir tatsächlich von Black erzählt. I had actually heard about the incident of immorality that I had heard about from Black. In realtà, anche l'incidente di cattiva condotta di cui ho sentito parlare prima, l'ho appreso da lui. 或る 日 例 の ごとく 吾輩 と 黒 は 暖かい 茶畠 の 中 で 寝転び ながら いろいろ 雑談 を して いる と 、 彼 は いつも の 自慢 話し を さも 新し そうに 繰り返した あと で 、 吾輩 に 向って 下 の ごとく 質問 した 。 ある|ひ|れい|||わがはい||くろ||あたたかい|ちゃ はた||なか||ねころび|||ざつだん|||||かれ||||じまん|はなし|||あたらし|そう に|くりかえした|||わがはい||むかいって|した|||しつもん| |||||||||||||||||||||||||||||||||||||verso||||| As usual one day, I and Kuro lie down in a warm tea field and chat with each other, and after repeating the usual boastful talk, he goes down to me. I asked you a question. 「 御めえ は 今 まで に 鼠 を 何匹 とった 事 が ある 」 智識 は 黒 より も 余程 発達 して いる つもり だ が 腕力 と 勇気 と に 至って は 到底 黒 の 比較 に は ならない と 覚悟 は して いた もの の 、 この 問 に 接し たる 時 は 、 さすが に 極り が 善く は なかった 。 ご め え||いま|||ねずみ||なん ひき||こと|||ちしき||くろ|||よほど|はったつ||||||わんりょく||ゆうき|||いたって||とうてい|くろ||ひかく|||なら ない||かくご|||||||とい||せっし||じ||||きょく り||よく|| |||||topi||quante|||||intelligenza|||||molto|sviluppo||||||forza||||||||||comparazione|||||era deciso|||||||domanda||affrontare||||||abilità||bene|| "You have had several mice so far." Knowledge is much more developed than black, but strength and courage cannot be compared to black at all. I was prepared, but when I came across this question, it wasn't really good. «Quante mani di topi hai preso finora?» Pensavo che la mia intelligenza fosse di gran lunga più sviluppata rispetto a quella di Kuro, ma ero consapevole che in termini di forza fisica e coraggio non potevo neanche lontanamente competere. Tuttavia, quando affrontai questa domanda, non mi sentii affatto a mio agio. けれども 事実 は 事実 で 詐る 訳 に は いかない から 、 吾輩 は 「 実は とろう とろう と 思って まだ 捕らない 」 と 答えた 。 |じじつ||じじつ||いつわる|わけ|||いか ない||わがはい||じつは||||おもって||とら ない||こたえた |||||詐る(1)|ragione||||||||prendere|||||non catturare|| However, since facts are facts, and I couldn't just pass them off as facts, I replied, "Actually, I've been meaning to do it, but I haven't caught it yet." Tuttavia, la realtà è realtà e non si può negarla, quindi risposi: «In realtà, pensavo di prenderne qualcuno, ma non l'ho ancora fatto». 黒 は 彼 の 鼻 の 先 から ぴんと 突張って いる 長い 髭 を びりびり と 震わせて 非常に 笑った 。 くろ||かれ||はな||さき|||つ はって||ながい|ひげ||||ふるわせて|ひじょうに|わらった |||||||||dritto|||||vibrante||tremando|| Black shook his long beard, which was taut from the tip of his nose, and laughed very much. Kuro ridacchiò fortemente, tremando la sua lunga barba che si ergeva dritta sulla punta del suo naso. 元来 黒 は 自慢 を する 丈に どこ か 足りない ところ が あって 、 彼 の 気焔 を 感心 した ように 咽喉 を ころころ 鳴らして 謹聴 して いれば はなはだ 御し やすい 猫 である 。 がんらい|くろ||じまん|||たけ に|||たりない||||かれ||き ほのお||かんしん|||むせ のど|||ならして|つつし き||||ぎょし||ねこ| ||||||a causa di|||||||||||感心(1)|||||ころころ(1)||ascoltare attentamente|||非常に|domare||| Originally, black wasn't long enough to be proud of, and as if he was impressed with his flames, he was a cat that was easy to control if he listened to it with his throat ringing. 吾輩 は 彼 と 近付 に なって から 直 に この 呼吸 を 飲み込んだ から この 場合 に も な 近付 己れ を 弁護 して ますます 形勢 を わるく する の も 愚 である 、 いっそ の 事 彼 に 自分 の 手柄話 を しゃべら して 御茶 を 濁す に 若く は ない と 思案 を 定めた 。 わがはい||かれ||ちかづ||||なお|||こきゅう||のみこんだ|||ばあい||||ちかづ|おのれ れ||べんご|||けいせい||||||ぐ||||こと|かれ||じぶん||てがら はなし||||おちゃ||にごす||わかく||||しあん||さだめた |||||||||||||||||||||||difendere||ますます(1)|situazione||malevolo||||stupido||いっそ(1)|||||||storia di merito||parlare||tè||fare confusione||若く(1)||||decisione||ha deciso Since I swallowed this breath immediately after getting close to him, it is foolish to defend myself in this case as well, and even worse, to him. He decided that he was not young to talk about his credit and make the tea muddy. Da quando mi sono avvicinato a lui, ho inghiottito questo respiro. In questa situazione, difendere me stesso sarebbe follemente controproducente. È meglio che lui parli dei suoi meriti e che io non sembri inadeguato, così ho deciso. そこ で おとなしく 「 君 など は 年 が 年 である から 大分 とった ろう 」 と そそのかして 見た 。 |||きみ|||とし||とし|||だいぶ|||||みた ||tranquillamente|||||||||||だろう||ha incitato| At that point, I quietly said, "You and others are old, so I think you've taken a lot of time." Così, ho cercato di provocarlo dicendo: "Non sei un po' in là con l'età?" 果然 彼 は 墻壁 の 欠所 に 吶喊 して 来た 。 か ぜん|かれ||しょうかべ||けつ しょ||とっかん||きた davvero|||muro||difetto||urlare|| As a matter of fact, he came to the deficiency of the wall. Infine, lui è venuto a gridare al punto debole del muro. 「 たんと でも ねえ が 三 四 十 は とった ろう 」 と は 得意気 なる 彼 の 答 であった 。 たん と||||みっ|よっ|じゅう||||||とくいげ||かれ||こたえ| ||||||||||||soddisfatto||||risposta| "Hey, I'll take thirty-four," was his proud answer. 彼 は なお 語 を つづけて 「 鼠 の 百 や 二百 は 一 人 で いつでも 引き受ける が いたち って え 奴 は 手 に 合わ ねえ 。 かれ|||ご|||ねずみ||ひゃく||にひゃく||ひと|じん|||ひきうける|||||やつ||て||あわ| ||まだ|||continuando|||||duecento||||||prendere||furetto|||||||| He continued to say, "A hundred or two hundred mice are always alone, but he doesn't fit in his hand. Lui continuò a dire: "Cento o duecento topi posso affrontarli da solo in qualsiasi momento, ma un faina, beh, quella è una bestia che non riesco a gestire." 一度 いたち に 向って 酷い 目 に 逢った 」「 へえ なるほど 」 と 相槌 を 打つ 。 ひと ど|||むかいって|こく い|め||あった||||あいづち||うつ I met a terrible eye for the weasels once, "and" I see. " "Una volta ho avuto davvero una brutta esperienza con una faina," disse. "Ah, capisco," rispose l'altro annuendo. 黒 は 大きな 眼 を ぱち つかせて 云う 。 くろ||おおきな|がん|||つか せて|うん う |||||apri|aprendo| Black has big eyes. Il nero disse con gli occhi grandi spalancati. 「 去年 の 大掃除 の 時 だ 。 きょねん||おおそうじ||じ| ||pulizia di primavera||| "It was the time of last year's general cleaning. うち の 亭主 が 石灰 の 袋 を 持って 椽 の 下 へ 這い込んだら 御めえ 大きな いたち の 野郎 が 面喰 って 飛び出した と 思い ねえ 」「 ふん 」 と 感心 して 見せる 。 ||ていしゅ||せっかい||ふくろ||もって|たるき||した||はい こんだら|ご め え|おおきな|||やろう||おもて しょく||とびだした||おもい||||かんしん||みせる |||||||||||||è entrato|||||||spaventato||è saltato fuori|||||||| I'm sure that if my husband had crawled under the rafters with a bag of lime, your big boys would have jumped out of their skin. Quando il mio marito si è infilato sotto il portico con un sacco di calce, ho pensato che un grosso furfante, una donnola, fosse saltato fuori spaventato. "Hmph" disse, mostrando ammirazione. 「 いたち って けども 何 鼠 の 少し 大きい グレー の もの だ 。 |||なん|ねずみ||すこし|おおきい|ぐれー||| "Weasels are a little big mouse, though. "Ma la donnola non è altro che un animale leggermente più grande di un topo." こん 畜生 って 気 で 追っかけて とうとう 泥溝 の 中 へ 追い込んだ と 思い ねえ 」「 うまく やった ね 」 と 喝采 して やる 。 |ちくしょう||き||おっかけて||どろ みぞ||なか||おいこんだ||おもい||||||かっさい|| こん|||||||fossato||||ha costretto||||||||applauso|| I don't think I've finally driven into the mud ditch after chasing after this brute. "" You did it well. " Penso che l'animale l'abbia inseguito arrabbiato, e alla fine l'ha spinto dentro un canale di fango. "Hai fatto un buon lavoro!" gli applaude. 「 ところが 御めえ いざ って え 段になる と 奴 め 最後 っ 屁をこきゃがった 。 |ご め え||||だん に なる||やつ||さいご||へ を こきゃ がった |||||arrivare al punto||||||ha scoreggiato "However, when it came to the stage, he had to go to the last flatulence. Tuttavia, quando si arriva al punto critico, quell'individuo ha finalmente rilasciato un petardo. 臭 え の 臭く ねえ の って それから って えもの は いたち を 見る と 胸 が 悪く なら あ 」 彼 は ここ に 至って あたかも 去年 の 臭気 を 今なお 感ずる ごとく 前足 を 揚げて 鼻 の 頭 を 二 三 遍 な で 廻した 。 くさ|||くさく||||それ から||||||みる||むね||わるく|||かれ||||いたって||きょねん||しゅうき||いまなお|かんずる||まえあし||あげて|はな||あたま||ふた|みっ|へん|||まわした |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||ha girato It smells like it doesn't smell, and then when we see the weasels, it makes me sick. "He came here and lifted his forefoot and lifted his nose as if he still felt the odor of last year. I turned it around. Se non puzza, dice, ma dopo aver visto il furetto, il cuore comincia a ribollire. A questo punto, sembra che egli possa percepire ancora l’odore disgustoso dell’anno scorso; solleva le zampe anteriori e si strofina il naso più volte. 吾輩 も 少々 気の毒な 感じ が する 。 わがはい||しょうしょう|きのどくな|かんじ|| |||poveroso||| I also feel a little sorry. Anch'io, in un certo senso, mi sento un po' dispiaciuto.