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悪人 (Villain) (1st Book), 第二章 彼は誰に会いたかったか?【5】

第 二 章 彼 は 誰 に 会い たかった か?【5】

刑事 たち は 了解 した と も し ない と も 答え ず に 帰った 。

自分 を 疑って いる ように は 見え なかった が 、 自分 の 将来 を 考えて くれて いる ように も 思え なかった 。

刑事 に 告げた こと は 、 まったく の 真実 だった 。

ただ 、 真実 を 真実 と して 告げる の が 、 こんなに 難しい と は 思わ なかった 。 これ ならば 嘘 を つく ほう が よほど 簡単だ と 林 は 思った 。

とにかく 塾 へ 向かう んだ 。

とにかく 真面目 に 働いて 、 もしも 万が一 の とき は 、 もう 二度と 過ち を 繰り返さ ない と 謝罪 する んだ 。 それ に これ だけ は 誓って 言える 。 塾 に 通って くる 小学生 の 女の子 たち に 性 的な 興味 を 持った こと は ない 。

言葉 は 出て くる のだ が 、 座り込んだ 場所 から 立ち上がる こと が でき なかった 。

正確な 人数 は 教えて くれ なかった が 、 刑事 たち は すでに 彼女 と 関係 の あった 何 人 か の 男 たち に 面会 した と 言った 。

暇つぶし に 登録 した サイト で 知り合った 女 に とつぜん 死な れて 、 途方 に 暮れて いる 男 たち だ 。

自分 も そう だ が 、 彼女 を 殺そう と 思って 会った ヤツ など 誰 も い なかった はずだ 。 なのに 彼女 は 殺さ れた 。

娼婦 が 一 人 、 悪い 客 に 当たって 殺さ れた のだ と 思えば 、 少し は そこ に 紋切り型 の 物語 性 も 生まれる のだろう か 。

でも 殺さ れた の は 娼婦 で は ない 。 隠して は いた が 、 地道に 生命 保険 の 勧誘 を する 一 人 の 若い 女 だ 。 娼婦 の ふり を した 、 娼婦 で は ない 女 な のだ 。

ラブ ホテル の 狭い 客室 で 、「 から だ 、 柔らかい ね 」 と 林 が 褒める と 、 佳乃 は 下着 姿 の まま 、 自慢げに 前 屈して 見せた 。

「 新 体操 部 やった けん 、 前 は もっと 柔らかかった っちゃ けど 」

白い 肌 に 背骨 が 浮き出て いた 。

こちら に 向け られた 笑顔 は 、 二 カ月 後 に 殺さ れる こと など 知る 由 も なかった 。

同日 の 午前 中 、 福岡 から 百 キロ ほど 離れた 長崎 市 郊 外 で 、 清水 祐一 の 祖母 、 房枝 は 、 週 に 一 度 漁港 へ やって くる 行商 トラック で 買って きた ばかり の 野菜 を 、 痛む 膝 を 押さえ ながら 冷蔵 庫 に 詰めて いた 。

茄子 が 安かった ので 漬物 に でも しよう と 十 本 も 買って きた が 、 考えて みれば 茄子 の 漬物 を 祐一 が あまり 好きで は ない こと を 、 今に なって 思い出し 、 後悔 して いた 。

千 円 くらい で 済む だろう と 思って いた ところ 、 総額 で 1630 円 に なった 。

30 円 は まけて くれた が 、 それ でも 来週 まで 郵便 局 に 下ろし に いか なくて いい と 思って いた 財布 の 中身 が 心細く なって いる 。

この 日 も 、 房枝 は バス で 市 内 の 病院 に 入院 して いる 夫 、 勝治 を 見舞い に 行く 予定 だった 。

行けば 邪 慳 に する くせ に 、 行か ない と 文句 を 言う ので 、 必ず 行か なければ なら ず 、 保険 で 入院 費 は 無料 と は いえ 、 毎日 の バス 代 まで は 節約 しようがない 。

近所 の 停留所 から 長崎 駅前 まで 片道 310 円 。

駅前 で 乗り換えて 病院 前 まで が 180 円 。 毎日 往復 980 円 の 出費 に なる 。

一 週間 の 野菜 代 を 千 円 で 抑え たい 房枝 に は 、 毎日 980 円 と いう バス 代 は 、 上げ 膳 据 膳 の 温泉 旅館 で 贅沢 を して いる ような 後ろめた さ が ある 。

野菜 を 冷蔵 庫 に しまった あと 、 房枝 は プラスチック 容器 から 梅干し を 一 つ つまんで 口 に 入れた 。

「 おばちゃん ! おる ね ? 聞き覚え の ある 男 の 声 が 玄関 から 聞こえた の は その とき だった 。

梅干し を しゃぶり ながら 廊下 へ 出る と 、 駐在 所 の 巡査 と 見知らぬ 男 が 立って いる 。

「 あら 、 今ごろ 、 朝 メシ ね ? 人なつこい 笑顔 で 小 太り の 巡査 が 中 へ 入って くる 。

房枝 が 口 から 梅干し の 種 を 取り出して いる と 、「 さっき 聞いた けど 、 また じいちゃん が 入院 した って ? 」 と 巡査 が 言う 。

房枝 は 種 を 手のひら に 隠し ながら 、 巡査 の 横 に 立つ 背広 姿 の 男 に 目 を 向けた 。

日 に 灼 けた 肌 は 硬 そうで 、 だ ら り と 垂らした 手 の 指 が やけに 短い 。

「 こちら 、 県警 の 早田 さん 。

ちょっと 祐一 に 訊 きた か こと の ある って 」

「 祐一 に です か ? そう 訊 き 返す と 、 口 の 中 に ふわ っと 梅 の 香り が 広がった 。

日ごろ 交番 で 茶 飲み 話 を する とき は 、 気 に した こと も ない のだ が 、 巡査 の 腰 に ある 拳銃 が 房枝 の 目 に 飛び込んで くる 。

「 この前 の 日曜日 の 夜 、 祐一 は ど っか に 出かけ とった と ね ? 上がり 框 に 座り込んだ 巡査 は 、 無理に からだ を 捻って 訊 いて きた 。

横 に 立つ 刑事 が 慌てて その 肩 を 押さえ 、「 質問 は 私 が する けん 」 と 厳しい 顔 で 戒める 。

房枝 は 上がり 框 に 座り込んだ 巡査 に 、 まるで 寄り添う ように 正座 した 。

「 いや ぁ 、 なんか ね 、 福岡 の 三瀬 峠 で 殺さ れた 女の子 が 祐一 の 友達 らしかった い 」

戒め られた に も かかわら ず 、 巡査 は 房枝 に 話し 続けた 。

「 は ぁ ? 祐一 の 友達 が 殺さ れた って ? 正座 した まま 、 房枝 は 後ろ へ 反り返った 。

その 瞬間 、 膝 が 痛んで 、「 あた たた 」 と 声 を 上げる 。

慌てた 巡査 が 房枝 の 腕 を 取り 、「 ほら 、 また 立て ん ごと なる よ 」 と 引き起こして くれる 。

「 祐一 の 友達 って いう たら 、 中学 の とき の やろ か ? と 房枝 は 訊 いた 。

高校 が 工業 高校 だった ので 、 だ と したら 中学 の ころ だ と 思い 、 と すれば 、 この 辺 の 娘 さん が 殺さ れた こと に なる 。

「 いや 、 中学 じゃ なくて 、 最近 の 友達 やろ 」

「 最近 の ? 房枝 は 巡査 の 言葉 に 、 素っ頓狂 な 声 を 上げた 。

我が 孫 ながら 、 祐一 に は 心配に なる ほど 女 の 影 が なかった 。 女 の 影 どころ か 、 親しく して いる 男 の 友達 も 一 人 か 、 二 人 と 数 が 知れて いる 。

口 の 軽い 巡査 に うんざり した ように 、 背広 姿 の 刑事 が 、「 質問 は 私 が する って 言い よる やろう が 」 と 顔 を しかめた 。

「 ちょっと お 訊 き し ます けど 、 この 前 の 日曜日 です ね ……」

威圧 的な 声 で 刑事 に 訊 かれ 、 房枝 は 聞き 終わる の も 待た ず に 、「 日曜日 は 、 家 に おった と 思う と です けど ね 」 と 答えた 。

「 は ぁ 、 やっぱり おった と ね 」 と 、 巡査 が ほっと した ように また 口 を 挟んで くる 。

「 いや 、 ここ に 来る 前 に 駐在 所 で 岡崎 の ばあちゃん と 会う た と さ 。

祐一 が 出かける と したら 、 いつも 車 やろ ? 岡崎 の ばあちゃん ち は 駐車 場 の 横 やけん 、 車 が 出て 行く 音 なり 、 帰って くる 音 なり 、 全部 聞こえる って 、 前 から よう 言い よろう が 。 ばっ てん 、 岡崎 の ばあちゃん に 訊 いたら 、 日曜日 、 祐一 の 車 は ずっと あった って 言う けんさ 」

捲し立てる 巡査 に 、 房枝 も 刑事 も 口 を 挟め なかった 。

厳しかった 刑事 の 目 に 、 少し 優しい 色 が 滲 む の を 房枝 は 見た 。

「 あんた は 黙 っと けって 言う て も 、 きかん と や ねぇ 」

刑事 が お 喋り な 巡査 を 注意 する 。

ただ 、 さっき まで と は 違い 、 その 声 に どこ か 親し み が 感じ られる 。

「 私 も じいちゃん も 早う 寝て しまう けん 、 よう 分から ん と です けど 、 日曜日 、 祐一 は 部屋 に おった ような 気 が し ます けど ね 」 と 房枝 は 言った 。

「 岡崎 の ばあちゃん が そう 言う て 、 一緒に 住 ん ど る ばあちゃん も そう 言う なら 間違い なか やろ 」

巡査 が 房枝 で は なく 、 刑事 に 伝える ように 繰り返す 。

「 いや 、 実は です ね ……」

巡査 の 言葉 を 引き継ぐ ように 、 やっと 刑事 が 話し 始めた 。

房枝 は 手のひら に ある 梅干し の 種 が 気 に なって 仕方なかった 。

「 福岡 の 三瀬 峠 で 見つかった 女性 の 携帯 の 履歴 に お宅 の お 孫 さん の 番号 が あった と です よ 」

「 祐一 の ? 「 お 孫 さん の だけ じゃ なくて 、 その 女性 は 交友 関係 が 広くて です ね 」

「 その 女の子 は 、 この 辺 の 子 です か ? 「 いやいや 、 長崎 じゃ なくて 福岡 の 博多 の 人 でして ね 」

「 博多 ? 祐一 は 博多 に 友達 の おった と ばい ねぇ 。 ぜんぜん 知ら ん やった 」

丁寧に 説明 する と 、 いちいち 言葉 が 返って くる と 思った の か 、 そこ から 刑事 は 一気に 事情 を 説明 した 。

すでに 祐一 が その 晩 、 家 に いた こと に なって いた ので 、 どちら か と いう と 、 ふい の 訪問 を 謝罪 する ような 話し 方 だった 。

亡くなった 女性 は 石橋 佳乃 と いう 二十一 歳 の 女性 で 、 博多 で 保険 の 外交 員 を やって いる らしい 。

地元 の 友人 、 同僚 、 遊び 仲間 と かなり 顔 の 広い 女の子 で 、 事件 前 の 一 週間 だけ を 見て も 、 五十 人 近い 相手 と メール や 電話 の やりとり を して いる 。 その 中 に 祐一 も 入って いる らしい 。

「 最後に お 孫 さん が メール を 出した の は 事件 の 四 日 前 、 逆に その 女性 が 祐一 くん に 最後 の メール を 送った の が その 翌日 です ね 。

ただ 、 その あと に も 十 人 近く も 彼女 と 連絡 を 取り合って る 相手 が おる んです よ 」

房枝 は 刑事 の 話 を 訊 き ながら 、 殺さ れた と いう 若い 娘 の 姿 を 想像 した 。

交友 関係 が 広い と 聞いた だけ で 、 祐一 と は 縁遠い ような 気 が して なら ない 。 恐ろしい 事件 が 起こった の は 事実 な のだろう が 、 どうしても 祐一 と それ が 結びつか ない 。

刑事 の 説明 が 一 通り 終わった とき 、 房枝 は ぼんやり と 憲夫 の 言葉 を 思い出して いた 。

事件 の あった 翌日 、 祐一 は 二日酔い で 現場 へ 向かう 途中 、 とつぜん 吐いた と 言った 。

房枝 の 中 で 何 か が 繋がった 。 あの 朝 、 祐一 は この 女性 が 殺さ れた こと を テレビ か 何 か で 、 すでに 知っていた のだ 。 知人 を 失った 悲しみ が 、 吐き気 と して 現れた のだ 。

これ が 、 二十 年 近く 祐一 を 育てて きた 房枝 の 直感 だった 。

あまり 時間 が ない らしく 、 刑事 は 事情 を 説明 し 終える と 、「 ま ぁ 、 とにかく 、 おばあ ちゃん は 心配 せ ん でも よ かけ ん ね 」 と 優しく 声 を かけて きた 。

心配 など して い なかった が 、 房枝 は 、「 そう です か 」 と 神妙に 頷いた 。

「 祐一 くん が 仕事 から 戻って くる の は 何時ごろ やろ か ? 刑事 に 訊 かれ 、「 いつも は 六 時 半 ぐらい です けど 」 と 房枝 は 答えた 。

「 それ じゃ 、 もし また 何 か あったら 連絡 し ます けん 。 今日 の ところ は この 辺 で 」

刑事 に そう 言わ れ 、 房枝 は とりあえず 立ち上がる と 、「 ご 苦労 さん でした 」 と 頭 を 下げた 。

口 で は また 連絡 する と 言う が 、 刑事 に その 気 は な さ そうだった 。

刑事 を 見送り 、 また 上がり 框 に 座り込んだ 近所 の 巡査 が 、「 いや ぁ 、 びっくり した やろ ? 」 と おどけた 顔 を して 見せる 。

「 俺 も 、 最初に 祐一 が 参考人 って 聞いた とき に は 腰 抜かす か と 思う たよ 。

ただ 、 ちょうど その 電話 を 受けた とき に 、 岡崎 の ばあさん が 駐在 所 に おった けん 、 車 の 事 を 訊 いて みたら 、『 日曜日 、 祐一 は 車 出し とら ん 』 って 言う やろ 。 それ で すぐ 安心 した っさ 。 いや 、 実は ね 、 ここ だけ の 話 、 もう 犯人 は 分 か っと る らしい もん ね 。 ただ 、 ま ぁ 、 一応 、 確認 くらい は せ ん と いかんの やろ 」

「 あら 、 もう 犯人 は 分 か っと る と ? 房枝 は 大げさに ほっと して 見せ 、「 祐一 が 博多 の 女の子 と 仲良し なんて 、 ぜんぜん ピンと こ ん もん ねぇ 」 と 付け加えた 。

「 ま ぁ 、 祐一 も 年頃 の 男 やけん 、 仕方ない さ 。 その 女の子 は どうも 出会い 系 サイト で いろんな 人 と 知り合う とった よう や もん ね 」

「 出会い 系 っちゃ 何 ね ? 「 ま ぁ 、 簡単に 言う たら 、 文通 相手 の ような もん さ 」

「 へ ぇ 、 祐一 が 博多 の 娘 さん と 文通 し とった と は 知ら ん かった 」

房枝 は 手のひら に 梅干し の 種 が ある こと を 思い出し 、 やっと 外 へ 投げ捨てた 。

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第 二 章 彼 は 誰 に 会い たかった か?【5】 だい|ふた|しょう|かれ||だれ||あい|| first||chapter||||||| Kapitel 2 Wen wollte er treffen? [5 Chapter 2 Who Did He Want to See? [5 Capítulo 2 ¿A quién quería conocer? [5 제2장 그는 누구를 만나고 싶었나? [5]【5】그는 누구를 만나고 싶었나? Kapitel 2: Vem missade han [5]? 第 2 章 他想见谁?[5

刑事 たち は 了解 した と も し ない と も 答え ず に 帰った 。 けいじ|||りょうかい||||||||こたえ|||かえった |||understood||||||||did not answer|||returned The detectives returned without answering with or without acknowledging.

自分 を 疑って いる ように は 見え なかった が 、 自分 の 将来 を 考えて くれて いる ように も 思え なかった 。 じぶん||うたがって||||みえ|||じぶん||しょうらい||かんがえて|||||おもえ| ||doubting|||||||||future|||||||| It didn't seem like I was doubting myself, but I did not think I was thinking about my future.

刑事 に 告げた こと は 、 まったく の 真実 だった 。 けいじ||つげた|||||しんじつ| ||told|||||truth| What I told the detective was quite true.

ただ 、 真実 を 真実 と して 告げる の が 、 こんなに 難しい と は 思わ なかった 。 |しんじつ||しんじつ|||つげる||||むずかしい|||おもわ| |truth||truth|||to tell||||difficult|||| However, I did not think it so difficult to tell the truth as the truth. これ ならば 嘘 を つく ほう が よほど 簡単だ と 林 は 思った 。 ||うそ||||||かんたんだ||りん||おもった ||lie|||||much|much easier||Hayashi|| Hayashi thought that it would be much easier to tell a lie if this was done.

とにかく 塾 へ 向かう んだ 。 |じゅく||むかう| |cram school||| Anyway, I'm going to the beach.

とにかく 真面目 に 働いて 、 もしも 万が一 の とき は 、 もう 二度と 過ち を 繰り返さ ない と 謝罪 する んだ 。 |まじめ||はたらいて||まんがいち|||||にどと|あやまち||くりかえさ|||しゃざい|| |seriously||working|if|just in case||||||mistake||repeat|||apology|| Anyway, I'm working seriously, and I apologize if I'm not sure I won't repeat my mistakes again. それ に これ だけ は 誓って 言える 。 |||||ちかって|いえる |||||swear| And I swear I can only say this. 塾 に 通って くる 小学生 の 女の子 たち に 性 的な 興味 を 持った こと は ない 。 じゅく||かよって||しょうがくせい||おんなのこ|||せい|てきな|きょうみ||もった||| cram school||commuting|||||||sexual||||||| I have never been sexually interested in primary school girls who come to school.

言葉 は 出て くる のだ が 、 座り込んだ 場所 から 立ち上がる こと が でき なかった 。 ことば||でて||||すわりこんだ|ばしょ||たちあがる|||| ||||||sat down|||stand up|||| The words came out, but I couldn't get up from the place I sat down.

正確な 人数 は 教えて くれ なかった が 、 刑事 たち は すでに 彼女 と 関係 の あった 何 人 か の 男 たち に 面会 した と 言った 。 せいかくな|にんずう||おしえて||||けいじ||||かのじょ||かんけい|||なん|じん|||おとこ|||めんかい|||いった accurate|number||told||||detective|detectives|||||||||||||||meeting||| The exact number was not shown but the detectives said they had already met some men who had a relationship with her.

暇つぶし に 登録 した サイト で 知り合った 女 に とつぜん 死な れて 、 途方 に 暮れて いる 男 たち だ 。 ひまつぶし||とうろく||さいと||しりあった|おんな|||しな||とほう||くれて||おとこ|| killing time||registration||||met||||suddenly died||loss||at a loss|||| 暇つぶし||||||||||||途方に暮れて|||||| They are men who are at a loss after suddenly losing a woman they met on a site they registered for to kill time.

自分 も そう だ が 、 彼女 を 殺そう と 思って 会った ヤツ など 誰 も い なかった はずだ 。 じぶん|||||かのじょ||ころそう||おもって|あった|やつ||だれ|||| |||||||let's kill||||guy|||||| Although I am the same, there shouldn't have been anyone who thought of meeting her to kill her. なのに 彼女 は 殺さ れた 。 |かのじょ||ころさ| Yet, she was killed.

娼婦 が 一 人 、 悪い 客 に 当たって 殺さ れた のだ と 思えば 、 少し は そこ に 紋切り型 の 物語 性 も 生まれる のだろう か 。 しょうふ||ひと|じん|わるい|きゃく||あたって|ころさ||||おもえば|すこし||||もんきりがた||ものがたり|せい||うまれる|| prostitute||||||||||||if I think||||locative particle|stereotypical||story|nature||born|| |||||||||||||||||型にはまった||||||| If you think that a prostitute was killed by one of your bad customers, will a little bit of a crucifixive narrative also be born there?

でも 殺さ れた の は 娼婦 で は ない 。 |ころさ||||しょうふ||| |killed||||prostitute||| But it is not a prostitute that was killed. 隠して は いた が 、 地道に 生命 保険 の 勧誘 を する 一 人 の 若い 女 だ 。 かくして||||じみちに|せいめい|ほけん||かんゆう|||ひと|じん||わかい|おんな| hiding||||diligently|life|insurance||solicitation|||||||| ||||地道に|||||||||||| Although hidden, it is a young woman who solicits life insurance on a steady basis. 娼婦 の ふり を した 、 娼婦 で は ない 女 な のだ 。 しょうふ|||||しょうふ||||おんな|| prostitute||pretense|||prostitute|||||| It is a woman who is not a prostitute, who pretends to be a prostitute.

ラブ ホテル の 狭い 客室 で 、「 から だ 、 柔らかい ね 」 と 林 が 褒める と 、 佳乃 は 下着 姿 の まま 、 自慢げに 前 屈して 見せた 。 らぶ|ほてる||せまい|きゃくしつ||||やわらかい|||りん||ほめる||よしの||したぎ|すがた|||じまんげに|ぜん|くっして|みせた |||narrow|guest room||||soft|||Hayashi||praise||||underwear|appearance|||proudly||bent| In a small room at a love hotel, when he gave up, saying, “Body, soft,” Ayano kept showing his underwear and bowed forward.

「 新 体操 部 やった けん 、 前 は もっと 柔らかかった っちゃ けど 」 しん|たいそう|ぶ|||ぜん|||やわらかかった|| new|rhythmic gymnastics|club||||||soft|| "The new gymnastics club I did, but it was softer than before."

白い 肌 に 背骨 が 浮き出て いた 。 しろい|はだ||せぼね||うきでて| |skin||spine||was sticking out| The spine was raised on the white skin.

こちら に 向け られた 笑顔 は 、 二 カ月 後 に 殺さ れる こと など 知る 由 も なかった 。 ||むけ||えがお||ふた|かげつ|あと||ころさ||||しる|よし|| ||||smile|||||||||||reason|| The smile directed at me had no way of knowing that it would be killed two months later.

同日 の 午前 中 、 福岡 から 百 キロ ほど 離れた 長崎 市 郊 外 で 、 清水 祐一 の 祖母 、 房枝 は 、 週 に 一 度 漁港 へ やって くる 行商 トラック で 買って きた ばかり の 野菜 を 、 痛む 膝 を 押さえ ながら 冷蔵 庫 に 詰めて いた 。 どうじつ||ごぜん|なか|ふくおか||ひゃく|きろ||はなれた|ながさき|し|こう|がい||きよみず|ゆういち||そぼ|ふさえ||しゅう||ひと|たび|ぎょこう||||ぎょうしょう|とらっく||かって||||やさい||いたむ|ひざ||おさえ||れいぞう|こ||つめて| same day||||Fukuoka|||||distant|Nagasaki|city|outskirts|||Shimizu|||grandmother|Fusaeda||week||||fishing port||||traveling salesmanship|||||||vegetables||aching|knee||press|||||packed| On the same day, in the suburbs of Nagasaki city, about 100 kilometers from Fukuoka, Yuichi Shimizu's grandmother, Fusaeda, was packing freshly bought vegetables from a peddler truck that came to the fishing port once a week, while pressing on her painful knees.

茄子 が 安かった ので 漬物 に でも しよう と 十 本 も 買って きた が 、 考えて みれば 茄子 の 漬物 を 祐一 が あまり 好きで は ない こと を 、 今に なって 思い出し 、 後悔 して いた 。 なす||やすかった||つけもの|||||じゅう|ほん||かって|||かんがえて||なす||つけもの||ゆういち|||すきで|||||いまに||おもいだし|こうかい|| eggplant||cheap||pickles|||||||||||||eggplant||pickles||||||||||||remembered|regret|regretted| ナス|||||||||||||||||||||||||||||||||| Eggplants were cheap, so she bought ten, thinking she would make pickles, but now that she thought about it, she remembered that Yuichi didn’t really like eggplant pickles, and she felt regret.

千 円 くらい で 済む だろう と 思って いた ところ 、 総額 で 1630 円 に なった 。 せん|えん|||すむ|||おもって|||そうがく||えん|| ||||manage||||||total|at|||

30 円 は まけて くれた が 、 それ でも 来週 まで 郵便 局 に 下ろし に いか なくて いい と 思って いた 財布 の 中身 が 心細く なって いる 。 えん|||||||らいしゅう||ゆうびん|きょく||おろし||||||おもって||さいふ||なかみ||こころぼそく|| ||discounted|||||next week||post|||withdraw||||||||wallet||contents||anxious|| ||割引して||||||||||||||||||||||心細くなっている||

この 日 も 、 房枝 は バス で 市 内 の 病院 に 入院 して いる 夫 、 勝治 を 見舞い に 行く 予定 だった 。 |ひ||ふさえ||ばす||し|うち||びょういん||にゅういん|||おっと|かつじ||みまい||いく|よてい| |||Fusae|||||||hospital||hospitalization||||Katsuharu||visit||||

行けば 邪 慳 に する くせ に 、 行か ない と 文句 を 言う ので 、 必ず 行か なければ なら ず 、 保険 で 入院 費 は 無料 と は いえ 、 毎日 の バス 代 まで は 節約 しようがない 。 いけば|じゃ|けん|||||いか|||もんく||いう||かならず|いか||||ほけん||にゅういん|ひ||むりょう||||まいにち||ばす|だい|||せつやく| |evil|stingy|||||||||||||||||insurance||hospitalization|cost||free|||||||fare|||saving|cannot be saved Even though I complain when I don't go, I have to go without fail, and even though the hospitalization fee is free with insurance, there's no way to save on the daily bus fare.

近所 の 停留所 から 長崎 駅前 まで 片道 310 円 。 きんじょ||ていりゅうじょ||ながさき|えきまえ||かたみち|えん neighborhood||bus stop||Nagasaki|||one way| From the nearby bus stop to Nagasaki Station, it's 310 yen one way.

駅前 で 乗り換えて 病院 前 まで が 180 円 。 えきまえ||のりかえて|びょういん|ぜん|||えん ||changing|hospital|||| Changing trains at the station front to get to in front of the hospital costs 180 yen. 毎日 往復 980 円 の 出費 に なる 。 まいにち|おうふく|えん||しゅっぴ|| |round trip|||expense||

一 週間 の 野菜 代 を 千 円 で 抑え たい 房枝 に は 、 毎日 980 円 と いう バス 代 は 、 上げ 膳 据 膳 の 温泉 旅館 で 贅沢 を して いる ような 後ろめた さ が ある 。 ひと|しゅうかん||やさい|だい||せん|えん||おさえ||ふさえ|||まいにち|えん|||ばす|だい||あげ|ぜん|すえ|ぜん||おんせん|りょかん||ぜいたく|||||うしろめた||| |||vegetables||||||keep||Fusaeda||||||||||increased|meal|excuse|setting||hot spring|inn||luxury|||||guilt||| ||||||||||||||||||||||||||||||||||罪悪感||| Boueida, who wants to keep her vegetable expenses down to 1000 yen for the week, feels a sense of guilt about spending 980 yen for bus fare every day, as if she is indulging in a luxurious stay at an onsen ryokan where everything is served for her.

野菜 を 冷蔵 庫 に しまった あと 、 房枝 は プラスチック 容器 から 梅干し を 一 つ つまんで 口 に 入れた 。 やさい||れいぞう|こ||||ふさえ||ぷらすちっく|ようき||うめぼし||ひと|||くち||いれた |||||||stem|||container||pickled plum||||picked||| After putting the vegetables in the refrigerator, Boueida picked up a pickled plum from the plastic container and put it in her mouth.

「 おばちゃん ! aunt "Auntie!" おる ね ? 聞き覚え の ある 男 の 声 が 玄関 から 聞こえた の は その とき だった 。 ききおぼえ|||おとこ||こえ||げんかん||きこえた||||| familiar sound|||||voice||entrance|||||||

梅干し を しゃぶり ながら 廊下 へ 出る と 、 駐在 所 の 巡査 と 見知らぬ 男 が 立って いる 。 うめぼし||||ろうか||でる||ちゅうざい|しょ||じゅんさ||みしらぬ|おとこ||たって| pickled plum||sucking||hallway||||police box|station|possessive particle|police officer||unknown||||

「 あら 、 今ごろ 、 朝 メシ ね ? |いまごろ|あさ|めし| |||meal| 人なつこい 笑顔 で 小 太り の 巡査 が 中 へ 入って くる 。 ひとなつこい|えがお||しょう|ふとり||じゅんさ||なか||はいって| friendly||||||police officer||||| friendly||||||||||| A corpulent police officer with a friendly smile enters.

房枝 が 口 から 梅干し の 種 を 取り出して いる と 、「 さっき 聞いた けど 、 また じいちゃん が 入院 した って ? ふさえ||くち||うめぼし||しゅ||とりだして||||きいた|||||にゅういん|| ||||||seed||||||||||||| As Fusaeda takes out a pickled plum pit from her mouth, the officer says, "I heard just now that grandpa has been hospitalized again?" 」 と 巡査 が 言う 。 |じゅんさ||いう |police officer|| " the officer says.

房枝 は 種 を 手のひら に 隠し ながら 、 巡査 の 横 に 立つ 背広 姿 の 男 に 目 を 向けた 。 ふさえ||しゅ||てのひら||かくし||じゅんさ||よこ||たつ|せびろ|すがた||おとこ||め||むけた |||||||||||||suit||||||| 房枝 hid the seeds in the palm of her hand and glanced at the man in a suit standing next to the police officer.

日 に 灼 けた 肌 は 硬 そうで 、 だ ら り と 垂らした 手 の 指 が やけに 短い 。 ひ||しゃく||はだ||かた|そう で|||||たらした|て||ゆび|||みじかい ||burned|burned|||hard||is|dripping|||dangled|||||unusually| His sun-tanned skin looked tough, and the fingers of his drooping hand were surprisingly short.

「 こちら 、 県警 の 早田 さん 。 |けんけい||はやた| |prefectural police||Hayata| This is Hayata from the Prefectural Police.

ちょっと 祐一 に 訊 きた か こと の ある って 」 |ゆういち||じん|||||| I asked Yuichi about something a little while ago.

「 祐一 に です か ? ゆういち||| Is it about Yuichi? そう 訊 き 返す と 、 口 の 中 に ふわ っと 梅 の 香り が 広がった 。 |じん||かえす||くち||なか||||うめ||かおり||ひろがった |||||||||soft||plum|||| As I replied like that, a soft plum fragrance spread in my mouth.

日ごろ 交番 で 茶 飲み 話 を する とき は 、 気 に した こと も ない のだ が 、 巡査 の 腰 に ある 拳銃 が 房枝 の 目 に 飛び込んで くる 。 ひごろ|こうばん||ちゃ|のみ|はなし|||||き||||||||じゅんさ||こし|||けんじゅう||ふさえ||め||とびこんで| |police box||tea|||||||||||||||police officer||waist|||gun||||||| When I'm casually chatting over tea at the police box, I normally wouldn't notice it, but the gun on the officer's waist catches my eye.

「 この前 の 日曜日 の 夜 、 祐一 は ど っか に 出かけ とった と ね ? この まえ||にちようび||よ|ゆういち|||||でかけ||| Last Sunday night, you went out somewhere, didn't you? 上がり 框 に 座り込んだ 巡査 は 、 無理に からだ を 捻って 訊 いて きた 。 あがり|かまち||すわりこんだ|じゅんさ||むりに|||ねじって|じん|| |frame||||||||twisting||| |||||||||体を捻って||| The officer who sat down on the raised platform twisted his body uncomfortably and asked.

横 に 立つ 刑事 が 慌てて その 肩 を 押さえ 、「 質問 は 私 が する けん 」 と 厳しい 顔 で 戒める 。 よこ||たつ|けいじ||あわてて||かた||おさえ|しつもん||わたくし|||||きびしい|かお||いましめる |||||||||||||||||stern|||warn ||||||||||||||||||||注意する The detective standing next to me hurriedly pressed his shoulder and admonished, 'I will be the one to ask the questions.' with a stern face.

房枝 は 上がり 框 に 座り込んだ 巡査 に 、 まるで 寄り添う ように 正座 した 。 ふさえ||あがり|かまち||すわりこんだ|じゅんさ|||よりそう||せいざ| ||finished|doorstep||||||snuggled up||sitting formally| Fusae sat in seiza next to the police officer who had slumped down on the threshold, as if to snuggle up to him.

「 いや ぁ 、 なんか ね 、 福岡 の 三瀬 峠 で 殺さ れた 女の子 が 祐一 の 友達 らしかった い 」 ||||ふくおか||みつせ|とうげ||ころさ||おんなのこ||ゆういち||ともだち|| 'Well, it seems that the girl who was killed at the Mitsuse Pass in Fukuoka was a friend of Yuichi.'

戒め られた に も かかわら ず 、 巡査 は 房枝 に 話し 続けた 。 いましめ||||||じゅんさ||ふさえ||はなし|つづけた warning|||||||||||

「 は ぁ ? 祐一 の 友達 が 殺さ れた って ? ゆういち||ともだち||ころさ|| 正座 した まま 、 房枝 は 後ろ へ 反り返った 。 せいざ|||ふさえ||うしろ||そりかえった sitting with legs folded|||||||arched |||||||leaned back

その 瞬間 、 膝 が 痛んで 、「 あた たた 」 と 声 を 上げる 。 |しゅんかん|ひざ||いたんで||||こえ||あげる ||knee||hurt|ouch|||||

慌てた 巡査 が 房枝 の 腕 を 取り 、「 ほら 、 また 立て ん ごと なる よ 」 と 引き起こして くれる 。 あわてた|じゅんさ||ふさえ||うで||とり|||たて||||||ひきおこして| flustered|||||arm|||||||||||helped to bring| ||||||||||||||||引き起こして|

「 祐一 の 友達 って いう たら 、 中学 の とき の やろ か ? ゆういち||ともだち||||ちゅうがく||||| と 房枝 は 訊 いた 。 |ふさえ||じん|

高校 が 工業 高校 だった ので 、 だ と したら 中学 の ころ だ と 思い 、 と すれば 、 この 辺 の 娘 さん が 殺さ れた こと に なる 。 こうこう||こうぎょう|こうこう||||||ちゅうがく|||||おもい||||ほとり||むすめ|||ころさ|||| ||industry||||||||||||||||area||daughter|||||||

「 いや 、 中学 じゃ なくて 、 最近 の 友達 やろ 」 |ちゅうがく|||さいきん||ともだち|

「 最近 の ? さいきん| 房枝 は 巡査 の 言葉 に 、 素っ頓狂 な 声 を 上げた 。 ふさえ||じゅんさ||ことば||すっとんきょう||こえ||あげた ||||||incoherent|||| ||||||驚いた||||

我が 孫 ながら 、 祐一 に は 心配に なる ほど 女 の 影 が なかった 。 わが|まご||ゆういち|||しんぱいに|||おんな||かげ|| |grandchild|||||||||||| My grandchild, Yuichi, has so little romantic interest that it worries me. 女 の 影 どころ か 、 親しく して いる 男 の 友達 も 一 人 か 、 二 人 と 数 が 知れて いる 。 おんな||かげ|||したしく|||おとこ||ともだち||ひと|じん||ふた|じん||すう||しれて| Not to mention a romantic interest, he barely has one or two male friends he is close with.

口 の 軽い 巡査 に うんざり した ように 、 背広 姿 の 刑事 が 、「 質問 は 私 が する って 言い よる やろう が 」 と 顔 を しかめた 。 くち||かるい|じゅんさ|||||せびろ|すがた||けいじ||しつもん||わたくし||||いい|||||かお|| ||talkative|police officer||fed up|||suit|||detective||||||||||||||| |||||うんざり|||||||||||||||||||||しかめた As if fed up with the gossiping officer, the detective in a suit scowled and said, 'I told you I would be the one to ask the questions.'

「 ちょっと お 訊 き し ます けど 、 この 前 の 日曜日 です ね ……」 ||じん||||||ぜん||にちようび||

威圧 的な 声 で 刑事 に 訊 かれ 、 房枝 は 聞き 終わる の も 待た ず に 、「 日曜日 は 、 家 に おった と 思う と です けど ね 」 と 答えた 。 いあつ|てきな|こえ||けいじ||じん||ふさえ||きき|おわる|||また|||にちようび||いえ||||おもう||||||こたえた intimidating||||||||||||||||||||||||||||| Questioned by the detective in a menacing voice, Hōe replied without waiting for him to finish, 'I think I was at home on Sunday.'

「 は ぁ 、 やっぱり おった と ね 」 と 、 巡査 が ほっと した ように また 口 を 挟んで くる 。 |||||||じゅんさ||||||くち||はさんで| |||||||||relieved||||||interrupt| |||||||||||||||口を挟む| 'I see, so you were indeed at home,' the patrol officer interjected, sounding relieved.

「 いや 、 ここ に 来る 前 に 駐在 所 で 岡崎 の ばあちゃん と 会う た と さ 。 |||くる|ぜん||ちゅうざい|しょ||おかざき||||あう||| 'No, I met Okazaki's grandmother at the police box before coming here.'

祐一 が 出かける と したら 、 いつも 車 やろ ? ゆういち||でかける||||くるま| 岡崎 の ばあちゃん ち は 駐車 場 の 横 やけん 、 車 が 出て 行く 音 なり 、 帰って くる 音 なり 、 全部 聞こえる って 、 前 から よう 言い よろう が 。 おかざき|||||ちゅうしゃ|じょう||よこ||くるま||でて|いく|おと||かえって||おと||ぜんぶ|きこえる||ぜん|||いい|| ||||||||side|||||||||||||||||||probably| ばっ てん 、 岡崎 の ばあちゃん に 訊 いたら 、 日曜日 、 祐一 の 車 は ずっと あった って 言う けんさ 」 ||おかざき||||じん||にちようび|ゆういち||くるま|||||いう|

捲し立てる 巡査 に 、 房枝 も 刑事 も 口 を 挟め なかった 。 まくしたてる|じゅんさ||ふさえ||けいじ||くち||はさめ| brought up|||||||||interject| 捲し立てる||||||||||

厳しかった 刑事 の 目 に 、 少し 優しい 色 が 滲 む の を 房枝 は 見た 。 きびしかった|けいじ||め||すこし|やさしい|いろ||しん||||ふさえ||みた strict|||||||||blur||||||

「 あんた は 黙 っと けって 言う て も 、 きかん と や ねぇ 」 ||もく|||いう|||||| ||quiet||just||||||| Even if you tell me to be quiet, I won't listen.

刑事 が お 喋り な 巡査 を 注意 する 。 けいじ|||しゃべり||じゅんさ||ちゅうい| The detective admonishes the chatty officer.

ただ 、 さっき まで と は 違い 、 その 声 に どこ か 親し み が 感じ られる 。 |||||ちがい||こえ||||したし|||かんじ| |||||||||||familiar|||| However, unlike earlier, there is somehow a sense of familiarity in that voice.

「 私 も じいちゃん も 早う 寝て しまう けん 、 よう 分から ん と です けど 、 日曜日 、 祐一 は 部屋 に おった ような 気 が し ます けど ね 」 と 房枝 は 言った 。 わたくし||||はやう|ねて||||わから|||||にちようび|ゆういち||へや||||き|||||||ふさえ||いった ||||soon||||||||||||||||||||||||||

「 岡崎 の ばあちゃん が そう 言う て 、 一緒に 住 ん ど る ばあちゃん も そう 言う なら 間違い なか やろ 」 おかざき|||||いう||いっしょに|じゅう|||||||いう||まちがい|| If Grandma Okazaki says so, and the grandma living together says so too, then it must be correct.

巡査 が 房枝 で は なく 、 刑事 に 伝える ように 繰り返す 。 じゅんさ||ふさえ||||けいじ||つたえる||くりかえす ||||||||||repeat The police officer repeats it as if he were telling a detective, not a certain person named Fusaeda.

「 いや 、 実は です ね ……」 |じつは|| No, actually, you see...

巡査 の 言葉 を 引き継ぐ ように 、 やっと 刑事 が 話し 始めた 。 じゅんさ||ことば||ひきつぐ|||けいじ||はなし|はじめた ||||take over||||||

房枝 は 手のひら に ある 梅干し の 種 が 気 に なって 仕方なかった 。 ふさえ||てのひら|||うめぼし||しゅ||き|||しかたなかった |||||||seed|||||

「 福岡 の 三瀬 峠 で 見つかった 女性 の 携帯 の 履歴 に お宅 の お 孫 さん の 番号 が あった と です よ 」 ふくおか||みつせ|とうげ||みつかった|じょせい||けいたい||りれき||おたく|||まご|||ばんごう||||| ||||||||||||your|||||||||||

「 祐一 の ? ゆういち| 「 お 孫 さん の だけ じゃ なくて 、 その 女性 は 交友 関係 が 広くて です ね 」 |まご|||||||じょせい||こうゆう|かんけい||ひろくて|| ||||||||||friendship|||wide||

「 その 女の子 は 、 この 辺 の 子 です か ? |おんなのこ|||へん||こ|| ||||area|||| 「 いやいや 、 長崎 じゃ なくて 福岡 の 博多 の 人 でして ね 」 |ながさき|||ふくおか||はかた||じん|| reluctantly||||||||||

「 博多 ? はかた 祐一 は 博多 に 友達 の おった と ばい ねぇ 。 ゆういち||はかた||ともだち||||| ||||||||right| ぜんぜん 知ら ん やった 」 |しら||

丁寧に 説明 する と 、 いちいち 言葉 が 返って くる と 思った の か 、 そこ から 刑事 は 一気に 事情 を 説明 した 。 ていねいに|せつめい||||ことば||かえって|||おもった|||||けいじ||いっきに|じじょう||せつめい| ||||one by one||||||||||||||situation||| When explained carefully, perhaps he thought words would come back one by one, so from there, the detective explained the situation all at once.

すでに 祐一 が その 晩 、 家 に いた こと に なって いた ので 、 どちら か と いう と 、 ふい の 訪問 を 謝罪 する ような 話し 方 だった 。 |ゆういち|||ばん|いえ|||||||||||||||ほうもん||しゃざい|||はなし|かた| ||||||||||||||||||suddenly||visit||apology||||| Since it had already been established that Yuichi was at home that night, the way he spoke was more like apologizing for the unexpected visit.

亡くなった 女性 は 石橋 佳乃 と いう 二十一 歳 の 女性 で 、 博多 で 保険 の 外交 員 を やって いる らしい 。 なくなった|じょせい||いしばし|よしの|||にじゅういち|さい||じょせい||はかた||ほけん||がいこう|いん|||| The deceased woman was a 21-year-old named Yoshino Ishibashi, and she apparently worked as an insurance sales representative in Hakata.

地元 の 友人 、 同僚 、 遊び 仲間 と かなり 顔 の 広い 女の子 で 、 事件 前 の 一 週間 だけ を 見て も 、 五十 人 近い 相手 と メール や 電話 の やりとり を して いる 。 じもと||ゆうじん|どうりょう|あそび|なかま|||かお||ひろい|おんなのこ||じけん|ぜん||ひと|しゅうかん|||みて||ごじゅう|じん|ちかい|あいて||めーる||でんわ||||| その 中 に 祐一 も 入って いる らしい 。 |なか||ゆういち||はいって||

「 最後に お 孫 さん が メール を 出した の は 事件 の 四 日 前 、 逆に その 女性 が 祐一 くん に 最後 の メール を 送った の が その 翌日 です ね 。 さいごに||まご|||めーる||だした|||じけん||よっ|ひ|ぜん|ぎゃくに||じょせい||ゆういち|||さいご||めーる||おくった||||よくじつ|| ||||||||||||||||||||||||||||||following day||

ただ 、 その あと に も 十 人 近く も 彼女 と 連絡 を 取り合って る 相手 が おる んです よ 」 |||||じゅう|じん|ちかく||かのじょ||れんらく||とりあって||あいて|||| |||||||||||||communicating||||||

房枝 は 刑事 の 話 を 訊 き ながら 、 殺さ れた と いう 若い 娘 の 姿 を 想像 した 。 ふさえ||けいじ||はなし||じん|||ころさ||||わかい|むすめ||すがた||そうぞう|

交友 関係 が 広い と 聞いた だけ で 、 祐一 と は 縁遠い ような 気 が して なら ない 。 こうゆう|かんけい||ひろい||きいた|||ゆういち|||えんどおい||き|||| friendship|||||||||||distant|||||| |||||||||||縁がない|||||| 恐ろしい 事件 が 起こった の は 事実 な のだろう が 、 どうしても 祐一 と それ が 結びつか ない 。 おそろしい|じけん||おこった|||じじつ|||||ゆういち||||むすびつか| terrible|incident||||||||||||||connected|

刑事 の 説明 が 一 通り 終わった とき 、 房枝 は ぼんやり と 憲夫 の 言葉 を 思い出して いた 。 けいじ||せつめい||ひと|とおり|おわった||ふさえ||||のりお||ことば||おもいだして| ||||one||||||absentmindedly||Norio|||||

事件 の あった 翌日 、 祐一 は 二日酔い で 現場 へ 向かう 途中 、 とつぜん 吐いた と 言った 。 じけん|||よくじつ|ゆういち||ふつかよい||げんば||むかう|とちゅう||はいた||いった The day after the incident, Yuichi said he suddenly threw up while on his way to the scene, due to a hangover.

房枝 の 中 で 何 か が 繋がった 。 ふさえ||なか||なん|||つながった |||||||connected Something connected within Fusaeda. あの 朝 、 祐一 は この 女性 が 殺さ れた こと を テレビ か 何 か で 、 すでに 知っていた のだ 。 |あさ|ゆういち|||じょせい||ころさ||||てれび||なん||||しっていた| |||||||killed||||||||||| That morning, Yuichi already knew that this woman had been murdered from the TV or something. 知人 を 失った 悲しみ が 、 吐き気 と して 現れた のだ 。 ちじん||うしなった|かなしみ||はきけ|||あらわれた| acquaintance|||||||||

これ が 、 二十 年 近く 祐一 を 育てて きた 房枝 の 直感 だった 。 ||にじゅう|とし|ちかく|ゆういち||そだてて||ふさえ||ちょっかん| |||||||||||intuition| This was the intuition of Fusaeda, who had raised Yuichi for nearly twenty years.

あまり 時間 が ない らしく 、 刑事 は 事情 を 説明 し 終える と 、「 ま ぁ 、 とにかく 、 おばあ ちゃん は 心配 せ ん でも よ かけ ん ね 」 と 優しく 声 を かけて きた 。 |じかん||||けいじ||じじょう||せつめい||おえる||||||||しんぱい|||||||||やさしく|こえ||| |||||||||||finished|||||||||||||||||gently|||| The detective seemed to be short on time, and after finishing the explanation of the situation, he gently said, 'Well, anyway, you don't have to worry, grandma.'

心配 など して い なかった が 、 房枝 は 、「 そう です か 」 と 神妙に 頷いた 。 しんぱい||||||ふさえ||||||しんみょうに|うなずいた ||||||||||||seriously|nodded ||||||||||||真剣に| Although she wasn't really worried, Fusaeda nodded solemnly and said, 'Is that so?'

「 祐一 くん が 仕事 から 戻って くる の は 何時ごろ やろ か ? ゆういち|||しごと||もどって||||いつごろ|| 刑事 に 訊 かれ 、「 いつも は 六 時 半 ぐらい です けど 」 と 房枝 は 答えた 。 けいじ||じん||||むっ|じ|はん|||||ふさえ||こたえた |||||||||||||||answered

「 それ じゃ 、 もし また 何 か あったら 連絡 し ます けん 。 ||||なん|||れんらく||| ||||||||||so 今日 の ところ は この 辺 で 」 きょう|||||ほとり| |||||area| Let's leave it at this for today.

刑事 に そう 言わ れ 、 房枝 は とりあえず 立ち上がる と 、「 ご 苦労 さん でした 」 と 頭 を 下げた 。 けいじ|||いわ||ふさえ|||たちあがる|||くろう||||あたま||さげた ||||||||stood up|||thank you||||head||bowed After being told that by the detective, Fusaeda stood up and said, 'Thank you for your hard work,' as she bowed her head.

口 で は また 連絡 する と 言う が 、 刑事 に その 気 は な さ そうだった 。 くち||||れんらく|||いう||けいじ|||き||||そう だった She said she would get in touch again, but the detective didn't seem to have that intention.

刑事 を 見送り 、 また 上がり 框 に 座り込んだ 近所 の 巡査 が 、「 いや ぁ 、 びっくり した やろ ? けいじ||みおくり||あがり|かまち||すわりこんだ|きんじょ||じゅんさ|||||| |||||doorstep|||||||||||surprised 」 と おどけた 顔 を して 見せる 。 ||かお|||みせる |joking||||to show |playful||||

「 俺 も 、 最初に 祐一 が 参考人 って 聞いた とき に は 腰 抜かす か と 思う たよ 。 おれ||さいしょに|ゆういち||さんこうにん||きいた||||こし|ぬかす|||おもう| |||||person providing information|||||||to give out||||I heard When I first heard that Yuichi was a witness, I thought I was going to faint.

ただ 、 ちょうど その 電話 を 受けた とき に 、 岡崎 の ばあさん が 駐在 所 に おった けん 、 車 の 事 を 訊 いて みたら 、『 日曜日 、 祐一 は 車 出し とら ん 』 って 言う やろ 。 |||でんわ||うけた|||おかざき||||ちゅうざい|しょ||||くるま||こと||じん|||にちようび|ゆういち||くるま|だし||||いう| ||||||||||||||||so||||||||||||||||| But at the time I received that call, Okazaki's grandmother was at the police station, so when I asked about the car, she said, 'On Sunday, Yuichi didn't take the car out.' それ で すぐ 安心 した っさ 。 |||あんしん|| |||||particle That immediately put me at ease. いや 、 実は ね 、 ここ だけ の 話 、 もう 犯人 は 分 か っと る らしい もん ね 。 |じつは|||||はなし||はんにん||ぶん|||||| Well, actually, this is just between us, but it seems that they already know who the culprit is. ただ 、 ま ぁ 、 一応 、 確認 くらい は せ ん と いかんの やろ 」 |||いちおう|かくにん||||||| ||||confirmation||||||important| |||||||||||だろう However, I guess we still have to at least make sure of it.

「 あら 、 もう 犯人 は 分 か っと る と ? ||はんにん||ぶん|||| ||culprit|||||| Oh, so they already know who the culprit is? 房枝 は 大げさに ほっと して 見せ 、「 祐一 が 博多 の 女の子 と 仲良し なんて 、 ぜんぜん ピンと こ ん もん ねぇ 」 と 付け加えた 。 ふさえ||おおげさに|||みせ|ゆういち||はかた||おんなのこ||なかよし|||ぴんと||||||つけくわえた ||||||||||||good friends|||making sense||||||added |||||||||||||||全然分からない||||||言った Housewife dramatically pretended to be relieved and added, "I can't believe Yuichi is friends with a girl from Hakata at all."

「 ま ぁ 、 祐一 も 年頃 の 男 やけん 、 仕方ない さ 。 ||ゆういち||としごろ||おとこ||しかたない| ||||age||||| "Well, Yuichi is a boy of that age, so it can't be helped." その 女の子 は どうも 出会い 系 サイト で いろんな 人 と 知り合う とった よう や もん ね 」 |おんなのこ|||であい|けい|さいと|||じん||しりあう||||| It seems that girl was getting to know various people through a dating site.

「 出会い 系 っちゃ 何 ね ? であい|けい||なん| |type||| 「 ま ぁ 、 簡単に 言う たら 、 文通 相手 の ような もん さ 」 ||かんたんに|いう||ぶんつう|あいて|||| ||||if I were to say|pen pal||||kind of| |||||pen pal||||| Well, to put it simply, it's like having a pen pal.

「 へ ぇ 、 祐一 が 博多 の 娘 さん と 文通 し とった と は 知ら ん かった 」 ||ゆういち||はかた||むすめ|||ぶんつう|||||しら|| |||||||||letter writing||||||| Oh, I didn't know Yuichi was penpaling with a girl from Hakata.

房枝 は 手のひら に 梅干し の 種 が ある こと を 思い出し 、 やっと 外 へ 投げ捨てた 。 ふさえ||てのひら||うめぼし||しゅ|||||おもいだし||がい||なげすてた branch||palm||||seed|||||||||threw away Moe remembered that she had a pickled plum seed in her palm and finally threw it outside.