Section 014 - Kokoro - Soseki Project
Section 014 - Kokoro - Soseki Project
Sekcja 014 - Projekt Kokoro - Soseki
「 私 は 淋しい 人間 です 」 と 先生 が いった 。
わたくし||さびしい|にんげん|||せんせい||
「 だから あなた の 来て 下さる 事 を 喜んで います 。
|||きて|くださる|こと||よろこんで|
だから なぜ そう たびたび 来る の か と いって 聞いた のです 」
||||くる|||||きいた|の です
That's why I asked him why he came so often. "
「 そりゃ また なぜ です 」
私 が こう 聞き返した 時 、 先生 は 何とも 答え なかった 。
わたくし|||ききかえした|じ|せんせい||なんとも|こたえ|
When I asked him back, the teacher didn't answer at all.
ただ 私 の 顔 を 見て 「 あなた は 幾 歳 です か 」 と いった 。
|わたくし||かお||みて|||いく|さい||||
この 問答 は 私 に とって すこぶる 不 得 要領 の もの であった が 、 私 は その 時 底 まで 押さ ず に 帰って しまった 。
|もんどう||わたくし||||ふ|とく|ようりょう|||||わたくし|||じ|そこ||おさ|||かえって|
This question and answer was a very unprofitable point for me, but I returned without pushing it to the bottom at that time.
しかも それ から 四 日 と 経た ない うち に また 先生 を 訪問 した 。
|||よっ|ひ||へた|||||せんせい||ほうもん|
Moreover, less than four days later, I visited the teacher again.
先生 は 座敷 へ 出る や 否 や 笑い 出した 。
せんせい||ざしき||でる||いな||わらい|だした
The teacher started laughing as soon as he went to the tatami room.
「 また 来ました ね 」 と いった 。
|きました|||
「 ええ 来ました 」 と いって 自分 も 笑った 。
|きました|||じぶん||わらった
I laughed, saying, "Yes, I came."
私 は 外 の 人 から こう いわ れたら きっと 癪 に 触ったろう と 思う 。
わたくし||がい||じん||||||しゃく||さわったろう||おもう
I'm sure I would have touched the tantrum if someone outside told me this.
しかし 先生 に こう いわ れた 時 は 、 まるで 反対であった 。
|せんせい|||||じ|||はんたいであった
But when the teacher said this, it was just the opposite.
癪 に 触ら ない ばかりで なく かえって 愉快だった 。
しゃく||さわら|||||ゆかいだった
Not only did I not touch the tantrum, but it was rather fun.
「 私 は 淋しい 人間 です 」 と 先生 は その 晩 また この 間 の 言葉 を 繰り返した 。
わたくし||さびしい|にんげん|||せんせい|||ばん|||あいだ||ことば||くりかえした
"I'm a lonely person," said the teacher again that night.
「 私 は 淋しい 人間 です が 、 ことに よる と あなた も 淋しい 人間 じゃ ない です か 。
わたくし||さびしい|にんげん||||||||さびしい|にんげん||||
私 は 淋しくって も 年 を 取って いる から 、 動か ず に いられる が 、 若い あなた は そう は 行か ない のでしょう 。
わたくし||さびしくって||とし||とって|||うごか|||いら れる||わかい|||||いか||
I'm lonely but old, so I can stay still, but young you probably won't.
動ける だけ 動きたい のでしょう 。
うごける||うごきたい|
動いて 何 か に 打つ かりたい のでしょう ……」
うごいて|なん|||うつ||
「 私 は ちっとも 淋しく は ありません 」
わたくし|||さびしく||
"I'm not lonely at all."
「 若い うち ほど 淋しい もの は ありません 。
わかい|||さびしい|||
そんな ら なぜ あなた は そう たびたび 私 の 宅 へ 来る のです か 」
|||||||わたくし||たく||くる|の です|
ここ でも この 間 の 言葉 が また 先生 の 口 から 繰り返さ れた 。
|||あいだ||ことば|||せんせい||くち||くりかえさ|
「 あなた は 私 に 会って も おそらく まだ 淋しい 気 が どこ か で して いる でしょう 。
||わたくし||あって||||さびしい|き|||||||
"You probably still feel lonely when you meet me somewhere.
私 に は あなた の ため に その 淋し さ を 根元 から 引き抜いて 上げる だけ の 力 が ない んだ から 。
わたくし||||||||さびし|||ねもと||ひきぬいて|あげる|||ちから||||
I don't have the power to pull that loneliness out of the roots for you.
あなた は 外 の 方 を 向いて 今に 手 を 広げ なければ なら なく なります 。
||がい||かた||むいて|いまに|て||ひろげ||||
You have to look out and reach out now.
今に 私 の 宅 の 方 へ は 足 が 向か なく なります 」
いまに|わたくし||たく||かた|||あし||むか||
Now I can't go to my house. "
先生 は こう いって 淋しい 笑い 方 を した 。
せんせい||||さびしい|わらい|かた||