三 姉妹 探偵 団 01 chapter 13 (2)
仕事 かい ?
「 え 、 ええ 、 そう な んです 」
「 じゃ 、 早く 行く と いい よ 」
「 ありがとう ございました 」
綾子 は 受話器 を 置いた 。
思い切って 電話 して よかった !
綾子 は 、 弾む ような 足取り で 、 坂 を 上って 行った 。
「 国友 です 」
「 夕 里子 です !
「 や あ 、 君 か 」
「 あの 浮 浪 者 が 見つかった の 」
「 何 だって ?
「 今 、 あの 地下 街 に いる の 。
ガードマン の 詰所 。 来て もらえる かしら ? 「 分 った 。
何と 言って る ん だい ? 「 女 に 頼ま れた と 言って る の 」
「 女 だって ?
「 ええ 。
ともかく 、 待って る から 」
「 すぐ 行く 」
国友 は 電話 を 切って 、 急いで 署 を 飛び出した 。
こちら は 道 に も 迷わ ず 、 二十 分 足らず で 地下 街 へ と 駆けつけた 。
ガードマン の 詰所 で 、 三 人 の 浮 浪 者 たち が 、 トロン と した 目つき で 座って いた 。
習慣 に なって いる の か 、 椅子 は ある のに 、 床 の 上 に 座って いる のだ 。
「 国友 さん 」
「 や あ 。
捕まえた ね 」
「 王様 たち が ね 」
「 え ?
ああ 、 あの 連中 が ? 「 ふん 、 畜生 め !
と 、 一 人 が 鼻 を 鳴らした 。
「 で 、 その 女 って いう の は 、 分 った の かい ?
「 それ が …… はっきり し ない の 」
「 ありゃ 、 教師 だ ぜ 」
と 、 一 人 が 言った 。
「 どうして 分 る の ?
「 見りゃ 分 ら あ 。
あの 服装 、 しゃべり 方 、 命令 口調 が くせ に なって ん の さ 」
「 確か か ?
それとも お前 の 当て ず っぽ か ? 「 確かだ よ !
と 男 は 言った 。
「 俺 も 昔 は 教師 だった から 分 る 」
どう 見て も 面影 は なかった 。
「── どう 思う ?
「 それ じゃ ……」
夕 里子 は 口 に 手 を 当てて 、「 もしかすると …… 安東 先生 の 奥さん だ わ !
「 ええ ?
でも どうして ──」
「 もし 、 安東 先生 が 水口 淳子 を 殺して 、 それ を 奥さん が 知っていた と したら ……。
ご 主人 を 守る ため に 、 何でも した かも しれ ない ……」
夕 里子 は 椅子 に 座り込んだ 。
── 安東 が やった の か 。 それとも 、 水口 淳子 に 嫉妬 した 安東 岐子 が やった の か 。
どっち に して も 、 安東 が 、 水口 淳子 の 愛人 だった こと は 、 まず 間違い ない 、 と 思った 。
「 お 姉さん ……」
と 、 夕 里子 は 呟いた 。
「 綾子 さん が どうした ?
「 お 姉さん 、 安東 先生 に 夢中な の 」
「 何 だって ?
「 お 姉さん 、 会社 に も い ない し 、 どこ に いる の か 分 ら ない んだ もの 」
「 綾子 さん なら 、 さっき 電話 が かかって 来た よ 」
夕 里子 は 驚いて 国友 を 見た 。
「 何の 用 で ?
「 待ち合わせ の 場所 へ 行く のに 、 道 に 迷った と か 言って ね 」
「 どこ へ 行った か 分 る ?
「 うん 。
しかし もう 三十 分 以上 たって る よ 」
「 間に合う かも しれ ない わ !
早く ! 夕 里子 に せき立て られて 、 国友 は ガードマン の 詰所 を 飛び出した 。
「 ねえ 、 刑事 さん !
ガードマン が あわてて 呼びかける 。
「 この 連中 は ── 刑事 さん ! だが 、 もう 国友 と 夕 里子 の 姿 は 、 人 の 流れ の 中 へ 消えて しまって いた 。
目の前 に 、 その 店 が ある と いう 事実 が 、 信じ られ ない 。
砂漠 の 逃げ 水 じゃ ない けれど 、 入ろう と する と 、 急に 違う 店 に なる か 、 消えて しまう んじゃ ない か 、 と いう 気 が した 。
もう 二 時 を 二十五 分 も 回って いる 。
店 へ 入って 、 綾子 は そっと 中 を 見回した 。
── い ない 。 もう 怒って 帰って しまった のだろう か ?
綾子 は 涙 が 溢れて 来る の が 分 った 。
── こんな 馬鹿 を 相手 に して くれる 人 なんて いやし ない んだ 。
グスン 、 と すすり 上げる と 、 とたん に 、 誰 か の 手 が 肩 に 触れて 、 綾子 は 飛び上り そうに なった 。
振り向く と 、 安東 の 笑顔 が あった 。
「 先生 !
「 よく 来て くれた ね 」
安東 は 、 綾子 の 肩 へ 手 を 回した 。
「 ちょっと 電話 を かけて た の さ 。 さあ 、 座ろう 。 ── もう 来 ない か と 思った よ 」
「 ごめんなさい 。
てっきり 怒って 帰っちゃ った か と 思って ……」
「 何 か あった の かい ?
「 私 、 方向 音痴 な んです 」
安東 は 笑って 、
「 じゃ 、 君 の よく 知って る 所 で 会う んだった ね 。
── いい の かい 、 今日 は ? 「 ええ 」
「 妹 たち は ?
「 朝 出て 来ちゃ った から 、 夕 里子 は まだ 寝て ました 」
「 そう か 。
じゃ 、 もう 誰 も 邪魔 する 者 は い ない わけだ 」
綾子 は 、 頰 を 染めて うつむいた 。
安東 の 手 が 、 綾子 の 手 を 包む 。 綾子 は 、 ぎこちなく 微笑んだ 。
「 行こう か 」
「 ええ 」
二 人 は 立ち上って 店 を 出て 行った 。
ウェイトレス が 、
「 二 人 で コーヒー 一 つ か 。
ケチ ね ! と グチ った 。