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ブギーポップは笑わない, Boogiepop wa Warawanai (2019) Episode 12

( 鳥 の さえずり )

( 誠一 ( せい いち ) ) ハァ …

( 透 子 ( すいこ ) ) おじさん ( 誠一 ) ん っ

何 だい ?

( 透 子 ) おじさん もう すぐ 死ぬ わ

あっ …

( 誠一 ) 知って る

♪ ~

~ ♪

( キョウ ) “ 前略 初めて お 便り し ます ”

“ 先生 の ご 本 を 愛読 さ せ て いた だい て いる 者 です ”

“ 実は 先生 に 知って いただき たい こと が あり ― ”

“ 筆 を 執り まし た ”

“ 私 は もう すぐ 死ぬ でしょ う ”

“ 殺さ れる の です ”

“ 私 に は 生まれつき 奇妙 な 才能 が あり まし た ”

“ それ は この 世界 に 相 いれ ぬ もの で ― ”

“ 知ら れ れ ば 恐らく 平穏 な 生活 を 望 め なく なる … ”

“ そんな たぐい の もの で し た ”

“ しかし 私 は 先生 の ご 本 に 出会って しまい まし た ”

( 誠一 ) “ 君 の 孤独 は 君 の 価値 で も ある ”

“ 君 が 独りぼっち で あれ ば ある ほど ― ”

“ 君 は 多く の 人 と つながる 才能 を 持って いる ”

( キョウ ) あっ …

( キョウ ) “ 私 は それ まで ひた隠し に し て い た 才能 を ― ”

“ 少しずつ 世 に 現 そ う と 考え まし た ”

“ しかし 世界 は 私 を 異 分子 と し て 排除 する よう です ”

( 投かん する 音 )

( キョウ ) “ 私 の 周り で 最近 妙 な 連中 を 見かけ ます ”

“ きっと 監視 者 から の 刺客 でしょ う ”

“ 予想 し て た こと です が ― ”

“ 私 は 現在 の 社会 の 敵 に なって しまい まし た ”

“ それ で 最後 に お 礼 を 言 お う と 思った の です ”

社会 の 敵 …

( 携帯 電話 の 呼び出し 音 )

( 誠一 ) 弦 ( げん ) 今日 暇 かい ?

( 弦 ) まあ な 何 だ ? また 何 か の 調査 か ?

ああ それ が 少々 特殊 な ん だ が …

( 弦 ) 誠一 結論 から 言って こいつ は 本当 に 死 ん で いる

あっ …

( 弦 ) 死 ん だ の は 1 か月 前

この 手紙 の 消印 の その 翌日 だ

( 誠一 ) 翌日 ? ( 弦 ) ああ しかも ―

手紙 を 出す 日 の 3 日 前 から 行方 不明 に なって いる

行方 不明 …

彼 は やっぱり 何 か を し て い た の か ?

それ な ん だ が …

( 誠一 ) どう し た ? ( 弦 ) あっ いや

別に 何でもない こと な の かも しれ ん が …

( 誠一 ) 何 だ よ もったい つけ て

周り の 友達 の 成績 を 上げ ち まった ん だ

ん っ …

( 弦 ) それ も 別 に 勉強 を 教え た と か そう いう ん じゃ ない

ひと言 ふた 言 アドバイス を もらった と か ―

頭 を なで て もらった と か それ だけ だって 言う ん だ

学校 だけ じゃ ない

バンドマン に は 個性 的 な 曲 を 作 れる よう に して やったり と か ―

そう いう 話 が いっぱい ある ん だ よ

それ って つまり ―

例えば 僕 だったら 本業 の 小説 が うまく なる と か

そう いう こと だ

要 は 本人 が 伸び悩 ん で い た こと を 何 つう か ―

“ 突破 ” さ せ て やる 才能 ? そんな の が あった って 言う ん だ

信じ られ ない な

まるで 彼 が 奇跡 を 起こせ る みたい じゃ ない か

( 弦 ) “ みたい ” って いう か …

感触 だ が こいつ は 本物 だ

死因 は 何 だった ん だ ?

( 弦 ) 階段 から 足 を 滑ら せ て 頭 を 打った そう だ

目撃 者 も い ない

( 誠一 ) 行方 不明 の 果て に 階段 で 転 ん で 死 ん だ …

と いう こと か

( 弦 ) 騒ぎ に なり そう な もん だ ろ ?

だが 何 の 問題 も 残って い ない ん だ

家族 は すぐ 引っ越し ち まって 消息 不明 だ し な

( 誠一 ) ハァ … 痕跡 が 何も ない の か

ああ それ が 問題 だ

なあ 誠一 こいつ は ヤバ い こと だ ぞ

下手 に 首 突っ込む と ただ じゃ 済ま ない かも しれ ん

( 誠一 ) 奇跡 を 起こす 少年 が 社会 の 敵 か …

あっ

( キーボード を 打つ 音 )

( マウス の 操作 音 )

( 誠一 ) どう なって いる ん だ これ は …

( ふすま の 開く 音 ) ( 凪 ( なぎ ) ) オヤジ どう かし た の ?

( 誠一 ) い … いや あ 別に 何でも

( 誠一 ) 何 だって ?

( 凪 ) だ から 母 さん が 会い たい って さ

( 誠一 ) なんで ? ( 凪 ) さあ な

再婚 が 本決まり に なった から その 前 に 一 度 って

し … しかし …

( 凪 ) 会い たく ない ? なら そう 伝える けど

ん っ …

い … いや あ 分かった 承知 し た って 言 っと い て くれ

どう し た ?

別に 何でもない

何 だ 気 に なる な

( 凪 ) 母 さん の 再婚 相手 って さ 金持ち な ん だ よ ね

それ が ?

だから 子供 が 1 人 や 2 人 増え て も 何て こと ない ん だ って

あっ

お前 は どう 思って る ん だ ?

( 凪 の 吹き出す 声 )

( 凪 ) アハハッ そんな 泣き そう な 顔 す ん な よ

一緒に い て あげる から

お前 から かった の か ?

そりゃ もう 思いっきり な

まったく 俺 より しっかり し てる な お前

俺 が 小学生 の ころ から する と 考え られ ない よ

そりゃ そう だ よ

あと の 時代 に 生まれ た 俺 たち の ほう が ―

オヤジ 世代 より 賢く なる に 決まって る だ ろ

( 誠一 ) そう いう もの か ? ( 凪 ) 進化 って やつ だ よ 進化 !

進化 か よく 言った もん だ

まっ “ 子供 は 人類 の 父 で ある ” なんて 言葉 が …

ハッ

( 誠一 ) 進化 … “ 社会 の 敵 ” と は そう いう こと か

( 弦 ) 何 つう か ―

“ 突破 ” さ せ て やる 才能 ? そんな の が あった って 言う ん だ

現在 社会 が 対抗 し て いる

これ は 生存 競争 だ

“ 監視 者 ” と や ら が 私 に たどり着く の も 時間 の 問題 だ な

( 透 子 ) おじさん もう すぐ 死ぬ わ

( 誠一 ) 知って る

( 透 子 ) 知って る のに 平気 な の ?

( 誠一 ) どう に も なら ない こと は ある もの さ

( 透 子 ) ここ で 何 を 見 て い た の ?

( 誠一 ) 鳥 だ よ ( 透 子 ) 鳥 ?

鳥 は なんで 空 を 飛 ん で いる の か 知って いる かな ?

( 透 子 ) 翼 が ある から でしょ ?

( 誠一 ) 他 に 飛 ん で いる もの が 少ない から だ よ

鳥 ほど 空 を 自由 に 飛 べ る 生き物 は い ない

だから 飛ぶ ん だ

( 透 子 ) どう いう こと ?

他 に 争う もの が い なけ れ ば 生き て い ける

鳥 は ずっと 昔 から そう やって 生き延び て き た ん だ

でも 飛 ん で いる 鳥 だって 空 から 落ちる こと が ある わ

( 誠一 ) 4 月 に 雪 が 降る こと だって ある

あっ

あらゆる 危険 や 意外 性 は 全て 平等 に ある

問題 は その 中 で どう 生き抜く か だ

( 透 子 ) 人間 も ?

( 誠一 ) 人間 も それ 以外 の 者 も … だ

それ まで の 人間 と は 少し 違う 者 たち に も ―

やはり そう いう 戦い は 待って いる

どう 対処 する か は それぞれ だ が ね

( 透 子 ) おじさん って 偉い 人 な の ?

ああ し が ない 物書き だ が 実は すごい 大物 さ

社会 の 敵 ナンバーワン だ よ

敵 ?

今 の 世界 に とって は 新し すぎ て 敵 に しか な れ ない 者 たち が ―

なぜ か みんな 私 の 書 い た 本 に 感動 し て くれる

いわば 彼ら の 旗頭 の よう な 存在 だ

( 透 子 ) へえ

と いって も 私 に できる こと は 彼ら の 背中 を 押す こと だけ だ が ね

私 は そこ まで 言葉 の 力 を 信じ て い ない

命じる こと も 止める こと も でき ない

( 足音 )

( 座る 音 ) あっ

でも おじさん は 死ぬ わ

ハァ … らしい な

結局 思う よう に は いか ない 途中 で 失敗 し て しまう の よ

( 誠一 ) それ が 失敗 だ と 誰 が 決める ?

うん ?

君 は 人 の 死 が 見える ん だ ね

ええ

その 奇妙 な 才能 は 呪わ れ た もの だ と 思う かい ?

分から ない わ

ああ そんな こと は 誰 に も 分から ない ん だ

もし 君 が これ から 何 か を し た と し て ―

それ が 途中 で 終わった と し て も ―

それ が 失敗 か どう か は 誰 に も 決め られ ない

それ が たとえ 悪い こと に しか 見え ない こと でも ―

君 が 何 か を しよ う と し た 意思 や 真剣 な 気持ち …

そう いう もの は 必ず 他 の 者 たち の 中 に 残る

君 の 次 に 誰 か が もっと うまく それ を やって くれる かも しれ ない

誰 が ?

( 誠一 ) 君 の 敵 だった 者 かも しれ ない し ―

ただ の 通りすがり の 人 かも しれ ない

それ は 誰 に も 分から ない

そして それ は また 次に 伝わり ―

その 中 の 誰 か が ―

いつか 世界 の 中心 に たどり着く かも しれ ない

( 透 子 ) おじさん は ? ( 誠一 ) うん ?

( 透 子 ) おじさん の 次 に は 誰 か が 続く と 信じ てる の ?

さあ ね

本当 は 小説 の ほう を ―

読 ん で もらい たかった ん だ が ね 私 は

( 透 子 ) おじさん 名前 は 何て いう の ?

霧 間 ( き り ま ) 誠一 だ 君 は ?

水 乃 星 ( みな ほし ) 透 子

( 誠一 の うめき声 )

( 誠一 の うめき声 )

う っ あ あっ …

( ドア の 開く 音 )

( 凪 ) ただいま !

( 誠一 ) やめ とけ

娘 まで 変死 する と 大 事件 に なる ぞ いい の か ?

( 足音 )

( モ ・ マーダー ) お前 自分 が 殺さ れる こと を 知って い た の か ?

( 足音 )

今日 は 早退 し ちゃ って さ

えっ ?

ハッ … オヤジ !

あっ

凪 普通 と いう こと を どう 思う ?

( 凪 ) えっ …

あっ …

( モ ・ マーダー ) 普通 … か

( ピジョン ) 何 か 言った ? ( モ ・ マーダー ) いえ

むごい もの だ な と

( ピジョン ) あんた に とって は 普通 でしょ ?

殺人 機械 の あんた に は さ

( キョウ ) あなた の 中 に 1 匹 の 虫 が い る

その 虫 は 次第に 大きく なって いく

あなた が 忘れよ う と する こと を 食べ ながら

その 虫 は いずれ あなた の 運命 を 決定 する

そして 恐らく あなた は その ため に 死ぬ

( ピジョン ) それ で 見当 は つい た の ? 同じ 殺人 鬼 と し て

( モ ・ マーダー ) いえ 何 と も

そう … なら それ が 今度 の あんた の 仕事

なぜ 犯人 が こんな 殺し 方 を し た か を 突き止め ―

場合 に よって は 始末 する

( モ ・ マーダー ) 分かり まし た で は 早速 …

( ピジョン ) どこ から 調べる の ?

( モ ・ マーダー ) まず は 殺害 現場 に 行って み ます

どの よう に 殺さ れ た の か また 目的 は 何 か …

そんな もの 警察 が とっくに やって る わ よ

( モ ・ マーダー ) 警察 で は 気 が つか ない 共通 する 何 か が あり ます

この 犯人 は 明らか に 目的 を 持って 行動 し て い ます から

さすが 同類 ね 気持ち 悪い

ピジョン さん … で し た っけ ?

君 は 少し 感情 を 表 に 出し すぎ です よ

殺人 鬼 に そんな こと 言わ れる 筋合い ない わ

( モ ・ マーダー ) ここ は 人目 に つき やすい

それ に 悲鳴 も すぐ に 届く

つまり 声 を 上げ られる こと も なく ―

一瞬 で 目的 を 達成 する 力 が あった と いう こと

に し て も 犯行 が 稚拙 すぎる 慎重 さ や 計算 が まるで ない

見つから なかった の は たまたま だ ろ う が ―

これ じゃ まるで …

( 凪 ) 肉食 動物 の 狩猟 みたい … か ?

き … 君 は …

( 凪 ) おじさん なんで こんな とこ 調べ て ん の ?

新聞 記者 ?

別に 調べ て な ん か …

( 凪 ) フフッ

調べ て ない ん だったら 一体 何 だって いう ん だ よ

うん ?

現場 を タカ み たい な 目 で にらみつけ たり ―

周辺 の 建物 から の 視 認 の 有無 を 確認 し たり

ずっと 見 て た の かい ?

( 凪 ) 見 られ ちゃ まずい 人 ?

調べ て いる と し て 君 と 何 か 関係 が あり ます か ?

怒る な よ 少し 気 に なった だけ だ よ

君 の 顔 見 た こ と あり ます よ

“ 死 ん だ 人気 作家 の 一 人 娘 ” って 週刊 誌 か 何 か で

へえ

( モ ・ マーダー ) 確か に 調べ て い まし た

何と いう か ―

自分 が この 事件 の こと を 理解 できる よう な 気 が し まし て ね

平凡 な サラリーマン が ?

( モ ・ マーダー ) 自分 でも 気味 が 悪い ん です が ―

なぜ か この 事件 の 犯人 と 自分 に 共通 する もの が ある よう な 気 が し て

君 は なぜ この 事件 を ?

( 凪 ) 暇 だ から さ ( モ ・ マーダー ) 暇 って …

( 凪 ) なあ 佐々木 ( さ さき ) さん 一緒に 調べ ない か ? この 事件

( モ ・ マーダー ) えっ ?

( 凪 ) 俺 に は カネ が ある あんた は 犯人 の 気持ち が 分かる

いい コンビ だ と 思う けど な

( 真希子 ( まきこ ) ) 例 の システム と やら が 動 い て い た の は 分かって い た けど …

( 真希子 ) ただ どう いう つもり ? 凪 ちゃん

私 に 味わって もらい たい の かしら ?

確か に すてき な 味 が し そう ね フフッ

( モ ・ マーダー ) 先ほど と は 打って変わって いかにも な 場所 です ね

( 凪 ) どう いう こと だ ?

何 です ?

( 凪 ) なあ 佐々木 さん

あんた 犯人 の 心理 が 想像 できる ん だ ろ ?

何 か 感じ ない か ?

( モ ・ マーダー ) そう 言わ れ まし て も …

( 凪 ) 人目 に つき やすい さっき の 場所 と ―

やる こと が まったく 一緒 な の は なんで だ ?

( モ ・ マーダー ) 人 に 見 られよ う が どう しよ う が 関係なかった

… と いう こと です か ね

( 凪 ) 他人 の 目 なんか どう で も いい と 思って いる って こと か

あんた だったら どう する ?

人 の 頭蓋 骨 の 中身 を 吸い出す 動機 が あった と し て ―

人目 に つく こと を 重視 し ない で や れる か ?

私 だったら 死体 を 隠し て から やり ます

やはり 人目 は 怖い です から

怖い か …

犯人 は 怖 がって い なかった と いう こと な の か な

( モ ・ マーダー ) 霧 間 さん も そう いう の な さ そう です ね

無神経 って 言い たい の か ?

怖い もの 知ら ず … です よ

怖い もの 知ら ず ね

怖い もの … 怖 がる …

( モ ・ マーダー ) これ は 無理 です ね 入れ ませ ん よ

( 凪 ) 佐々木 さん ナンパ し た こ と ある ?

( モ ・ マーダー ) えっ ? ( 凪 ) ナンパ だ よ ナンパ

( モ ・ マーダー ) い … いや ない です けど

じゃ 初 体験 だ な

( モ ・ マーダー ) あの 君 …

( 里香 ( りか ) ) な … 何 です か ?

いや その …

もし かして 君 は ―

被害 者 と 何 か 関係 が ある ん じゃ ない か と 思って

ああ いや 私 は 別 に その … 怪しい 者 じゃ なく て

( 里香 ) あっ

俺 たち は この 事件 の 調査 を し て いる ん だ

少し 話 を 聞い て も いい かな ?

( 里香 ) 保険 の 調査 員 ?

彼女 こう 見え て 26 歳 な ん です よ

なあ 里香 さん なんで 逃げ た ん だ ?

まあ ご 友人 なら マスコミ も かぎ 回って ます し

お 2 人 は 何 の 調査 を ?

( モ ・ マーダー ) あっ ああ えー と です ね

この 事件 が 通り 魔 的 な 犯行 か ―

いわゆる 怨恨 ( えんこ ん ) や その たぐい の 場合 か で …

怨恨 なんて 静枝 ( しずえ ) は …

( 凪 ) 静枝 さん って どう いう 人 だった ?

怨恨 の 線 は ない ん だ な ?

はい

人 の 恨み を 買ったり する 子 じゃ あり ませ ん で し た

本当 です

明るい 人 だった ん です か ?

( 里香 ) ええ 明るく て 芯 の 強い 人 で し た

芯 が 強い ?

気持ち が まっすぐ と いう か 勝ち気 で 物おじ し ない と いう か

人 け の ない 夜道 と か も まったく 気 に し ない タイプ な ん です

だから あんな 事件 に …

霧 間 さん と 似 た タイプ です ね

俺 に も 怖い もの ぐらい は ある さ

でも 静枝 さん は 違った ん だ ろ ?

え … ええ たぶん

私 が 人一倍 怖がり な だけ な の かも しれ ませ ん が

( 凪 ) そう か

( 里香 ) 私 は 子供 の ころ から 怖がり でし た から

あっ

( 凪 ) なんで 恐怖 なんて もの が ある の か …

えっ …

( モ ・ マーダー ) どう し まし た ?

さっき 会った 人 も 同じ よう な こと を …

どう いう こと だ ?

( 真希子 ) さぞ 怖かった でしょ う ね

うん ?

なんで 恐怖 なんて もの が ある の かしら

恐怖 さえ なけ れ ば ―

彼女 は きっと 笑顔 の まま で い られ た でしょ う に

( 里香 ) すごく 気味 が 悪く って ―

それ で 2 人 に 話しかけ られ た とき も つい …

( 凪 ) そう か 分かった

どう か さ れ まし た ?

( 凪 ) 悪い 勘定 置 い て く から

( モ ・ マーダー ) 待って ください よ 一体 どう し た って いう ん です か ?

( 凪 ) あんた の 疑い は 晴れ た よ 佐々木 さん

( モ ・ マーダー ) えっ … ( 凪 ) 悪い な

俺 は あんた も 疑って い た で も それ は ケリ が つい た

だから もう さよなら だ

なぜ 私 の 疑い が 晴れ た ん です か ? 私 は …

( 凪 ) 気 の 迷い だ よ 佐々木 さん

あんた の 中 の 虫 が ちょっと 騒 い で いる よう な もの だ

あんた は ホント は 優しい 人間 だ

自分 から 進んで 人殺し なんか し ない

( モ ・ マーダー ) 会った ばかり で なぜ 君 は そこ まで …

勘 だ

ただ さっき 里香 さん に 声 を かけろ と 俺 が 言った とき ―

あんた は 素直 に 戸惑った

そこ に ウソ は なかった

それ で 十 分 だ ろ ? じゃあ な

君 は … 君 は 犯人 が 分かった の か ?

( 真希子 ) ヒント は あげ た あ と は 待つ だけ

来 て くれる わ よ ね 凪 ちゃん

たぐい まれ なる 正義 感 を 持つ あなた なら きっと …

そして 証明 し て ちょうだい

その 内 に 何もかも 焼き 尽くす よう な ―

炎 の よう な 強 さ を 秘め て いる こと を

♪ ~

~ ♪


( 鳥 の さえずり )

( 誠一 ( せい いち ) ) ハァ …

( 透 子 ( すいこ ) ) おじさん ( 誠一 ) ん っ

何 だい ?

( 透 子 ) おじさん もう すぐ 死ぬ わ

あっ …

( 誠一 ) 知って る

♪ ~

~ ♪

( キョウ ) “ 前略 初めて お 便り し ます ”

“ 先生 の ご 本 を 愛読 さ せ て いた だい て いる 者 です ”

“ 実は 先生 に 知って いただき たい こと が あり ― ”

“ 筆 を 執り まし た ”

“ 私 は もう すぐ 死ぬ でしょ う ”

“ 殺さ れる の です ”

“ 私 に は 生まれつき 奇妙 な 才能 が あり まし た ”

“ それ は この 世界 に 相 いれ ぬ もの で ― ”

“ 知ら れ れ ば 恐らく 平穏 な 生活 を 望 め なく なる … ”

“ そんな たぐい の もの で し た ”

“ しかし 私 は 先生 の ご 本 に 出会って しまい まし た ”

( 誠一 ) “ 君 の 孤独 は 君 の 価値 で も ある ”

“ 君 が 独りぼっち で あれ ば ある ほど ― ”

“ 君 は 多く の 人 と つながる 才能 を 持って いる ”

( キョウ ) あっ …

( キョウ ) “ 私 は それ まで ひた隠し に し て い た 才能 を ― ”

“ 少しずつ 世 に 現 そ う と 考え まし た ”

“ しかし 世界 は 私 を 異 分子 と し て 排除 する よう です ”

( 投かん する 音 )

( キョウ ) “ 私 の 周り で 最近 妙 な 連中 を 見かけ ます ”

“ きっと 監視 者 から の 刺客 でしょ う ”

“ 予想 し て た こと です が ― ”

“ 私 は 現在 の 社会 の 敵 に なって しまい まし た ”

“ それ で 最後 に お 礼 を 言 お う と 思った の です ”

社会 の 敵 …

( 携帯 電話 の 呼び出し 音 )

( 誠一 ) 弦 ( げん ) 今日 暇 かい ?

( 弦 ) まあ な 何 だ ? また 何 か の 調査 か ?

ああ それ が 少々 特殊 な ん だ が …

( 弦 ) 誠一 結論 から 言って こいつ は 本当 に 死 ん で いる

あっ …

( 弦 ) 死 ん だ の は 1 か月 前

この 手紙 の 消印 の その 翌日 だ

( 誠一 ) 翌日 ? ( 弦 ) ああ しかも ―

手紙 を 出す 日 の 3 日 前 から 行方 不明 に なって いる

行方 不明 …

彼 は やっぱり 何 か を し て い た の か ?

それ な ん だ が …

( 誠一 ) どう し た ? ( 弦 ) あっ いや

別に 何でもない こと な の かも しれ ん が …

( 誠一 ) 何 だ よ もったい つけ て

周り の 友達 の 成績 を 上げ ち まった ん だ

ん っ …

( 弦 ) それ も 別 に 勉強 を 教え た と か そう いう ん じゃ ない

ひと言 ふた 言 アドバイス を もらった と か ―

頭 を なで て もらった と か それ だけ だって 言う ん だ

学校 だけ じゃ ない

バンドマン に は 個性 的 な 曲 を 作 れる よう に して やったり と か ―

そう いう 話 が いっぱい ある ん だ よ

それ って つまり ―

例えば 僕 だったら 本業 の 小説 が うまく なる と か

そう いう こと だ

要 は 本人 が 伸び悩 ん で い た こと を 何 つう か ―

“ 突破 ” さ せ て やる 才能 ? そんな の が あった って 言う ん だ

信じ られ ない な

まるで 彼 が 奇跡 を 起こせ る みたい じゃ ない か

( 弦 ) “ みたい ” って いう か …

感触 だ が こいつ は 本物 だ

死因 は 何 だった ん だ ?

( 弦 ) 階段 から 足 を 滑ら せ て 頭 を 打った そう だ

目撃 者 も い ない

( 誠一 ) 行方 不明 の 果て に 階段 で 転 ん で 死 ん だ …

と いう こと か

( 弦 ) 騒ぎ に なり そう な もん だ ろ ?

だが 何 の 問題 も 残って い ない ん だ

家族 は すぐ 引っ越し ち まって 消息 不明 だ し な

( 誠一 ) ハァ … 痕跡 が 何も ない の か

ああ それ が 問題 だ

なあ 誠一 こいつ は ヤバ い こと だ ぞ

下手 に 首 突っ込む と ただ じゃ 済ま ない かも しれ ん

( 誠一 ) 奇跡 を 起こす 少年 が 社会 の 敵 か …

あっ

( キーボード を 打つ 音 )

( マウス の 操作 音 )

( 誠一 ) どう なって いる ん だ これ は …

( ふすま の 開く 音 ) ( 凪 ( なぎ ) ) オヤジ どう かし た の ?

( 誠一 ) い … いや あ 別に 何でも

( 誠一 ) 何 だって ?

( 凪 ) だ から 母 さん が 会い たい って さ

( 誠一 ) なんで ? ( 凪 ) さあ な

再婚 が 本決まり に なった から その 前 に 一 度 って

し … しかし …

( 凪 ) 会い たく ない ? なら そう 伝える けど

ん っ …

い … いや あ 分かった 承知 し た って 言 っと い て くれ

どう し た ?

別に 何でもない

何 だ 気 に なる な

( 凪 ) 母 さん の 再婚 相手 って さ 金持ち な ん だ よ ね

それ が ?

だから 子供 が 1 人 や 2 人 増え て も 何て こと ない ん だ って

あっ

お前 は どう 思って る ん だ ?

( 凪 の 吹き出す 声 )

( 凪 ) アハハッ そんな 泣き そう な 顔 す ん な よ

一緒に い て あげる から

お前 から かった の か ?

そりゃ もう 思いっきり な

まったく 俺 より しっかり し てる な お前

俺 が 小学生 の ころ から する と 考え られ ない よ

そりゃ そう だ よ

あと の 時代 に 生まれ た 俺 たち の ほう が ―

オヤジ 世代 より 賢く なる に 決まって る だ ろ

( 誠一 ) そう いう もの か ? ( 凪 ) 進化 って やつ だ よ 進化 !

進化 か よく 言った もん だ

まっ “ 子供 は 人類 の 父 で ある ” なんて 言葉 が …

ハッ

( 誠一 ) 進化 … “ 社会 の 敵 ” と は そう いう こと か

( 弦 ) 何 つう か ―

“ 突破 ” さ せ て やる 才能 ? そんな の が あった って 言う ん だ

現在 社会 が 対抗 し て いる

これ は 生存 競争 だ

“ 監視 者 ” と や ら が 私 に たどり着く の も 時間 の 問題 だ な

( 透 子 ) おじさん もう すぐ 死ぬ わ

( 誠一 ) 知って る

( 透 子 ) 知って る のに 平気 な の ?

( 誠一 ) どう に も なら ない こと は ある もの さ

( 透 子 ) ここ で 何 を 見 て い た の ?

( 誠一 ) 鳥 だ よ ( 透 子 ) 鳥 ?

鳥 は なんで 空 を 飛 ん で いる の か 知って いる かな ?

( 透 子 ) 翼 が ある から でしょ ?

( 誠一 ) 他 に 飛 ん で いる もの が 少ない から だ よ

鳥 ほど 空 を 自由 に 飛 べ る 生き物 は い ない

だから 飛ぶ ん だ

( 透 子 ) どう いう こと ?

他 に 争う もの が い なけ れ ば 生き て い ける

鳥 は ずっと 昔 から そう やって 生き延び て き た ん だ

でも 飛 ん で いる 鳥 だって 空 から 落ちる こと が ある わ

( 誠一 ) 4 月 に 雪 が 降る こと だって ある

あっ

あらゆる 危険 や 意外 性 は 全て 平等 に ある

問題 は その 中 で どう 生き抜く か だ

( 透 子 ) 人間 も ?

( 誠一 ) 人間 も それ 以外 の 者 も … だ

それ まで の 人間 と は 少し 違う 者 たち に も ―

やはり そう いう 戦い は 待って いる

どう 対処 する か は それぞれ だ が ね

( 透 子 ) おじさん って 偉い 人 な の ?

ああ し が ない 物書き だ が 実は すごい 大物 さ

社会 の 敵 ナンバーワン だ よ

敵 ?

今 の 世界 に とって は 新し すぎ て 敵 に しか な れ ない 者 たち が ―

なぜ か みんな 私 の 書 い た 本 に 感動 し て くれる

いわば 彼ら の 旗頭 の よう な 存在 だ

( 透 子 ) へえ

と いって も 私 に できる こと は 彼ら の 背中 を 押す こと だけ だ が ね

私 は そこ まで 言葉 の 力 を 信じ て い ない

命じる こと も 止める こと も でき ない

( 足音 )

( 座る 音 ) あっ

でも おじさん は 死ぬ わ

ハァ … らしい な

結局 思う よう に は いか ない 途中 で 失敗 し て しまう の よ

( 誠一 ) それ が 失敗 だ と 誰 が 決める ?

うん ?

君 は 人 の 死 が 見える ん だ ね

ええ

その 奇妙 な 才能 は 呪わ れ た もの だ と 思う かい ?

分から ない わ

ああ そんな こと は 誰 に も 分から ない ん だ

もし 君 が これ から 何 か を し た と し て ―

それ が 途中 で 終わった と し て も ―

それ が 失敗 か どう か は 誰 に も 決め られ ない

それ が たとえ 悪い こと に しか 見え ない こと でも ―

君 が 何 か を しよ う と し た 意思 や 真剣 な 気持ち …

そう いう もの は 必ず 他 の 者 たち の 中 に 残る

君 の 次 に 誰 か が もっと うまく それ を やって くれる かも しれ ない

誰 が ?

( 誠一 ) 君 の 敵 だった 者 かも しれ ない し ―

ただ の 通りすがり の 人 かも しれ ない

それ は 誰 に も 分から ない

そして それ は また 次に 伝わり ―

その 中 の 誰 か が ―

いつか 世界 の 中心 に たどり着く かも しれ ない

( 透 子 ) おじさん は ? ( 誠一 ) うん ?

( 透 子 ) おじさん の 次 に は 誰 か が 続く と 信じ てる の ?

さあ ね

本当 は 小説 の ほう を ―

読 ん で もらい たかった ん だ が ね 私 は

( 透 子 ) おじさん 名前 は 何て いう の ?

霧 間 ( き り ま ) 誠一 だ 君 は ?

水 乃 星 ( みな ほし ) 透 子

( 誠一 の うめき声 )

( 誠一 の うめき声 )

う っ あ あっ …

( ドア の 開く 音 )

( 凪 ) ただいま !

( 誠一 ) やめ とけ

娘 まで 変死 する と 大 事件 に なる ぞ いい の か ?

( 足音 )

( モ ・ マーダー ) お前 自分 が 殺さ れる こと を 知って い た の か ?

( 足音 )

今日 は 早退 し ちゃ って さ

えっ ?

ハッ … オヤジ !

あっ

凪 普通 と いう こと を どう 思う ?

( 凪 ) えっ …

あっ …

( モ ・ マーダー ) 普通 … か

( ピジョン ) 何 か 言った ? ( モ ・ マーダー ) いえ

むごい もの だ な と

( ピジョン ) あんた に とって は 普通 でしょ ?

殺人 機械 の あんた に は さ

( キョウ ) あなた の 中 に 1 匹 の 虫 が い る

その 虫 は 次第に 大きく なって いく

あなた が 忘れよ う と する こと を 食べ ながら

その 虫 は いずれ あなた の 運命 を 決定 する

そして 恐らく あなた は その ため に 死ぬ

( ピジョン ) それ で 見当 は つい た の ? 同じ 殺人 鬼 と し て

( モ ・ マーダー ) いえ 何 と も

そう … なら それ が 今度 の あんた の 仕事

なぜ 犯人 が こんな 殺し 方 を し た か を 突き止め ―

場合 に よって は 始末 する

( モ ・ マーダー ) 分かり まし た で は 早速 …

( ピジョン ) どこ から 調べる の ?

( モ ・ マーダー ) まず は 殺害 現場 に 行って み ます

どの よう に 殺さ れ た の か また 目的 は 何 か …

そんな もの 警察 が とっくに やって る わ よ

( モ ・ マーダー ) 警察 で は 気 が つか ない 共通 する 何 か が あり ます

この 犯人 は 明らか に 目的 を 持って 行動 し て い ます から

さすが 同類 ね 気持ち 悪い

ピジョン さん … で し た っけ ?

君 は 少し 感情 を 表 に 出し すぎ です よ

殺人 鬼 に そんな こと 言わ れる 筋合い ない わ

( モ ・ マーダー ) ここ は 人目 に つき やすい

それ に 悲鳴 も すぐ に 届く

つまり 声 を 上げ られる こと も なく ―

一瞬 で 目的 を 達成 する 力 が あった と いう こと

に し て も 犯行 が 稚拙 すぎる 慎重 さ や 計算 が まるで ない

見つから なかった の は たまたま だ ろ う が ―

これ じゃ まるで …

( 凪 ) 肉食 動物 の 狩猟 みたい … か ?

き … 君 は …

( 凪 ) おじさん なんで こんな とこ 調べ て ん の ?

新聞 記者 ?

別に 調べ て な ん か …

( 凪 ) フフッ

調べ て ない ん だったら 一体 何 だって いう ん だ よ

うん ?

現場 を タカ み たい な 目 で にらみつけ たり ―

周辺 の 建物 から の 視 認 の 有無 を 確認 し たり

ずっと 見 て た の かい ?

( 凪 ) 見 られ ちゃ まずい 人 ?

調べ て いる と し て 君 と 何 か 関係 が あり ます か ?

怒る な よ 少し 気 に なった だけ だ よ

君 の 顔 見 た こ と あり ます よ

“ 死 ん だ 人気 作家 の 一 人 娘 ” って 週刊 誌 か 何 か で

へえ

( モ ・ マーダー ) 確か に 調べ て い まし た

何と いう か ―

自分 が この 事件 の こと を 理解 できる よう な 気 が し まし て ね

平凡 な サラリーマン が ?

( モ ・ マーダー ) 自分 でも 気味 が 悪い ん です が ―

なぜ か この 事件 の 犯人 と 自分 に 共通 する もの が ある よう な 気 が し て

君 は なぜ この 事件 を ?

( 凪 ) 暇 だ から さ ( モ ・ マーダー ) 暇 って …

( 凪 ) なあ 佐々木 ( さ さき ) さん 一緒に 調べ ない か ? この 事件

( モ ・ マーダー ) えっ ?

( 凪 ) 俺 に は カネ が ある あんた は 犯人 の 気持ち が 分かる

いい コンビ だ と 思う けど な

( 真希子 ( まきこ ) ) 例 の システム と やら が 動 い て い た の は 分かって い た けど …

( 真希子 ) ただ どう いう つもり ? 凪 ちゃん

私 に 味わって もらい たい の かしら ?

確か に すてき な 味 が し そう ね フフッ

( モ ・ マーダー ) 先ほど と は 打って変わって いかにも な 場所 です ね

( 凪 ) どう いう こと だ ?

何 です ?

( 凪 ) なあ 佐々木 さん

あんた 犯人 の 心理 が 想像 できる ん だ ろ ?

何 か 感じ ない か ?

( モ ・ マーダー ) そう 言わ れ まし て も …

( 凪 ) 人目 に つき やすい さっき の 場所 と ―

やる こと が まったく 一緒 な の は なんで だ ?

( モ ・ マーダー ) 人 に 見 られよ う が どう しよ う が 関係なかった

… と いう こと です か ね

( 凪 ) 他人 の 目 なんか どう で も いい と 思って いる って こと か

あんた だったら どう する ?

人 の 頭蓋 骨 の 中身 を 吸い出す 動機 が あった と し て ―

人目 に つく こと を 重視 し ない で や れる か ?

私 だったら 死体 を 隠し て から やり ます

やはり 人目 は 怖い です から

怖い か …

犯人 は 怖 がって い なかった と いう こと な の か な

( モ ・ マーダー ) 霧 間 さん も そう いう の な さ そう です ね

無神経 って 言い たい の か ?

怖い もの 知ら ず … です よ

怖い もの 知ら ず ね

怖い もの … 怖 がる …

( モ ・ マーダー ) これ は 無理 です ね 入れ ませ ん よ

( 凪 ) 佐々木 さん ナンパ し た こ と ある ?

( モ ・ マーダー ) えっ ? ( 凪 ) ナンパ だ よ ナンパ

( モ ・ マーダー ) い … いや ない です けど

じゃ 初 体験 だ な

( モ ・ マーダー ) あの 君 …

( 里香 ( りか ) ) な … 何 です か ?

いや その …

もし かして 君 は ―

被害 者 と 何 か 関係 が ある ん じゃ ない か と 思って

ああ いや 私 は 別 に その … 怪しい 者 じゃ なく て

( 里香 ) あっ

俺 たち は この 事件 の 調査 を し て いる ん だ

少し 話 を 聞い て も いい かな ?

( 里香 ) 保険 の 調査 員 ?

彼女 こう 見え て 26 歳 な ん です よ

なあ 里香 さん なんで 逃げ た ん だ ?

まあ ご 友人 なら マスコミ も かぎ 回って ます し

お 2 人 は 何 の 調査 を ?

( モ ・ マーダー ) あっ ああ えー と です ね

この 事件 が 通り 魔 的 な 犯行 か ―

いわゆる 怨恨 ( えんこ ん ) や その たぐい の 場合 か で …

怨恨 なんて 静枝 ( しずえ ) は …

( 凪 ) 静枝 さん って どう いう 人 だった ?

怨恨 の 線 は ない ん だ な ?

はい

人 の 恨み を 買ったり する 子 じゃ あり ませ ん で し た

本当 です

明るい 人 だった ん です か ?

( 里香 ) ええ 明るく て 芯 の 強い 人 で し た

芯 が 強い ?

気持ち が まっすぐ と いう か 勝ち気 で 物おじ し ない と いう か

人 け の ない 夜道 と か も まったく 気 に し ない タイプ な ん です

だから あんな 事件 に …

霧 間 さん と 似 た タイプ です ね

俺 に も 怖い もの ぐらい は ある さ

でも 静枝 さん は 違った ん だ ろ ?

え … ええ たぶん

私 が 人一倍 怖がり な だけ な の かも しれ ませ ん が

( 凪 ) そう か

( 里香 ) 私 は 子供 の ころ から 怖がり でし た から

あっ

( 凪 ) なんで 恐怖 なんて もの が ある の か …

えっ …

( モ ・ マーダー ) どう し まし た ?

さっき 会った 人 も 同じ よう な こと を …

どう いう こと だ ?

( 真希子 ) さぞ 怖かった でしょ う ね

うん ?

なんで 恐怖 なんて もの が ある の かしら

恐怖 さえ なけ れ ば ―

彼女 は きっと 笑顔 の まま で い られ た でしょ う に

( 里香 ) すごく 気味 が 悪く って ―

それ で 2 人 に 話しかけ られ た とき も つい …

( 凪 ) そう か 分かった

どう か さ れ まし た ?

( 凪 ) 悪い 勘定 置 い て く から

( モ ・ マーダー ) 待って ください よ 一体 どう し た って いう ん です か ?

( 凪 ) あんた の 疑い は 晴れ た よ 佐々木 さん

( モ ・ マーダー ) えっ … ( 凪 ) 悪い な

俺 は あんた も 疑って い た で も それ は ケリ が つい た

だから もう さよなら だ

なぜ 私 の 疑い が 晴れ た ん です か ? 私 は …

( 凪 ) 気 の 迷い だ よ 佐々木 さん

あんた の 中 の 虫 が ちょっと 騒 い で いる よう な もの だ

あんた は ホント は 優しい 人間 だ

自分 から 進んで 人殺し なんか し ない

( モ ・ マーダー ) 会った ばかり で なぜ 君 は そこ まで …

勘 だ

ただ さっき 里香 さん に 声 を かけろ と 俺 が 言った とき ―

あんた は 素直 に 戸惑った

そこ に ウソ は なかった

それ で 十 分 だ ろ ? じゃあ な

君 は … 君 は 犯人 が 分かった の か ?

( 真希子 ) ヒント は あげ た あ と は 待つ だけ

来 て くれる わ よ ね 凪 ちゃん

たぐい まれ なる 正義 感 を 持つ あなた なら きっと …

そして 証明 し て ちょうだい

その 内 に 何もかも 焼き 尽くす よう な ―

炎 の よう な 強 さ を 秘め て いる こと を

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