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屍鬼, Shiki Episode 15

( 敏夫 ) 起き上がり の 襲撃 と 殺人 を 一緒 に する な !

( 静 信 ) 君 は アベル な の かい ? ( 正雄 ) 夏野 火葬 さ れ た の ?

( 恭子 の 悲鳴 )

( 徹 ) 《 人 は なぜ 死者 に 切り 花 を 捧げる の だ ろ う か 》 →

《 夏野 が 死 ん で 7 日 。 墓 の 代わり に こうして →

夏野 の 部屋 の 窓 辺 に 供え た 花 も 7 本 目 に なった 》

朝 の 光 を 手放し た 花

注が れ ない 雨 を 求め

覚め ない 眠り に つく

誰 か を そっと 呼ぶ 声

闇 の 楽園 は

嘘 か 夢 か

失う の は 身体 と

自分 と いう 心

その 対価 を 差し出し

何 を 得 られる の だ ろ う

この 涙 で 奪え る 程 に

命 は 脆く て 儚く て

全て に 訪れる

終わり を

「 恐怖 」 と 嘆く の か

終演 を 歌う 金 盞花

静か に 咲き誇る

憎しみ も

悲しみ も

その 根 で た くり 寄せ て

終焉 を 歌う 金 盞花

寂し さ を 潤す

注が れ ない 雨 を 求め て

覚め ない 眠り に つく

( 敏夫 ) いい ところ に 来 た 。

片付ける の を 手伝って くれ 。

( 静 信 ) あっ … 。

静 信 … 。

何 だ ? なら お前 は どう し たい ん だ ?

( 敏夫 ) どう すれ ば お 気 に 召す ? 俺 は 選択 し 決断 し た 。 →

このまま 汚染 の 拡大 を 放置 する こと は でき ない 。

だから 屍 鬼 を 狩る ! これ が 俺 の 正義 だ 。

( 静 信 ) 《 他者 を 殺害 する こと は →

どんな 大義 名分 を 掲げよ う と 正義 で は ない 》 →

《 僕 は 殺し たく ない 。 人 で あ ろ う と なか ろ う と 》

( 静 信 ) 《 「 彼 は なぜ 弟 を 殺し た の か ? 」 》 →

《 兄 は 魔 が 差し た の だ 》

《 そう 。 意味 の ない 衝動 に 駆られ た だけ 》

《 「 殺意 の ない 殺人 は 事故 で あって … 」 》

( 静 信 ) 《 「 殺意 の ない 殺人 は … 」 》

《 「 理由 の ない 殺意 は ない 」 》 →

《 だが 僕 に 殺意 は なかった 》 →

《 誰 も 殺し たく など ない 》 →

《 本当 に 理由 など なかった ん だ 》

( 敏夫 ) すま ん ね みんな 。 昼間 から 呼び出し て 。

( 広沢 ) いえ 。 昼 が いい と 言いだし た の は わたし です から 。

( 敏夫 ) そうだ な 。 だが 何で 昼 な ん だ ? →

こうして 集まる なら 夜 の 方 が 自然 だ ろ 。

( 広沢 ) いや 別に 意味 は ない けど 。

( 敏夫 ) 俺 は また 夜 に 外出 する の が 嫌 な の か と 思った よ 。

夜 に は 人通り が 絶える から な 。 うち の 病院 も →

いつも なら 時間 ぎりぎり まで 患者 が 来 て いた ん だ が →

今 で は 日 が 落ちる と 誰 も 来 ない 。

( 敏夫 ) 村 で は 今 も 死 が 続 い て いる 。 →

いや 続 い て いる どころ じゃ ない 。 →

今 で は もう 毎日 の よう に 人 が 死 ん で いる 。 →

当たり前 の よう に 。

あんた ら 伊藤 の 郁美 さん が やら かし た 騒ぎ を 覚え て いる か 。 →

あれ を ただ の イカレ た ばあさん の ざ れ 言 だ と 思って いる の か ?

( 敏夫 ) 俺 は 郁美 さん が 言って い た こと を 証明 できる 。 →

何なら 安 森 の 奈緒 さん の 墓 を 暴 こ う 。 →

中 に 死体 は ない はず だ 。 ( 広沢 ) やめ て くれ バカバカしい !

( 広沢 ) そんな わけ ない じゃ ない か !

( ドア の 開閉 音 )

( 敏夫 ) 頼む 。 手 を 貸し て ほしい ん だ 。 →

俺 1 人 で は これ を 食い止め られ ない 。

( 田代 ) 疲れ てる ん だ よ お前 。

妄想 と まで は 言わ ん が 墓 に 死体 が ない と か … 。

正 さん … 。

そう いや 人骨 って の は 肺病 に 効く って 説 が あって →

昔 は よく 盗掘 さ れ たら し い な 。

( 長谷川 ) ああ 。 アメリカ でも あり まし た ね 。 →

墓場 から 死体 を 掘り起こし て どう こういう 映画 の →

モデル に なった 事件 。 ( 田代 ) そうそう ! →

何て いう 映画 だ っけ ? ( 敏夫 ) それ が あんた ら の 答え か 。

( 長谷川 ) 敏夫 君 が 確信 と 覚悟 を 持って いる こと は 分かる 。 →

だが 俺 たち は 近代 合理 主義 の 洗礼 を 受け て いる ん だ 。 →

洗脳 と 言って も いい 。

この世 に 化け物 や 魔法 は 存在 し ない 。

それ が 俺 たち の 世界 に 対 する 認識 な ん だ 。

いまさら それ を 覆す こと は でき ない 。

( 長谷川 ) これ は 伝染 病 な ん だ ろ う ? →

その うち 外 の 誰 か が 怪しむ はず だ 。 →

そう なれ ば 全て が 公 に なり 事態 も 収まる だ ろ う よ 。

あ … 。

( 隆文 ) あら ま ! こりゃ 若 先生 。

( 敏夫 ) 隆文 さん 。 どうして あんた が ?

い や ぁ 留守番 の バイト を 頼ま れ まし て ねぇ 。

昼間 は ここ 誰 も い ない んで 。 ( 敏夫 ) い ない ?

何でも 所長 が 体 悪く し て 夜 しか 出 られ ない らしい の です よ 。 →

それ で ほか の 職員 も 合わせる 形 で 夜 に 開ける よう に なった と か 。 →

書類 と か なら 俺 が 預かって おき ます よ 。 →

でも 急ぎ でし たら →

夕方 7 時 くらい に 来 て くだされ ば 職員 が いる んで 。

( 兄 ) 日 が 暮れ たら 母ちゃん に 怒ら れ ん ぞ ー !

( 妹 ) 待って よ ー !

あ … 。

( 敏夫 ) 《 あり ふれた 役場 の 風景 だ 。 これ が 夜 で なけ れ ば 》

( 敏夫 ) すま ん が 保険 係 は いる か ね ?

( 職員 ) いま せ ん よ 。 失踪 し まし て ね 。 →

それ きり 後任 が い ない ん です よ 。 何 か ご用 で ?

( 敏夫 ) 9 月 から こちら の 死亡 者 数 が 知り たい ん だ 。

死亡 者 ? ゼロ です が 。

えっ … 。 ゼロ ? ( 職員 ) はい 。

( 敏夫 ) 《 こいつ ら みんな … 》

そんな ペテン が 通用 する か !

村 の 外 の 国立 病院 で 死亡 し た 者 も いる ん だ 。

例えば 安 森 幹 康 は →

9 月 に 息子 の 進 と 一緒 に 死亡 が 確認 さ れ て いる 。 →

何 だったら 国立 で みとった 医者 を 連れ て こよ う か ! ?

あぁ 安 森 工務 店 の 人 たち ね 。

あの 人 たち は 死ぬ 前 に 引っ越し て ます よ 。 →

8 月 末 に 転出 届 が 出 て い ます 。

つまり 9 月 の 死亡 の とき に は 村人 じゃ ない 。

だから 村 の 死亡 者 は ゼロ な ん です よ 。

( 静 信 ) 《 全員 死ぬ 直前 に 退職 し て いる 》 →

《 いや 死亡 だけ じゃ なく て 突然 の 引っ越し が 多い ん だ 》

《 近所 に 何 の 連絡 も なく 》 ( 敏夫 ) 《 いいかげん に しろ ! ! 》 →

《 好き で 出 て いった 連中 な ん か 知った こと か ! ! 》 →

《 例の 疫病 は 勢い が ついて る ん だ ! 》

何もかも 村 の 死 を 隠ぺい する ため だった の か 。

納得 さ れ まし た か ?

分から ん な 。 死亡 診断 書 は 俺 も 書 い てる 。 →

これ は その 控え だ 。 これ を 村 の 外 に 持っていき →

ここ の 戸籍 と 合わ ない と 大騒ぎ を する 。

そう すれ ば 公 に 捜査 さ れ … 。 ( 千鶴 ) 駄目 よ 。 →

せ ん せ … 。

( 千鶴 ) おとなしく し た 方 が 身 の ため 。 →

わたし 美食 家 です の 。 そして 先生 は わたし の →

え も の 。

でも 先生 が 困った こと を する よう なら … 。 →

今 すぐ そい つ ら の 餌 と なり果てる でしょ う よ 。 →

わたし は 桐 敷 千鶴 。

若く て 生き の いい 人間 しか 食さ ない 屍 鬼 。 →

近い うち に お宅 へ 伺い ます わ 。 尾崎 の 若 先生 。

俺 の 時間 も 残り 少ない と いう わけ か 。

( 辰巳 ) それ で どう だ ? →

この 葬儀 社 は 問題 なく やって いけ そう か ?

( 速見 ) もちろん です と も 。 結構 繁盛 し て ます よ ! →

ほら 人 が いっぱい 死 ん で て 寺 だけ じゃ 間に合わ ない から →

3 日 前 に も 田中 良和 さん の 葬儀 を →

パーフェクト かつ 華やか に 大 開催 し て やり まし た よ ! →

ホイ ホイ ホイ ホイ !

華やか ? ( 速見 ) ホーイ ホホホ ホーイ !

本当 に 大丈夫 な の か ? やはり 今日 の 葬儀 見 させ て もらう ぞ 。

了解 ! で は この チョコレート バー でも 食べ ながら →

見 て て ください まっ せ ー 。 ( 辰巳 ) いら ん 。

( 会場 の BGM )

( 浪江 ) な … 何 だ ろ う ね ? これ は 。

( 速見 ) 篤 さん は 心 優しく … 。

まったく 夜 から の 葬式 だ なんて 。 しかも こんな みっともない … 。

( 富雄 ) 好き で 頼 ん だ わけ じゃ ない 。 寺 の 手 が 空 い て なかった から →

ここ に する しか なかった ん だ ろ が 。

( 速見 ) さて 会場 の 皆さま 。 →

それでは いよいよ お 別れ で ござい ま ー す !

( 会場 の BGM )

( 速見 ) それ で は 皆さん サヨウナラ ~ !

( 花火 の 音 )

篤 ぃぃ ぃ … 。

( 速見 ) ここ は 会場 の 裏 祭壇 の 下 に なり ます 。 →

すっぽん で 降り て き た 棺 は ここ で 空 の 棺 と すり替え られ →

親族 に 渡さ れ この 後 は 彼ら に よって 棺 を こし に 載せ て →

山 の 墓地 へ と 運ぶ こと に なる の です 。 →

そして 中 の 死体 は しばらく ここ に 置か れ て →

起き上がる の を 確認 する と いう わけ です 。

これ で 仲間 を 掘り返す 手間 が 省 ける な 。

( 速見 ) その ため の 外 場 葬儀 社 です から 。

今日 に も 起き上がる な 。

おお ! さすが は 人 狼 。 鼻 が 利く なぁ 。

では 早速 山 入 に 移し ま しょ う 。

( 辰巳 ) それ から 葬儀 は もう 少し 地味 に しろ 。 →

葬儀 は 残さ れ た 者 たち の ため の もの 。 →

彼ら は 感傷 に 浸れ る 場所 を 欲 し て いる の だ 。

はい 了解 ! 辰巳 さん が そう 言う なら あした から でも 。

( 律子 ) えっ ! わたし たち →

通夜 の 手伝い し なく て いい ん です か ?

わたしら 近所 の 女 衆 で やる から さ 悪い けど 帳面 やら 事務 を お 願い 。

じゃ 忙しい から 。 ねっ 頼 ん だ わ よ 。

どうして … 。 ( 清美 ) 伝染 病 よ 。

わたし たち 病院 で 働 い てる から 一 番 危ない じゃ ない ? →

そんな 人間 が 食べ物 を 作って 人 に 振る舞う なんて →

とんでもない ! って こと よ 。

そう です か … 。

( 孝江 ) まあ あなた たち !

( 孝江 ) こんな ところ で 何 を のんき に !

あなた たち が 率先 し て 働 い て くれ ない と ! →

下々 の 者 に 好き勝手 に 家 の 中 を いじら れ たく あり ませ ん から ねぇ 。

さっ 早く お 勝手 に 行って ちょうだい !

で … でも … 。

( 聡子 ) わたし たち 別に 使用人 じゃ ない わ ! !

誰 が お 給金 を 払って いる か 忘れ て いる よう ね 。

( 聡子 ) 病院 から 看護 師 と して 報酬 は 頂 い て いる わ !

( やす よ ) 聡 ちゃん 。

でも … 。 決して 使用人 じゃ ない 。

何 です か その 言い 方 は ! ! 敏夫 に 言って 辞め させ ます よ ! !

そう すれ ば ! ? 看護 師 を 欲しがって る 病院 なんて →

いくら で も ある ん だ から !

先生 だって 雪 ちゃん が い なく なった こと を 心配 も し ない 。

そんな ん だったら わたし もう いい か な って 。 わたし … 。

( 聡子 の 泣き声 )

( 田 茂 ) おお いらっしゃい まし た か 若 御 院 。 どうぞ こちら へ 。

( 敏夫 ) 何 だ ? ( 清美 ) 病院 あて に 来 まし た 。

( 敏夫 ) 井崎 君 が … 。 なぜ ?

( 清美 ) 雪 ちゃん の こと が こたえ た ん です よ 。

どういう こと だ ? ( 清美 ) 覚え て らっしゃら ない 。

雪 ちゃん が … 。 こんな 大変 な 状況 の 中 休日 返上 で 一緒 に →

頑張って くれ て い た 看護 師 が 行方 不明 に なった って いう とき … 。

( 聡子 ) 《 先生 ! 雪 ちゃん 行方 不明 な ん です 》

( 清美 ) 「 そう か 」 は ない ん じゃ ない です か ! ?

( 敏夫 ) そう か … 。 いや すま なかった 。

わたし に 謝ら れ て も 困り ます 。

そりゃ あ 奥さん の こと が あって 大変 だった の は 分かって ます よ 。 →

でも 聡 ちゃん に し たら 先生 が 少しも 気 に し て ない ふう な の が →

我慢 でき なかった ん だ と 思い ます 。 →

もう いまさら 先生 を 責め て も しょうがない です けど 。

( 敏夫 ) 俺 の せい な の か … 。

そう 言った つもり です けど そう 聞こえ ませ ん でし た か ? →

わたし も 納得 は し て い ませ ん !

先生 に は 同情 し ます から →

それ で 辞める の どう の と 言う 気 は あり ませ ん けど !

くっ … !

( 田 茂 ) 確かに 村 で は 死ぬ 者 が 続 い て おる 。 →

むしろ だ から こそ ことし の 霜月 神楽 は →

盛大 厳粛 に 執り行 お う で は ない か !

( 小池 ) 田 茂 に 賛成 だ 。 こういう とき こそ →

神事 を しっかり と 行って 厄災 を はらう べき だ 。

( 宗 秀 ) っ ちゅう こと は 五 座 十 三 番 全部 やる の か ?

( 竹村 ) 覚え とる 者 が おる か ? ( 小池 ) 確か うち の ばあさん が →

『 三輪 』 と 『 式 三 番 』 を 覚え とる と 言って い た が 。

( 宗 秀 ) じゃあ お前 ん と この せがれ が 覚え て くれりゃ あ →

話 が 早い なぁ 。

でも 小池 の せがれ じゃ ぬ ぼ っと し 過ぎ て →

見栄え が 悪い の と 違う か ? ( 小池 ) こら 何 を 言う か ぁ 。

( 田 茂 ) ほか は どう する ?

( 宗 秀 ) 確か 北田 の ばあさん も 何 か 知 っと る 言って た ぞ 。

( 敏夫 ) 《 この 人 たち は 誰 も 気付 い て い ない 》

《 いや 気付く 気 が ない ん だ 》

( ドア の 開く 音 )

( 武藤 ) あぁ お かえり なさい 。

ああ 。 なあ 武藤 さん 。 ( 武藤 ) はい 。

あんた は そこ に い て →

夏 以来 何 が 起こって き た か 見て い た よ な ?

は あ 。

村 は 鬼 に 侵略 さ れ てる … 。 って の は どう だい ?

ご 冗談 を 。

フッ 。 そう か 。

( 足音 )

俺 を 殺し に 来 た か 。

( 敏夫 ) 君 は 確か … 。

結城 夏野 君 だった ね 。

( 夏野 ) 先生 。 聞き たい こと が ある 。

何 か な ?

今 でも … 清水 恵 は 死 ん だ と 思って いる の か ?

( やす よ ) 《 工房 で 誰 か 亡くなった らしい の よ 》

ああ 死 ん だ よ 。 まだ 動 い て いる が な 。

あんた は 1 人 じゃ ない 。

闇 に 紛れ て

息 を 殺す

闇 を まとって

ふっと 微笑む

気のせい さ

お前 など 誰 も 知る はず ない

月 だけ が

見つめ て いる

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て


( 敏夫 ) 起き上がり の 襲撃 と 殺人 を 一緒 に する な !

( 静 信 ) 君 は アベル な の かい ? ( 正雄 ) 夏野 火葬 さ れ た の ?

( 恭子 の 悲鳴 )

( 徹 ) 《 人 は なぜ 死者 に 切り 花 を 捧げる の だ ろ う か 》 →

《 夏野 が 死 ん で 7 日 。 墓 の 代わり に こうして →

夏野 の 部屋 の 窓 辺 に 供え た 花 も 7 本 目 に なった 》

朝 の 光 を 手放し た 花

注が れ ない 雨 を 求め

覚め ない 眠り に つく

誰 か を そっと 呼ぶ 声

闇 の 楽園 は

嘘 か 夢 か

失う の は 身体 と

自分 と いう 心

その 対価 を 差し出し

何 を 得 られる の だ ろ う

この 涙 で 奪え る 程 に

命 は 脆く て 儚く て

全て に 訪れる

終わり を

「 恐怖 」 と 嘆く の か

終演 を 歌う 金 盞花

静か に 咲き誇る

憎しみ も

悲しみ も

その 根 で た くり 寄せ て

終焉 を 歌う 金 盞花

寂し さ を 潤す

注が れ ない 雨 を 求め て

覚め ない 眠り に つく

( 敏夫 ) いい ところ に 来 た 。

片付ける の を 手伝って くれ 。

( 静 信 ) あっ … 。

静 信 … 。

何 だ ? なら お前 は どう し たい ん だ ?

( 敏夫 ) どう すれ ば お 気 に 召す ? 俺 は 選択 し 決断 し た 。 →

このまま 汚染 の 拡大 を 放置 する こと は でき ない 。

だから 屍 鬼 を 狩る ! これ が 俺 の 正義 だ 。

( 静 信 ) 《 他者 を 殺害 する こと は →

どんな 大義 名分 を 掲げよ う と 正義 で は ない 》 →

《 僕 は 殺し たく ない 。 人 で あ ろ う と なか ろ う と 》

( 静 信 ) 《 「 彼 は なぜ 弟 を 殺し た の か ? 」 》 →

《 兄 は 魔 が 差し た の だ 》

《 そう 。 意味 の ない 衝動 に 駆られ た だけ 》

《 「 殺意 の ない 殺人 は 事故 で あって … 」 》

( 静 信 ) 《 「 殺意 の ない 殺人 は … 」 》

《 「 理由 の ない 殺意 は ない 」 》 →

《 だが 僕 に 殺意 は なかった 》 →

《 誰 も 殺し たく など ない 》 →

《 本当 に 理由 など なかった ん だ 》

( 敏夫 ) すま ん ね みんな 。 昼間 から 呼び出し て 。

( 広沢 ) いえ 。 昼 が いい と 言いだし た の は わたし です から 。

( 敏夫 ) そうだ な 。 だが 何で 昼 な ん だ ? →

こうして 集まる なら 夜 の 方 が 自然 だ ろ 。

( 広沢 ) いや 別に 意味 は ない けど 。

( 敏夫 ) 俺 は また 夜 に 外出 する の が 嫌 な の か と 思った よ 。

夜 に は 人通り が 絶える から な 。 うち の 病院 も →

いつも なら 時間 ぎりぎり まで 患者 が 来 て いた ん だ が →

今 で は 日 が 落ちる と 誰 も 来 ない 。

( 敏夫 ) 村 で は 今 も 死 が 続 い て いる 。 →

いや 続 い て いる どころ じゃ ない 。 →

今 で は もう 毎日 の よう に 人 が 死 ん で いる 。 →

当たり前 の よう に 。

あんた ら 伊藤 の 郁美 さん が やら かし た 騒ぎ を 覚え て いる か 。 →

あれ を ただ の イカレ た ばあさん の ざ れ 言 だ と 思って いる の か ?

( 敏夫 ) 俺 は 郁美 さん が 言って い た こと を 証明 できる 。 →

何なら 安 森 の 奈緒 さん の 墓 を 暴 こ う 。 →

中 に 死体 は ない はず だ 。 ( 広沢 ) やめ て くれ バカバカしい !

( 広沢 ) そんな わけ ない じゃ ない か !

( ドア の 開閉 音 )

( 敏夫 ) 頼む 。 手 を 貸し て ほしい ん だ 。 →

俺 1 人 で は これ を 食い止め られ ない 。

( 田代 ) 疲れ てる ん だ よ お前 。

妄想 と まで は 言わ ん が 墓 に 死体 が ない と か … 。

正 さん … 。

そう いや 人骨 って の は 肺病 に 効く って 説 が あって →

昔 は よく 盗掘 さ れ たら し い な 。

( 長谷川 ) ああ 。 アメリカ でも あり まし た ね 。 →

墓場 から 死体 を 掘り起こし て どう こういう 映画 の →

モデル に なった 事件 。 ( 田代 ) そうそう ! →

何て いう 映画 だ っけ ? ( 敏夫 ) それ が あんた ら の 答え か 。

( 長谷川 ) 敏夫 君 が 確信 と 覚悟 を 持って いる こと は 分かる 。 →

だが 俺 たち は 近代 合理 主義 の 洗礼 を 受け て いる ん だ 。 →

洗脳 と 言って も いい 。

この世 に 化け物 や 魔法 は 存在 し ない 。

それ が 俺 たち の 世界 に 対 する 認識 な ん だ 。

いまさら それ を 覆す こと は でき ない 。

( 長谷川 ) これ は 伝染 病 な ん だ ろ う ? →

その うち 外 の 誰 か が 怪しむ はず だ 。 →

そう なれ ば 全て が 公 に なり 事態 も 収まる だ ろ う よ 。

あ … 。

( 隆文 ) あら ま ! こりゃ 若 先生 。

( 敏夫 ) 隆文 さん 。 どうして あんた が ?

い や ぁ 留守番 の バイト を 頼ま れ まし て ねぇ 。

昼間 は ここ 誰 も い ない んで 。 ( 敏夫 ) い ない ?

何でも 所長 が 体 悪く し て 夜 しか 出 られ ない らしい の です よ 。 →

それ で ほか の 職員 も 合わせる 形 で 夜 に 開ける よう に なった と か 。 →

書類 と か なら 俺 が 預かって おき ます よ 。 →

でも 急ぎ でし たら →

夕方 7 時 くらい に 来 て くだされ ば 職員 が いる んで 。

( 兄 ) 日 が 暮れ たら 母ちゃん に 怒ら れ ん ぞ ー !

( 妹 ) 待って よ ー !

あ … 。

( 敏夫 ) 《 あり ふれた 役場 の 風景 だ 。 これ が 夜 で なけ れ ば 》

( 敏夫 ) すま ん が 保険 係 は いる か ね ?

( 職員 ) いま せ ん よ 。 失踪 し まし て ね 。 →

それ きり 後任 が い ない ん です よ 。 何 か ご用 で ?

( 敏夫 ) 9 月 から こちら の 死亡 者 数 が 知り たい ん だ 。

死亡 者 ? ゼロ です が 。

えっ … 。 ゼロ ? ( 職員 ) はい 。

( 敏夫 ) 《 こいつ ら みんな … 》

そんな ペテン が 通用 する か !

村 の 外 の 国立 病院 で 死亡 し た 者 も いる ん だ 。

例えば 安 森 幹 康 は →

9 月 に 息子 の 進 と 一緒 に 死亡 が 確認 さ れ て いる 。 →

何 だったら 国立 で みとった 医者 を 連れ て こよ う か ! ?

あぁ 安 森 工務 店 の 人 たち ね 。

あの 人 たち は 死ぬ 前 に 引っ越し て ます よ 。 →

8 月 末 に 転出 届 が 出 て い ます 。

つまり 9 月 の 死亡 の とき に は 村人 じゃ ない 。

だから 村 の 死亡 者 は ゼロ な ん です よ 。

( 静 信 ) 《 全員 死ぬ 直前 に 退職 し て いる 》 →

《 いや 死亡 だけ じゃ なく て 突然 の 引っ越し が 多い ん だ 》

《 近所 に 何 の 連絡 も なく 》 ( 敏夫 ) 《 いいかげん に しろ ! ! 》 →

《 好き で 出 て いった 連中 な ん か 知った こと か ! ! 》 →

《 例の 疫病 は 勢い が ついて る ん だ ! 》

何もかも 村 の 死 を 隠ぺい する ため だった の か 。

納得 さ れ まし た か ?

分から ん な 。 死亡 診断 書 は 俺 も 書 い てる 。 →

これ は その 控え だ 。 これ を 村 の 外 に 持っていき →

ここ の 戸籍 と 合わ ない と 大騒ぎ を する 。

そう すれ ば 公 に 捜査 さ れ … 。 ( 千鶴 ) 駄目 よ 。 →

せ ん せ … 。

( 千鶴 ) おとなしく し た 方 が 身 の ため 。 →

わたし 美食 家 です の 。 そして 先生 は わたし の →

え も の 。

でも 先生 が 困った こと を する よう なら … 。 →

今 すぐ そい つ ら の 餌 と なり果てる でしょ う よ 。 →

わたし は 桐 敷 千鶴 。

若く て 生き の いい 人間 しか 食さ ない 屍 鬼 。 →

近い うち に お宅 へ 伺い ます わ 。 尾崎 の 若 先生 。

俺 の 時間 も 残り 少ない と いう わけ か 。

( 辰巳 ) それ で どう だ ? →

この 葬儀 社 は 問題 なく やって いけ そう か ?

( 速見 ) もちろん です と も 。 結構 繁盛 し て ます よ ! →

ほら 人 が いっぱい 死 ん で て 寺 だけ じゃ 間に合わ ない から →

3 日 前 に も 田中 良和 さん の 葬儀 を →

パーフェクト かつ 華やか に 大 開催 し て やり まし た よ ! →

ホイ ホイ ホイ ホイ !

華やか ? ( 速見 ) ホーイ ホホホ ホーイ !

本当 に 大丈夫 な の か ? やはり 今日 の 葬儀 見 させ て もらう ぞ 。

了解 ! で は この チョコレート バー でも 食べ ながら →

見 て て ください まっ せ ー 。 ( 辰巳 ) いら ん 。

( 会場 の BGM )

( 浪江 ) な … 何 だ ろ う ね ? これ は 。

( 速見 ) 篤 さん は 心 優しく … 。

まったく 夜 から の 葬式 だ なんて 。 しかも こんな みっともない … 。

( 富雄 ) 好き で 頼 ん だ わけ じゃ ない 。 寺 の 手 が 空 い て なかった から →

ここ に する しか なかった ん だ ろ が 。

( 速見 ) さて 会場 の 皆さま 。 →

それでは いよいよ お 別れ で ござい ま ー す !

( 会場 の BGM )

( 速見 ) それ で は 皆さん サヨウナラ ~ !

( 花火 の 音 )

篤 ぃぃ ぃ … 。

( 速見 ) ここ は 会場 の 裏 祭壇 の 下 に なり ます 。 →

すっぽん で 降り て き た 棺 は ここ で 空 の 棺 と すり替え られ →

親族 に 渡さ れ この 後 は 彼ら に よって 棺 を こし に 載せ て →

山 の 墓地 へ と 運ぶ こと に なる の です 。 →

そして 中 の 死体 は しばらく ここ に 置か れ て →

起き上がる の を 確認 する と いう わけ です 。

これ で 仲間 を 掘り返す 手間 が 省 ける な 。

( 速見 ) その ため の 外 場 葬儀 社 です から 。

今日 に も 起き上がる な 。

おお ! さすが は 人 狼 。 鼻 が 利く なぁ 。

では 早速 山 入 に 移し ま しょ う 。

( 辰巳 ) それ から 葬儀 は もう 少し 地味 に しろ 。 →

葬儀 は 残さ れ た 者 たち の ため の もの 。 →

彼ら は 感傷 に 浸れ る 場所 を 欲 し て いる の だ 。

はい 了解 ! 辰巳 さん が そう 言う なら あした から でも 。

( 律子 ) えっ ! わたし たち →

通夜 の 手伝い し なく て いい ん です か ?

わたしら 近所 の 女 衆 で やる から さ 悪い けど 帳面 やら 事務 を お 願い 。

じゃ 忙しい から 。 ねっ 頼 ん だ わ よ 。

どうして … 。 ( 清美 ) 伝染 病 よ 。

わたし たち 病院 で 働 い てる から 一 番 危ない じゃ ない ? →

そんな 人間 が 食べ物 を 作って 人 に 振る舞う なんて →

とんでもない ! って こと よ 。

そう です か … 。

( 孝江 ) まあ あなた たち !

( 孝江 ) こんな ところ で 何 を のんき に !

あなた たち が 率先 し て 働 い て くれ ない と ! →

下々 の 者 に 好き勝手 に 家 の 中 を いじら れ たく あり ませ ん から ねぇ 。

さっ 早く お 勝手 に 行って ちょうだい !

で … でも … 。

( 聡子 ) わたし たち 別に 使用人 じゃ ない わ ! !

誰 が お 給金 を 払って いる か 忘れ て いる よう ね 。

( 聡子 ) 病院 から 看護 師 と して 報酬 は 頂 い て いる わ !

( やす よ ) 聡 ちゃん 。

でも … 。 決して 使用人 じゃ ない 。

何 です か その 言い 方 は ! ! 敏夫 に 言って 辞め させ ます よ ! !

そう すれ ば ! ? 看護 師 を 欲しがって る 病院 なんて →

いくら で も ある ん だ から !

先生 だって 雪 ちゃん が い なく なった こと を 心配 も し ない 。

そんな ん だったら わたし もう いい か な って 。 わたし … 。

( 聡子 の 泣き声 )

( 田 茂 ) おお いらっしゃい まし た か 若 御 院 。 どうぞ こちら へ 。

( 敏夫 ) 何 だ ? ( 清美 ) 病院 あて に 来 まし た 。

( 敏夫 ) 井崎 君 が … 。 なぜ ?

( 清美 ) 雪 ちゃん の こと が こたえ た ん です よ 。

どういう こと だ ? ( 清美 ) 覚え て らっしゃら ない 。

雪 ちゃん が … 。 こんな 大変 な 状況 の 中 休日 返上 で 一緒 に →

頑張って くれ て い た 看護 師 が 行方 不明 に なった って いう とき … 。

( 聡子 ) 《 先生 ! 雪 ちゃん 行方 不明 な ん です 》

( 清美 ) 「 そう か 」 は ない ん じゃ ない です か ! ?

( 敏夫 ) そう か … 。 いや すま なかった 。

わたし に 謝ら れ て も 困り ます 。

そりゃ あ 奥さん の こと が あって 大変 だった の は 分かって ます よ 。 →

でも 聡 ちゃん に し たら 先生 が 少しも 気 に し て ない ふう な の が →

我慢 でき なかった ん だ と 思い ます 。 →

もう いまさら 先生 を 責め て も しょうがない です けど 。

( 敏夫 ) 俺 の せい な の か … 。

そう 言った つもり です けど そう 聞こえ ませ ん でし た か ? →

わたし も 納得 は し て い ませ ん !

先生 に は 同情 し ます から →

それ で 辞める の どう の と 言う 気 は あり ませ ん けど !

くっ … !

( 田 茂 ) 確かに 村 で は 死ぬ 者 が 続 い て おる 。 →

むしろ だ から こそ ことし の 霜月 神楽 は →

盛大 厳粛 に 執り行 お う で は ない か !

( 小池 ) 田 茂 に 賛成 だ 。 こういう とき こそ →

神事 を しっかり と 行って 厄災 を はらう べき だ 。

( 宗 秀 ) っ ちゅう こと は 五 座 十 三 番 全部 やる の か ?

( 竹村 ) 覚え とる 者 が おる か ? ( 小池 ) 確か うち の ばあさん が →

『 三輪 』 と 『 式 三 番 』 を 覚え とる と 言って い た が 。

( 宗 秀 ) じゃあ お前 ん と この せがれ が 覚え て くれりゃ あ →

話 が 早い なぁ 。

でも 小池 の せがれ じゃ ぬ ぼ っと し 過ぎ て →

見栄え が 悪い の と 違う か ? ( 小池 ) こら 何 を 言う か ぁ 。

( 田 茂 ) ほか は どう する ?

( 宗 秀 ) 確か 北田 の ばあさん も 何 か 知 っと る 言って た ぞ 。

( 敏夫 ) 《 この 人 たち は 誰 も 気付 い て い ない 》

《 いや 気付く 気 が ない ん だ 》

( ドア の 開く 音 )

( 武藤 ) あぁ お かえり なさい 。

ああ 。 なあ 武藤 さん 。 ( 武藤 ) はい 。

あんた は そこ に い て →

夏 以来 何 が 起こって き た か 見て い た よ な ?

は あ 。

村 は 鬼 に 侵略 さ れ てる … 。 って の は どう だい ?

ご 冗談 を 。

フッ 。 そう か 。

( 足音 )

俺 を 殺し に 来 た か 。

( 敏夫 ) 君 は 確か … 。

結城 夏野 君 だった ね 。

( 夏野 ) 先生 。 聞き たい こと が ある 。

何 か な ?

今 でも … 清水 恵 は 死 ん だ と 思って いる の か ?

( やす よ ) 《 工房 で 誰 か 亡くなった らしい の よ 》

ああ 死 ん だ よ 。 まだ 動 い て いる が な 。

あんた は 1 人 じゃ ない 。

闇 に 紛れ て

息 を 殺す

闇 を まとって

ふっと 微笑む

気のせい さ

お前 など 誰 も 知る はず ない

月 だけ が

見つめ て いる

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て

ああ 終わり の 無い 夜 彷徨う

ああ あなた の 夢 ただ 夢見 て