犬 と 鏡 いぬ||きよう

犬 と 鏡 いぬ||きよう

むかし むかし 、 吉 四六 さん と 言う 、 とても ゆかいな 人 が い ました 。 ||きち|しろく|||いう|||じん||| ある 年の暮れ の 事 、 吉 四六 さん が お 正月 に 必要な 物 を 町 へ 買い に 来て いる と 、 突然 横道 から 女の子 の 泣き声 が して 、 続いて 大勢 の 子ども たち が 騒ぐ 声 が 聞こえて 来 ました 。 |としのくれ||こと|きち|しろく||||しょうがつ||ひつような|ぶつ||まち||かい||きて|||とつぜん|よこみち||おんなのこ||なきごえ|||つづいて|おおぜい||こども|||さわぐ|こえ||きこえて|らい| 「 はて 、 何事 だろう ？ |なにごと| 」 　 吉 四六 さん が 急いで その 横道 に 入って みる と 、 子ども たち が ある 侍 屋敷 の 裏門 の 周り に 集まって 騒いで いる のです 。 きち|しろく|||いそいで||よこみち||はいって|||こども||||さむらい|やしき||うらもん||まわり||あつまって|さわいで|| 後ろ から のぞいて みる と 、 門 の わき に つないで ある 一 匹 の 猛 犬 が 、 きれいな マリ を くわえて 子ども たち を にらみ つけ ながら 、 「 ウー ！ うしろ|||||もん||||||ひと|ひき||もう|いぬ|||まり|||こども|||||| ウー ！ 」 と 、 うなり 声 を あげて いる のです 。 ||こえ|||| 吉 四六 さん が 子ども たち に 話 を 聞いて みる と 、 この 町 の 油 屋 の 娘 が 落とした 大切な マリ を 、 犬 が くわえて 放さ ない と いう のです 。 きち|しろく|||こども|||はなし||きいて||||まち||あぶら|や||むすめ||おとした|たいせつな|まり||いぬ|||はなさ|||| 子ども 好き の 吉 四六 さん は 、 泣いて いる 油 屋 の 娘 に 言い ました 。 こども|すき||きち|しろく|||ないて||あぶら|や||むすめ||いい| 「 よし よし 、 心配 する な 。 ||しんぱい|| おじさん が 取って やる から な 」 　 吉 四六 さん は 犬 に 手 を 出して 、 犬 を なだめよう と し ました が 、 「 ウッーー ！ ||とって||||きち|しろく|||いぬ||て||だして|いぬ|||||||ウッー- 」 　 犬 は せっかく 手 に 入れた おもちゃ を 取ら れる と 思い 、 ちょっと でも 近づく と 噛みつく 姿勢 を 取り ます 。 いぬ|||て||いれた|||とら|||おもい|||ちかづく||かみつく|しせい||とり| The dog thinks that he will be able to pick up the toy he has obtained, and will take a biting posture when he gets a little closer. 「 こりゃ 、 知ら ない 人 で は 駄目だ な 。 |しら||じん|||だめだ| 飼い主 で なくて は 」 　 吉 四六 さん は 家 の 中 に 声 を かけ ました が 、 あいにく と みんな 出かけて いる らしく 、 家 に は 一 人 も い ませ ん 。 かいぬし||||きち|しろく|||いえ||なか||こえ||||||||でかけて|||いえ|||ひと|じん|||| 「 こう なる と 、 エサ で つる しか ない な 」 　 そこ で 吉 四六 さん は 、 正月 用 に 買って きた おも ち を 一 つ 、 犬 に 放り投げた のです が 、 この 犬 は 普段 から 良く しつけて ある ので 、 飼い主 が やる エサ しか 食べ ない ようです 。 |||えさ||||||||きち|しろく|||しょうがつ|よう||かって|||||ひと||いぬ||ほうりなげた||||いぬ||ふだん||よく||||かいぬし|||えさ||たべ|| さすが の 吉 四六 さん も 、 相手 が 犬 で は いつも の とんち が 働き ませ ん 。 ||きち|しろく|||あいて||いぬ|||||||はたらき|| As expected, Mr. Yoshishiroku, too, does not work as usual when the other party is a dog. 油 屋 の 娘 を 見る と 、 吉 四六 さん が 何とか して くれる と 思い 、 真っ直ぐな 目 で じっと 吉 四六 さん を 見つめて い ます 。 あぶら|や||むすめ||みる||きち|しろく|||なんとか||||おもい|まっすぐな|め|||きち|しろく|||みつめて|| 「 うーん 、 これ は 難題 だ な 」 　 しばらく の 間 、 犬 の 顔 を じっと 見つめて いた 吉 四六 さん は 、 「 あ 、 そう だ ！ |||なんだい|||||あいだ|いぬ||かお|||みつめて||きち|しろく||||| 確か 買った 物 の 中 に 、 嫁 さん に 頼ま れて いた あれ が ある はず 」 　 吉 四六 さん は 荷物 の 中 から 何 か を 取り出す と 、 すたすた と 犬 に 近づいて 、 取り出した ある 物 を 犬 の 鼻先 に さし向け ました 。 たしか|かった|ぶつ||なか||よめ|||たのま|||||||きち|しろく|||にもつ||なか||なん|||とりだす||||いぬ||ちかづいて|とりだした||ぶつ||いぬ||はなさき||さしむけ| Certainly, there must have been one of the things I bought that my wife had asked me to do. ”Mr. Yoshishiroku took something out of his luggage, and when he approached the dog, he approached the dog and took out the thing at the tip of the dog's nose. I turned to. すると 犬 は 驚いて 、 「 ワン ！ |いぬ||おどろいて|わん 」 と 、 吠えた のです 。 |ほえた| その とたん マリ は 犬 の 口 から 離れて 、 コロコロ と 吉 四六 さん の 前 に 転がって き ました 。 ||まり||いぬ||くち||はなれて|ころころ||きち|しろく|||ぜん||ころがって|| 吉 四六 さん は 素早く マリ を 拾い 上げる と 、 喜ぶ 油 屋 の 娘 に マリ を 返して あげ ました 。 きち|しろく|||すばやく|まり||ひろい|あげる||よろこぶ|あぶら|や||むすめ||まり||かえして|| 「 おじさん 、 ありがとう 。 でも 、 何で 犬 は マリ を 放して くれた の ？ |なんで|いぬ||まり||はなして|| 」 　 尋ねる 油 屋 の 娘 に 、 吉 四六 さん は さっき 犬 に 見せた 物 を 見せ ました 。 たずねる|あぶら|や||むすめ||きち|しろく||||いぬ||みせた|ぶつ||みせ| 「 あ 、 かがみ だ ！ 」 　 犬 は かがみ に 映った 自分 の 姿 を 見て 、 かがみ の 中 に 別の 犬 が いる と 思い 、 その 犬 に 向かって 吠えた のでした 。 いぬ||||うつった|じぶん||すがた||みて|||なか||べつの|いぬ||||おもい||いぬ||むかって|ほえた|

おしまい