パート5
ドクタ ・ ウインタース の 鎮静 剤 と みずから の 疲労 が 、 午後 の 数 時間 、 メル を 眠り に つか せた 。 しかし 夕方 まで に は 目 が 覚め 、 今晩 は 眠れ そうに ない な 、 と 思った 。 なまなましい アリス の 記憶 が 詰まった 家 で 、 そんな 夜 を 過ごす の は 耐えられ なかった 。 暗く なり はじめた ころ 、 彼 は 歩いて 街 に 出た 。 歩く の は 楽 だった 。 もう 歩く 人 など ほとんど だれ も い なかった のだ 。 猛然 と 走る 私用 車 や 商用 車 が 頭 の 上 に ひしめき 、 地面 の 下 で うなり を あげた 。 彼 は 大 都市 の 隅っこ を 静かに 歩く 孤独な 時代 錯誤 だった 。 彼 は 都会 に うんざり して いた 。 都会 に 背 を むけ 、 永遠に お さらば し たかった 。 アリス も 同じ ように 感じて いた が 、 しかし ほか に 行く 場所 が なかった 。 彼 は ニュース 記事 を 書く しか 能 が ない し 、 ニュース は 大きな 、 みにくい 都会 で しか 起き ない のだ 。 彼 や アリス が 若い ころ 慣れ 親しんだ 農業 地帯 は 、 街 や 都会 に 住む すれっからし ども の 興味 を 引く ような もの を 生み出し は し ない 。 生み出す の は 食料 ばかり だ 。 しかも いまや その 多く が タンパク 質 や 炭水化物 を 合成 する 巨大 工場 で つくられて いる 。 脂肪 も 合成 できる ように なったら 、 農夫 に もう 用 は ない 。
彼 は いま なら 都会 を 抜け出せる ので は ない か と 思った 。 アリス が い なく なって 独り 身 に なった し 、 彼 に とって 必要な もの など ほとんど なかった 。 なぜ か わから ない が 、 彼 は 急に また ふるさと が 見 たくて たまらなく なった 。 それ に 彼女 の 家族 に 連絡 しなければ なら ない 。