食わ ず の 梨 弘法 大師 くわ|||なし|こうぼう|だいし a pear without a bite

食わ ず の 梨 　 弘 法大 師 くわ|||なし|ひろ|ほうだい|し

むかし むかし 、 旅 の お 坊さん が 修業 の ため に 、 四国 の 屋 島 ( や しま ) の 山 へ 登って いた 時 の お 話し です 。 ||たび|||ぼうさん||しゅぎょう||||しこく||や|しま||||やま||のぼって||じ|||はなし|

細い 山道 を 一生懸命 登って いた お 坊さん は 長旅 で の ど が 渇いた のです が 、 運 悪く 水 の 持ち 合わせ が あり ませ ん 。 ほそい|やまみち||いっしょうけんめい|のぼって|||ぼうさん||ながたび|||||かわいた|||うん|わるく|すい||もち|あわせ|||| ふと 見る と 、 梨 ( なし ) の 木 に おいし そうな 梨 が 実って いる の が 見え ました 。 |みる||なし|||き|||そう な|なし||みのって||||みえ| ちょうど 男 の 人 が 梨 を もいで いた ので 、 お 坊さん は 梨 の 木 に 登って いる 男 に 頭 を 下げて 頼み ました 。 |おとこ||じん||なし||||||ぼうさん||なし||き||のぼって||おとこ||あたま||さげて|たのみ| 「 すみません 。 のど が 渇いて 、 困って おり ます 。 ||かわいて|こまって|| どうか その 梨 の 実 を 一 つ 、 分けて もらえ ませ ん か ？ ||なし||み||ひと||わけて|||| 」 　 すると 男 は 、 めんどくさ そうに 言い ました 。 |おとこ||めん どくさ|そう に|いい| 「 だめだ め 。 これ は 石 の 様 に まずい 梨 で 、 一口 食べたら 、 ペッ と 吐き出す ほど 味 が ない んです よ 」 「 石 の 様 に 固くて も 、 吐き出す ほど まずくて も よい から 。 ||いし||さま|||なし||ひとくち|たべたら|||はきだす||あじ|||||いし||さま||かたくて||はきだす||||| どうか 一 つ 」 　 そう 言って 、 お 坊さん が いくら 頼んで も 、 「 いい や 、 だめだ 。 |ひと|||いって||ぼうさん|||たのんで|||| この 梨 は 食え ない 梨 だ から 、 はやく あっち へ 行って ください 」 と 、 言う のです 。 |なし||くえ||なし||||あっ ち||おこなって|||いう| 「・・・ そうです か 。 そう です| なら 、 仕方 あり ませ ん 。 |しかた||| あっち へ 行き ましょう 」 　 あきらめた お 坊さん は 男 と 梨 の 実 を チラリ と 見 ながら 口 の 中 で 呪文 を 唱える と 、 どこ か へ 行って しまい ました 。 あっ ち||いき||||ぼうさん||おとこ||なし||み||ちらり||み||くち||なか||じゅもん||となえる|||||おこなって|| その お 坊さん の 後ろ姿 を 見 ながら 、 男 は に やり と 笑い ました 。 ||ぼうさん||うしろすがた||み||おとこ|||||わらい| 「 えっ へ へ へ 、 行き おった 、 行き おった わ 。 ||||いき||いき|| こんなに うまい 梨 の 実 を 、 こじき 坊主 に くれて やる なんて もったいない わ 」 ||なし||み|||ぼうず||||||

翌日 、 男 は 梨 の 実 を 、 町 へ 売り に 行き ました 。 よくじつ|おとこ||なし||み||まち||うり||いき| 「 えー 、 梨 は いら ん か ね 」 　 すると たちまち 、 多く の 人 が 集まって 来 ました 。 |なし||||||||おおく||じん||あつまって|らい| 「 いつも の 甘い 梨 、 おくれ 」 「 ほんとに あんた の 梨 の 実は 、 うまい ねえ 」 「 うち に も 、 どっさり だ よ 」 　 梨 の 実は どんどん 売れて 、 男 は ニンマリ です 。 ||あまい|なし|||||なし||じつは|||||||||なし||じつは||うれて|おとこ||にんまり| すると 梨 を ひと かじり した お 客 の 一 人 が 目 を 白黒 さ せて 、 食べた 梨 を ペッ と 吐き出し ました 。 |なし||||||きゃく||ひと|じん||め||しろくろ|||たべた|なし||||はきだし| 「 なんだ 、 この 梨 は ！ ||なし| 」 　 その 声 で 、 他の お 客 たち も 買った 梨 を 食べ ました 。 |こえ||たの||きゃく|||かった|なし||たべ| 「 本当だ 。 ほんとうだ こり ゃあ ひどい 。 石 の 様 に 固い ぞ 」 「 それ に 、 まるで 味 が しない じゃ ない か ！ いし||さま||かたい|||||あじ||し ない||| 」 　 お 客 たち は 怒って 、 梨 の 代金 を 返せ と 言い ました 。 |きゃく|||いかって|なし||だいきん||かえせ||いい| 梨 売り の 男 は 首 を 傾げ ながら 、 「 おかしい なあ ？ なし|うり||おとこ||くび||かしげ||| 昨日 食べた 時 は 、 とても うまかった んだ が なあ 」 と 、 ガブリ と かじり ました 。 きのう|たべた|じ||||||||||| その とたん 、 あまり の まず さ に 梨 売り の 男 も 、 思わず ペッ と 吐き出し ました 。 |||||||なし|うり||おとこ||おもわず|||はきだし| 「 ペッ 、 ペッ 。 こんな 石 の 様 に まずい 梨 の 実は 、 初めて だ 。 |いし||さま|||なし||じつは|はじめて| これ じゃあ 誰 でも 、 一口 食べたら ペッ と 吐き出す ぞ 」 　 そして その 自分 の 言葉 に 、 ハッと し ました 。 ||だれ||ひとくち|たべたら|||はきだす||||じぶん||ことば||はっと|| 今 の 言葉 は 梨 を 恵んで ほしい と 頼んだ お 坊さん に 自分 が 言った 言葉 と 、 同じだった から です 。 いま||ことば||なし||めぐんで|||たのんだ||ぼうさん||じぶん||いった|ことば||おなじだった|| 「 もし かして 、 あの お 坊 さま は うわさ に 聞く 弘 法大 師 さま だった ので は 。 ||||ぼう|||||きく|ひろ|ほうだい|し|||| ・・・ ああ 、 おれ の 心 が 悪い 為 に 、 梨 の 味 が こんな 事 に なって しまった 」 　 それ から も 、 男 の 梨 の 実 が おいしく なる 事 は あり ませ ん でした 。 |||こころ||わるい|ため||なし||あじ|||こと|||||||おとこ||なし||み||||こと||||| そして 町 の 人 たち は 、 男 の 梨 の 実 を 『 食わ ず の 梨 』 と 呼ぶ ように なった そうです 。 |まち||じん|||おとこ||なし||み||くわ|||なし||よぶ|||そう です

その 梨 の 木 は 、 今 も 屋 島 に 残って いる と いわ れて い ます 。 |なし||き||いま||や|しま||のこって||||||

おしまい