三 姉妹 探偵 団 01 chapter 10 (2)
みっ|しまい|たんてい|だん|
Three Sisters Detective Agency 01 chapter 10 (2)
空っぽ と いって も 、 もちろん 道具 は 置いて ある わけで 、 布団 が 敷き っ放し に なって いる 。
からっぽ|||||どうぐ||おいて|||ふとん||しき|っぱなし|||
「 神田 さん ……」
しんでん|
近所 まで 出かけた のだろう 。
きんじょ||でかけた|
鍵 が かかって い ない のだ から 、 すぐに 戻る つもりな のだ 。
かぎ||||||||もどる||
表 で 待って いよう か 、 と も 思った が 、 廊下 に ボケッ と 立って 、 近所 の 人 に ジロジロ 見 られる の も きまり 悪い 。
ひょう||まって|||||おもった||ろうか||||たって|きんじょ||じん||じろじろ|み|||||わるい
上って 、 おとなしく 座って いよう 。
のぼって||すわって|
綾子 は 、
あやこ|
「 お邪魔 し ます 」
おじゃま||
と 、 幻 の 住人 へ 挨拶 して 、 上り 込む と 、 チョコン と 畳 に 正座 した 。
|まぼろし||じゅうにん||あいさつ||のぼり|こむ||||たたみ||せいざ|
まさか 自分 で お茶 を いれる わけに も いか ない し ……。
|じぶん||おちゃ||い れる|||||
綾子 は そのまま 十 分 ほど 座って いた が 、 一向に 神田 初江 が 帰る 様子 は ない 。
あやこ|||じゅう|ぶん||すわって|||いっこうに|しんでん|はつえ||かえる|ようす||
部屋 の 中 を キョロキョロ 見回して 、
へや||なか|||みまわして
「 あんまり いい 趣味 じゃ ない わ ね 。
||しゅみ||||
私 なら 、 あの カーテン を 取り替える わ 。
わたくし|||かーてん||とりかえる|
それ に ちょっと だ らし が ない し ……」
と 批評 を 加えて いた 。
|ひひょう||くわえて|
それ に も 飽きる と 、 乱れた まま の 布団 の 方 へ 目 を やる 。
|||あきる||みだれた|||ふとん||かた||め||
── 婚約 者 が 来て る 、 って 言った っけ 。
こんやく|もの||きて|||いった|
「 いやだ !
やっと 、 綾子 に も 、 昼間 から 敷き っ放し の 乱れた 布団 の 意味 が 分 って 、 真っ赤に なった 。
|あやこ|||ひるま||しき|っぱなし||みだれた|ふとん||いみ||ぶん||まっかに|
「 もう 、 本当に …… 困る わ !
|ほんとうに|こまる|
と ブツブツ 言って いる 。
|ぶつぶつ|いって|
こうして ぼんやり 待って いて も 仕方 が ない 。
||まって|||しかた||
There is no point in waiting idly like this.
布団 でも 上げて おこう か 。
ふとん||あげて||
今さら 布団 を 干す と いう 時間 で も ない 。
いまさら|ふとん||ほす|||じかん|||
綾子 は 立ち上る と 、 布団 を たたんで 、 押入れ の 前 に 積んだ 。
あやこ||たちのぼる||ふとん|||おしいれ||ぜん||つんだ
どうせ なら 中 へ 入れて おこう 。
||なか||いれて|
片付けて 怒ら れる こと も ある まい 。
かたづけて|いから|||||
押入れ の 襖 を ガラッ と 開ける と 、 神田 初江 が いた 。
おしいれ||ふすま||||あける||しんでん|はつえ||
鬼ごっこ で 隠れて いた わけで は ない 。
おにごっこ||かくれて||||
うずくまる ように して 、 顔 を 綾子 の 方 へ 向けて いた 。
|||かお||あやこ||かた||むけて|
目 を むいて 、 舌 を 出し 、 顔 は 青 黒く 変色 して いる 。
め|||した||だし|かお||あお|くろく|へんしょく||
首 に 、 細い 紐 が 巻きついて 、 深々と 食い込んで いた 。
くび||ほそい|ひも||まきついて|しんしんと|くいこんで|
綾子 は 、 しばらく 目 を パチクリ さ せ ながら 、 神田 初江 を 眺めて いた が ……。
あやこ|||め||||||しんでん|はつえ||ながめて||
やがて …… 気絶 して 倒れ も し なければ 、 悲鳴 も 上げ なかった 。
|きぜつ||たおれ||||ひめい||あげ|
殺さ れて いる 、 と いう こと は 綾子 に も 分 った 。
ころさ|||||||あやこ|||ぶん|
と いう こと は 、 死んで いる と いう こと である 。
||||しんで|||||
と いう こと は ……。
誰 か が 殺した のだ 。
だれ|||ころした|
誰 が ?
だれ|
── なぜ ?
「 参った なあ 」
まいった|
綾子 は 一種 の 夢 遊 病的な 状態 で 、 感覚 が 麻痺 し 、 却って 平然と して いる のである 。
あやこ||いっしゅ||ゆめ|あそ|びょうてきな|じょうたい||かんかく||まひ||かえって|へいぜんと|||
Ayako is in a kind of sleepwalking state, her senses are paralyzed and she is rather calm.
「 ともかく 誰 か …… 警察 か …… そう だ 、 警察 だ わ 。
|だれ||けいさつ||||けいさつ||
ええ と …… 一一九 番 だ っけ 、 違う わ 、 あれ は 銀行 だ 」
||いちいちきゅう|ばん|||ちがう||||ぎんこう|
ブツブツ 呟き ながら 電話 へ 手 を 伸ばそう と した とき 、 部屋 の ブザー が 鳴った 。
ぶつぶつ|つぶやき||でんわ||て||のばそう||||へや||ぶざー||なった
「 はい ?
どなた です か 」
「 お 姉ちゃん 、 私 よ 」
|ねえちゃん|わたくし|
珠美 の 声 である 。
たまみ||こえ|
「 珠美 !
たまみ
びっくり して ドア を 開ける 。
||どあ||あける
「 あんた どうして ここ に 来た の ?
||||きた|
「 お 姉ちゃん 、 こっそり 出て 行く から 尾行 して 来た んじゃ ない 。
|ねえちゃん||でて|いく||びこう||きた||
気 が 付か なかった でしょ 」
き||つか||
「 呆れた 。
あきれた
何の つもり ?
なんの|
「 いい じゃ ない 。
外 で 待って た んだ けど 、 一向に 出て 来 ない から 。
がい||まって||||いっこうに|でて|らい||
ここ 、 例の 会社 の 人 の 部屋 ?
|れいの|かいしゃ||じん||へや
留守 な の ?
るす||
と 中 を 覗き込み 、「 フーン 、 あんまり いい 部屋 じゃ ない の ね 。
|なか||のぞきこみ||||へや||||
これ で 家賃 、 いくら だって ?
||やちん||
「 知ら ない わ よ 」
しら|||
「 帰って 来 ない の 、 その 人 ?
かえって|らい||||じん
「 そう ……。
いる に は いる んだ けど ね ……」
「 何 だ 。
なん|
どこ に ?
トイレ ?
といれ
「 押入れ 」
おしいれ
「 変った 趣味 の 人 ね 」
かわった|しゅみ||じん|
「 何 か …… 殺さ れて る みたい 」
なん||ころさ|||
"Something ... seems to have been killed"
「 あ 、 そう 。
じゃ 、 もう 少し 待って みる ?
||すこし|まって|
Well, will you wait a little longer?
と 言って から 、「── お 姉ちゃん 、 今 、 何て 言った ?
|いって|||ねえちゃん|いま|なんて|いった
After saying, "── Onee-san, what have you said?
と 訊 き 返した 。
|じん||かえした
I asked.
「 押入れ の 中 で ね 、 死んで る みたいな の 。
おしいれ||なか|||しんで|||
"In the closet, it looks like I'm dying.
で 今 、 保健 所 に 電話 しよう か と 思って ──」
|いま|ほけん|しょ||でんわ||||おもって
Now I wonder if I should call the public health center ─ ─ "
珠美 は 靴 を 脱ぎ捨てる と 、 部屋 へ 上って 、 押入れ の 前 へ 駆け寄った 。
たまみ||くつ||ぬぎすてる||へや||のぼって|おしいれ||ぜん||かけよった
When Tami took off his shoes, he went up to the room and ran to the front of the closet.
「 ね ?
"Huh?
殺さ れて る みたいでしょ ?
ころさ|||
You seem to be killed?
どこ へ 電話 すれば いい の かしら ?
||でんわ||||
Where should I telephone?
葬儀 屋 さん かしら ね 」
そうぎ|や|||
I guess you are a funeral man. "
「 お 姉ちゃん …… しっかり して !
|ねえちゃん||
"Onee-san .... Firmly!
珠美 は さすが に 青く なって 、 姉 の 体 を 揺さぶった 。
たまみ||||あおく||あね||からだ||ゆさぶった
Beautiful blue turned truly, shaking his sister 's body.
「 警察 へ 電話 した の ?
けいさつ||でんわ||
まだ な の ?
「 だ から 今 電話 局 に かけよう と ──」
||いま|でんわ|きょく|||
珠美 は 電話 に 飛びついて 、 一一〇 番 を 回した 。
たまみ||でんわ||とびついて|いちいち|ばん||まわした
Jumi jumped to the phone and turned number 10.
「 警察 です か !
けいさつ||
殺人 事件 です !
さつじん|じけん|
It is a murder case!
── ええ 、 押入れ に 死体 が 。
|おしいれ||したい|
─ ─ Yes, dead body in the closet.
── え ?
珠美 は 姉 の 方 を 振り向いて 、「 お 姉ちゃん 、 ここ の 住所 は ?
たまみ||あね||かた||ふりむいて||ねえちゃん|||じゅうしょ|
Ms. Ami turned around to her older sister, "Onee-chan, where's the address here?
メモ ある でしょ ?
めも||
── 早く 貸して !
はやく|かして
やっと 連絡 し 終える と 、 珠美 は ふう っと 息 を ついた 。
|れんらく||おえる||たまみ||||いき||
そして 、 何 か 思い付いた 様子 で 、
|なん||おもいついた|ようす|
「 新聞 ない ?
しんぶん|
「 まだ 出て ない んじゃ ない ?
|でて|||
「 当り前でしょ 、 そんな こと !
あたりまえでしょ||
そう じゃ なく って 。
── あ 、 あった 」
「 どう する の ?
「 新聞 社 に かける の よ 。
しんぶん|しゃ||||
通報 したら 、 謝礼 くれる かも しれ ない わ 。
つうほう||しゃれい|||||
If you report it, you may be rewarded.
警察 じゃ 無料 だ もの ね 」
けいさつ||むりょう|||
It's free for the police. "
珠美 は 張り切って ダイヤル を 回した 。
たまみ||はりきって|だいやる||まわした
Tomi surprised and turned the dial.
綾子 は 相 変ら ず ぼんやり と して 、 玄関 の 方 を 見て いた が ……。
あやこ||そう|かわら|||||げんかん||かた||みて||
Ayako was still vague and looking at the entrance ... ....
「 珠美 ──」
たまみ
"Mami ──"
「 はい 、 そうです 。
|そう です
" Yes, it is .
私 と 姉 が 発見 した んです 。
わたくし||あね||はっけん||
I and my older sister have found it.
まだ 警察 来て ませ ん 。
|けいさつ|きて||
The police have not come yet.
今 なら 生々しい 現場 が ──」
いま||なまなましい|げんば|
If it is now, a lively site is ──
「 珠美 ……」
たまみ
「 うるさい わ ね !
── え ?
はい 、 じゃ 待って ます 。
||まって|
Yes, I'll be waiting.
他の 社 に は しゃべり ませ ん 。
たの|しゃ|||||
I will not talk to other companies.
独占 って こと で ──」
どくせん|||
Being monopoly ─ ─ "
「 珠美 、 誰 か 来た わ ……」
たまみ|だれ||きた|
"Emi, someone has come ..."
「 何 よ 、 全く 」
なん||まったく
"What, totally"
と 、 電話 を 切って 、 振り向く 。
|でんわ||きって|ふりむく
Turn off the phone and turn around.
「 玄関 に ……」
げんかん|
ドア が 静かに 開いて 、 黒い 手袋 を はめた 手 が 、 覗いて いる 。
どあ||しずかに|あいて|くろい|てぶくろ|||て||のぞいて|
The door gently opens and the hand wearing black gloves is peeping.
珠美 が ギョッ と して 、 目 を 見開く 。
たまみ|||||め||みひらく
Masami screams and opens his eyes.
そして とっさに 、
And quickly,
「 キャーッ 、 人殺し !
|ひとごろし
"Cats, murderer!
と 大声 で 叫んだ 。
|おおごえ||さけんだ
I cried out loud.
その 声 の 方 に びっくり した 綾子 が 、 畳 の 上 に 伏せる 。
|こえ||かた||||あやこ||たたみ||うえ||ふせる
Ayako who was surprised by the voice falls on tatami.
次の 瞬間 、 何 が 起った の か 、 珠美 に は よく 分 ら なかった 。
つぎの|しゅんかん|なん||おこった|||たまみ||||ぶん||
At the next moment, it was not clear to Masumi what happened.
思い切り 大声 を 出した ので 、 目 を つぶって しまって いた 。
おもいきり|おおごえ||だした||め||||
そこ へ 何 か が 迫って 来て 、 気 が 付いた とき は 真 暗闇 の 中 だった のだ 。
||なん|||せまって|きて|き||ついた|||まこと|くらやみ||なか||
Something came out there, and when I noticed it was in the real darkness.
スッポリ と 、 何 か かぶせ られた のである 。
||なん||||
It was covered with soup and something.
「 ワーッ !
キャーッ !
無茶苦茶に 暴れる と 、 やっと 顔 が 出た 。
むちゃくちゃに|あばれる|||かお||でた
When I was unfaithfully cared, I finally got a face.
同時に ドア が バタン と 閉り 、 足音 が 廊下 を 遠 去 か って 行く 。
どうじに|どあ||||しまり|あしおと||ろうか||とお|さ|||いく
At the same time the door closes with the buttocks, the footsteps go away in the corridor.
かぶせ られて いた の は 、 毛布 だった 。
|||||もうふ|
It was a blanket that was covered.
「 ああ 、 びっくり した ……」
ふと 見る と 、 毛布 が ご そご そと 動いて いる 。
|みる||もうふ|||||うごいて|
Suddenly, the blanket is moving from side to side.
「 キャッ ──」
と 飛び上る と 、 毛布 が 落ちて 、 綾子 が 頭 を かかえて 、 うずくまって いた 。
|とびあがる||もうふ||おちて|あやこ||あたま||||
As I jumped up, the blanket fell down, Ayako was holding his head, and I fell down.
「 あ 、 そう か 。
お 姉ちゃん も いたんだ っけ !
|ねえちゃん|||
I also had a big sister!
珠美 は 、 さすが に 恐ろし さ が 身 に 迫って 、 ヘナヘナ と その 場 に 座り込んで しまった ……。
たまみ||||おそろし|||み||せまって|へなへな|||じょう||すわりこんで|