Ginga Eiyuu Densetsu ( Legend of the Galactic Heroes ) Episode 82

宇宙 暦 800 年 新 帝国 暦 ２ 年 ５ 月 20 日 うちゅう|こよみ|とし|しん|ていこく|こよみ|とし|つき|ひ

ようやく 睡魔 を 満足 さ せ た ヤン 艦隊 の 幕僚 たち は |すいま||まんぞく|||||かんたい||ばくりょう||

カイザー ･ ラインハルト から の 申し入れ に つい て ||||もうしいれ|||

討議 できる 状態 に なった とうぎ||じょうたい||

最初 に カイザー ･ ラインハルト を 回廊 に 引きずり込む さいしょ|||||かいろう||ひきずりこむ

次に 会談 の テーブル に 引きずり出す つぎに|かいだん||てーぶる||ひきずりだす

これ が 最初 から の 狙い だった わけ だ から ||さいしょ|||ねらい||||

会談 の 申し入れ を 拒む 理由 は ない かいだん||もうしいれ||こばむ|りゆう||

しかし 帝国 軍 が 我々 に 勝ち 得 ない から と いって |ていこく|ぐん||われわれ||かち|とく||||

即 和平 を 求める と も 思え ない そく|わへい||もとめる|||おもえ|

ここ は やはり 罠 で ある 可能 性 も 考える べき だ ろ う |||わな|||かのう|せい||かんがえる||||

講和 を エサ に ヤン 提督 を おびき出し て こうわ||えさ|||ていとく||おびきだし|

謀 殺 する つもり で は ない か ？ はかりごと|ころ||||||

いや その 可能 性 は 薄い と 思う ||かのう|せい||うすい||おもう

ん ？

理由 は カイザー の 人 と なり だ りゆう||||じん|||

あの プライド の 高い 金髪 の 坊や が |ぷらいど||たかい|きんぱつ||ぼうや|

お 得意 の 戦争 で 勝 て ない から と いって |とくい||せんそう||か|||||

謀 殺 と いう 手段 に 訴える と は 想像 し にくい な はかりごと|ころ|||しゅだん||うったえる|||そうぞう|||

カイザー が そう でも その 幕僚 たち の 中 に は |||||ばくりょう|||なか||

いささか 異なる 価値 観 を 持った 連中 も いる でしょ う よ |ことなる|かち|かん||もった|れんちゅう|||||

多量 の 流血 を 見 て し かも 勝ち得 なかった たりょう||りゅうけつ||み||||かちえ|

カイザー の 戦争 の 天才 と し て の 面目 は 失墜 し た はず で ||せんそう||てんさい|||||めんぼく||しっつい||||

忠誠 心 過多 判断 力 過少 の 奴 ら が ちゅうせい|こころ|かた|はんだん|ちから|かしょう||やつ||

何 か 試みる と いう こと も あり 得る と 思い ます が ね なん||こころみる||||||える||おもい|||

いずれ に して も 提督 は 会見 に 出向か れる だ ろ う ||||ていとく||かいけん||でむか||||

その 時 僕 も 同行 できる だ ろ う か |じ|ぼく||どうこう|||||

それにしても 戦い を 好む カイザー が |たたかい||このむ||

なぜ 急に 会見 を 申し込む 気 に なった の だ ろ う |きゅうに|かいけん||もうしこむ|き||||||

ラインハルト が 突然 ヤン と の 会見 を 申し込 ん だ こと は ||とつぜん||||かいけん||もうしこ||||

帝国 軍 の 中 でも 驚き を もって 迎え られ た ていこく|ぐん||なか||おどろき|||むかえ||

再三 に わたり 今回 の 親 征 に 反対 し て い た さいさん|||こんかい||おや|すすむ||はんたい||||

ヒルデ ガルド ･ フォン ･ マリーン ドルフ に し て も

そう し た 事態 を 期待 し て は い た が 予測 し て は い なかった の で ある |||じたい||きたい|||||||よそく||||||||

あれほど 正面 から 軍事 力 を 衝突 さ せ て |しょうめん||ぐんじ|ちから||しょうとつ|||

ヤン を 膝 下 に ねじ伏せる こと に 固執 さ れ た のに ||ひざ|した||ねじふせる|||こしつ||||

まさか 発熱 さ れ た こと に よって |はつねつ||||||

弱気 に なら れ た わけ で も ある まい し よわき||||||||||

キルヒアイス が いさめ に 来 た の だ ||||らい|||

キルヒアイス が 言った の だ ||いった||

｢ もう これ 以上 ヤン ･ ウェン リー と 争う の は ｣ ||いじょう|||||あらそう||

｢ お よし ください ｣ と フッ

あいつ は 死 ん で まで 俺 に 意見 する ||し||||おれ||いけん|

分かった よ キルヒアイス お前 は いつも そう だ わかった|||おまえ||||

俺 より たった ２ ヵ 月 早く 生まれ た だけ な の に おれ||||つき|はやく|うまれ|||||

年上 ぶって いつも 俺 の ケンカ を 止める としうえ|||おれ||けんか||とどめる

今 の 俺 は お前 より 年上 な ん だ ぞ いま||おれ||おまえ||としうえ||||

お前 は 年 を 取ら ない から な おまえ||とし||とら|||

だけど 分かった ﾔﾝ ･ ｳｪﾝﾘ ｰ と 話し合って みよ う |わかった|||||はなしあって||

あくまで 話し合って みる だけ だ |はなしあって|||

決裂 し ない と は 約束 でき ない ぞ けつれつ|||||やくそく|||

結局 誰 に も でき なかった こと を けっきょく|だれ||||||

死者 の 霊 だけ が 可能 に し た の ね ししゃ||れい|||かのう|||||

でも それ で は …

それ でも ビッテンフェルト など は

決裂 と 決まる まで は 手 を 出さ ん だ ろ う が けつれつ||きまる|||て||ださ|||||

ﾌｧ ｰ ﾚﾝﾊｲﾄ と ｼｭﾀｲﾝﾒｯﾂ の 部下 たち の 中 に は ||||||ぶか|||なか||

上官 の 敵 を 討ち た がって いる 者 が 多く て な じょうかん||てき||うち||||もの||おおく||

抑える の に 苦労 を する おさえる|||くろう||

何 も 敵 を 倒す ばかり が 策 で も ない なん||てき||たおす|||さく|||

イゼルローン 回廊 に 封じ込め て しまえ ば いい の だ |かいろう||ふうじこめ||||||

連中 が ﾔﾝ ･ ｳｪﾝﾘ ｰ 一 人 の 才能 と 人望 に よって 統一 さ れ て いる 以上 れんちゅう|||||ひと|じん||さいのう||じんぼう|||とういつ|||||いじょう

そのまま 気長 に 待って |きなが||まって

ヤン が 老い て 死ぬ の を 待つ と いう 方法 すら 取り 得る で は ない か ||おい||しぬ|||まつ|||ほうほう||とり|える||||

だが その 意味 で は 帝国 も 同じ か ||いみ|||ていこく||おなじ|

カイザー が お 倒れ に なれ ば 指導 者 を 失う |||たおれ||||しどう|もの||うしなう

ヤン ･ ウェン リー の 基本 戦略 も そこ に ある わけ だ が ||||きほん|せんりゃく|||||||

その 前 に まさか ご 病気 に なら れる と は な |ぜん||||びょうき||||||

医者 ども は 単なる 過労 だ と 言い立てる が … いしゃ|||たんなる|かろう|||いいたてる|

カイザー は 病 で 倒れる よう な 方 で は ない ||びょう||たおれる|||かた|||

カイザー ･ ラインハルト の 武人 と し て の 矜持 は 信用 し 得る と し て も |||たけと|||||きょうじ||しんよう||える||||

新 帝 国軍 全て が ミッターマイヤー 元帥 の よう に しん|みかど|こくぐん|すべて|||げんすい|||

信義 の 人 と いう わけ で は ある まい しんぎ||じん|||||||

謀 殺 と いう より 戦死 し た 将兵 の 復讐 を 図る 者 の 暴発 が はかりごと|ころ||||せんし|||しょうへい||ふくしゅう||はかる|もの||ぼうはつ|

抑え き れ ない と いう こと も 考え 得る おさえ||||||||かんがえ|える

でし たら まず 僭越 です が |||せんえつ||

僕 が 提督 の 代理 と し て ｶｲｻﾞ ｰ ･ ﾗｲﾝﾊﾙﾄ の 元 へ 赴き ます ぼく||ていとく||だいり||||||||もと||おもむき|

そして 細部 まで 条件 やら 提案 やら を 聞い て き て |さいぶ||じょうけん||ていあん|||ききい|||

改めて 提督 が 会談 の 場 へ いらっしゃ れ ば よろしい でしょ う あらためて|ていとく||かいだん||じょう|||||||

いや それ は ダメ だ ね ユリアン |||だめ|||

対等 の 立場 で 会談 を 求め て き た カイザー に 対し て たいとう||たちば||かいだん||もとめ||||||たいし|

礼 を 失する こと に なる れい||しっする|||

もし それ で カイザー が 感情 を 害し |||||かんじょう||がいし

会談 の 要望 を 捨てる こと に でも なれ ば かいだん||ようぼう||すてる|||||

和平 の 機会 は 永遠 に 失わ れ て しまう かも しれ ない わへい||きかい||えいえん||うしなわ||||||

そして 今 帝国 軍 と 再び 正面 から 戦え ば |いま|ていこく|ぐん||ふたたび|しょうめん||たたかえ|

まず 勝算 は ない |しょうさん||

そう だ な 将兵 の 疲労 も 回復 し て は い ない し |||しょうへい||ひろう||かいふく||||||

第 一 イゼルローン の 生産 規模 で は だい|ひと|||せいさん|きぼ||

補給 物資 を 調える のに 時間 が かかる ほきゅう|ぶっし||ととのえる||じかん||

更に 決定 的 な の は 戦死 者 の 補充 が きか ない って こと だ さらに|けってい|てき||||せんし|もの||ほじゅう||||||

まして 我々 は フィッシャー 中将 を 失った |われわれ|||ちゅうじょう||うしなった

作戦 を 立てる だけ で は 勝 て ない さくせん||たてる||||か||

それ を 完全 に 実行 する 能力 が 艦隊 に なく て は どう しよう も ない ||かんぜん||じっこう||のうりょく||かんたい||||||||

ここ で 会談 の 申し入れ を 拒否 し たら 自殺 行為 だ よ ||かいだん||もうしいれ||きょひ|||じさつ|こうい||

まあ いい だ ろ う カイザー から 会談 を 申し込ま せ た こと は |||||||かいだん||もうしこま||||

我々 の 実質 的 な 勝利 を 意味 する われわれ||じっしつ|てき||しょうり||いみ|

それ に 勇気づけ られ て フェザーン や 旧 同盟 領 で ||ゆうきづけ|||||きゅう|どうめい|りょう|

反 帝国 の ゲリラ 活動 でも 起き て くれ れ ば はん|ていこく||げりら|かつどう||おき||||

我々 の 立場 は 更に 有利 に なる われわれ||たちば||さらに|ゆうり||

過剰 な 期待 は 禁物 だ が な かじょう||きたい||きんもつ|||

さて そこ で ヤン と 同行 する 随員 だ が |||||どうこう||ずいいん||

副 官 で も ある ヤン 夫人 は 当然 同行 する べき ところ だ が ふく|かん|||||ふじん||とうぜん|どうこう|||||

あいにく 風邪 を 引き 込 ん で い て |かぜ||ひき|こみ||||

今日 の 会議 に も 出 られ ない くらい だ から な きょう||かいぎ|||だ||||||

かく いう 俺 も 戦力 の 補充 に 専念 せ ね ば なら ん から ||おれ||せんりょく||ほじゅう||せんねん||||||

今回 は 遠慮 し て おく こんかい||えんりょ|||

万が一 に 備え て やはり 優秀 な 護衛 が 必要 でしょ う な まんがいち||そなえ|||ゆうしゅう||ごえい||ひつよう|||

貴 官 は ダメ だ こんな 時 に とうと|かん||だめ|||じ|

要塞 防御 指揮 官 が 留守 に し て どう する ようさい|ぼうぎょ|しき|かん||るす|||||

あの … 小 官 は ？ |しょう|かん|

お前 さん は ヤン が い ない 間 の 艦隊 を 預かる 責任 が ある だ ろ う おまえ|||||||あいだ||かんたい||あずかる|せきにん|||||

うん うん それ なら 責任 の ない 小 官 が ||||せきにん|||しょう|かん|

間違って も 空 戦 の 機会 は ない と 思う から 中佐 の 出番 は ない よ まちがって||から|いくさ||きかい||||おもう||ちゅうさ||でばん|||

ヒヒヒ …

ここ は やはり 常識 豊か な 者 が … |||じょうしき|ゆたか||もの|

残って お 目 付け 役 を し て いただく と いう こと で のこって||め|つけ|やく||||||||

司令 部 から は 小 官 が 同行 し ま しょ う しれい|ぶ|||しょう|かん||どうこう||||

結局 高級 士官 の 随員 は ３ 名 だけ で あった けっきょく|こうきゅう|しかん||ずいいん||な|||

副 参謀 長 の パトリ チェフ 少将 ふく|さんぼう|ちょう||||しょうしょう

ローゼン リッター の ブルームハルト 中佐 ||||ちゅうさ

かつて ビュコック 元帥 の 副 官 で あった スール 少佐 で ある ||げんすい||ふく|かん||||しょうさ||

ブルームハルト は 護衛 役 ||ごえい|やく

スール は ビュコック じいさん の 代理 と し て 選ば れ た の さ |||||だいり||||えらば||||

パトリ チェフ は ？

あれ は 引き立て 役 それ 以外 に 何 が ある って いう ん だ よ ||ひきたて|やく||いがい||なん|||||||

引き立て 役 なら お前 さん でも よかった じゃ ない か ひきたて|やく||おまえ||||||

ケッ どうせ 俺 は トラブル メーカー です から ね ||おれ||とらぶる|めーかー|||

それにしても 意外 だった の は ﾕﾘｱﾝ を 連れ て いか ない こと だ な |いがい||||||つれ||||||

ユリアン を 連れ て いったら どっち が 随員 だ か ||つれ|||||ずいいん||

分から なく なる から だ ろ う ハハハ … わから|||||||

ユリアン 留守 を 頼む よ |るす||たのむ|

｢ お 任せ ください ｣ と 申し上げ たい ところ です けど |まかせ|||もうしあげ||||

僕 は お供 でき ない の が 残念 です ぼく||おとも|||||ざんねん|

僕 で は お 役 に 立て ませ ん か ？ パトリ チェフ 少将 より ぼく||||やく||たて||||||しょうしょう|

フフッ バカ だ な |ばか||

私 は ずっと お前 を 頼り に し て き た よ わたくし|||おまえ||たより||||||

６ 年 前 お前 が 体 より 大きな トランク を 引きずって とし|ぜん|おまえ||からだ||おおきな|とらんく||ひきずって

私 の 家 に 来 た 時 から ずっと 頼り に し て き た さ わたくし||いえ||らい||じ|||たより||||||

ありがとう ござい ます でも …

私 が 行け ない の だったら 代わり に お前 に 行って もらう よ わたくし||いけ||||かわり||おまえ||おこなって||

私 が いる から 私 は 行く それ だけ の こと さ わたくし||||わたくし||いく|||||

はい とにかく 吉報 を お 待ち し ます お 気 を つけ て ||きっぽう|||まち||||き|||

うん ところ で ユリアン はい ？

正直 な ところ キャゼルヌ の 娘 と しょうじき|||||むすめ|

シェーン コップ の 娘 と どっち が 好み な ん だ ？ |こっぷ||むすめ||||よしみ|||

お前 の 決断 次第 で 私 も 覚悟 を 決め なく ちゃ なら ん から な おまえ||けつだん|しだい||わたくし||かくご||きめ||||||

提督 ！ ヒュー ！ ていとく|

ハハハ …

この 時期 遠く ﾌｪｻﾞ ｰ ﾝ に ある 軍務 尚 書 ｵ ｰ ﾍﾞﾙｼｭﾀｲﾝ 元帥 から |じき|とおく||||||ぐんむ|しよう|しょ||||げんすい|

１ つ の 提案 が ラインハルト の 元 に 具申 さ れ て き た ||ていあん||||もと||ぐしん|||||

それ は 和平 提案 を 装って ||わへい|ていあん||よそおって

ﾔﾝ ･ ｳｪﾝﾘ ｰ を ｲｾﾞﾙﾛ ｰ ﾝ から おびき出す と いう ||||||||おびきだす||

ありがち な 謀略 で あった が ||ぼうりゃく|||

更に 辛辣 だった の は さらに|しんらつ|||

ただ ヤン を 呼びつけ て も 来 ない で あ ろ う から |||よびつけ|||らい||||||

重臣 を 誰 か １ 人 使者 の 名目 で 人質 に 出す と いう 点 で あった じゅうしん||だれ||じん|ししゃ||めいもく||ひとじち||だす|||てん||

油断 し た ヤン が 帝国 軍 の 元 に やって き た ところ を 殺し て ゆだん|||||ていこく|ぐん||もと|||||||ころし|

後 の 憂い を 断つ あと||うれい||たつ

当然 人質 と なった 者 は ヤン の 部下 たち に よって とうぜん|ひとじち|||もの||||ぶか|||

殺害 さ れる で あ ろ う から さつがい|||||||

その 報復 を 名目 と し て 指導 者 なき ヤン 一 党 を 制圧 すれ ば |ほうふく||めいもく||||しどう|もの|||ひと|とう||せいあつ||

全 宇宙 は ロー エン グラム 王朝 の もと に 統一 さ れる ぜん|うちゅう|||えん|ぐらむ|おうちょう||||とういつ||

だが 犠牲 と なる こと を 承知 で |ぎせい|||||しょうち|

人質 に なり に いく 重臣 が いる だ ろ う か ひとじち|||||じゅうしん||||||

使者 と し て 他 に 候補 者 なき 場合 は 臣 が その 任 に 当たり ま しょ う ししゃ||||た||こうほ|もの||ばあい||しん|||にん||あたり|||

だが なぜ か 賞 賛 する 気 に は なれ ん な |||しょう|さん||き|||||

あの オーベル シュタイン と 無理 心中 など と いう ||||むり|しんじゅう|||

死に 方 を さ せ られ た の で は しに|かた||||||||

ヤン ･ ウェン リー も 浮かば れ ん だ ろ う よ ||||うかば||||||

第 一 奴 が 人質 に なった ところ で ヤン が 信用 する もの か だい|ひと|やつ||ひとじち|||||||しんよう|||

いや いっそ 奴 の やり たい よう に さ せ て やれ ば よい の さ ||やつ|||||||||||||

ただし オーベル シュタイン が ヤン の 一 党 に 殺害 さ れ た あと ||||||ひと|とう||さつがい||||

俺 たち が その 復讐 を し て やる 義務 も ない はず だ おれ||||ふくしゅう|||||ぎむ||||

その とおり だ ヤン ･ ウェン リー より も

むしろ あの オーベル シュタイン が い なけ れ ば 宇宙 は 平和 |||||||||うちゅう||へいわ

ロー エン グラム 王朝 も 安泰 |えん|ぐらむ|おうちょう||あんたい

万事 めでたし めでたし と いう もの さ ばんじ||||||

いずれ に せよ この よう な 不名誉 な 提案 を ||||||ふめいよ||ていあん|

陛下 が お 取り上げ に なら なく て よかった と いう もの だ な へいか|||とりあげ||||||||||

うむ

５ 月 25 日 ヤン ･ ウェン リー は つき|ひ||||

カイザー ･ ラインハルト と の ２ 度 目 の 会談 に 応じる ため ||||たび|め||かいだん||おうじる|

イゼルローン 要塞 を 離れる |ようさい||はなれる

ユリ シーズ じゃ ない ん です か ？ ゆり|しーず|||||

戦艦 で 行く の も 剣 呑 だ し せんかん||いく|||けん|どん||

レダ Ⅱ は ２ 年 前 に 査問 会 に 呼びつけ られ た 時 に ||とし|ぜん||さもん|かい||よびつけ|||じ|

乗って いった 船 だ のって||せん|

まあ とにかく あの 時 は 無事 に 帰って こ られ た の だ から |||じ||ぶじ||かえって||||||

縁起 と し て は 悪く ない だ ろ えんぎ|||||わるく|||

なん です か あの 団体 さん は ||||だんたい||

革命 政府 の 代表 団 だ かくめい|せいふ||だいひょう|だん|

政府 と し て は 交渉 の 主導 権 を 握り たい らしい せいふ|||||こうしょう||しゅどう|けん||にぎり||

あきれ た 何 を 勘違い し てる ん だ か ||なん||かんちがい|||||

今回 の 会談 は カイザー ･ ラインハルト が こんかい||かいだん||||

ヤン 提督 に 個人 的 に 申し込 ん だ よう な もの で |ていとく||こじん|てき||もうしこ||||||

革命 政府 なんか カイザー の 眼中 に ない でしょ う に かくめい|せいふ||||がんちゅう|||||

だが な 事 が 政治 的 な 話 に なれ ば ヤン に は 交渉 権限 は ない ||こと||せいじ|てき||はなし|||||||こうしょう|けんげん||

これ は 原則 的 な 事実 だ ||げんそく|てき||じじつ|

それ に 政府 に 断り なく 会談 に 応じ て しまった こと を ||せいふ||ことわり||かいだん||おうじ||||

ﾔﾝ が 気 に 病 ん で い て な なる べく 政府 の 顔 を 立て たい ん だ ろ ||き||びょう||||||||せいふ||かお||たて||||

こちら の 随員 を 最小 限 に し た の も その ため さ ||ずいいん||さいしょう|げん||||||||

やれやれ いつも ながら …

フレデリカ ちょっと 宇宙 一 の 美男 子 に 会って くる よ ||うちゅう|ひと||びなん|こ||あって||

２ 週間 ぐらい で 帰って くる 気 を つけ て 行って らし て ね しゅうかん|||かえって||き||||おこなって|||

あ ちょっと … 髪 が 乱れ てる わ ||かみ||みだれ||

ああ … いい よ そんな こと

ダメ です 宇宙 で ２ 番 目 の 美男 子 に お 会い に なる ん だ から だめ||うちゅう||ばん|め||びなん|こ|||あい|||||

それ じゃ

バイバイ

ねえ ママ |まま

ママ と パパ も あんな こと し た こ と ある ？ まま||ぱぱ||||||||

むろん あり ます と も

今 は し ない の ね ？ いい ？ シャルロット いま|||||||

あなた は １ 年 生 の 時 に 教わった こと を ||とし|せい||じ||おそわった||

４ 年生 に なって も 習 お う と は 思わ ない でしょ ？ ねんせい||||なら|||||おもわ||

それ と 同じ よ ||おなじ|

こう し て ユリアン は ヤン と 別れ た |||||||わかれ|

後日 どれほど ユリアン は 苦悩 し た こと だ ろ う ごじつ||||くのう||||||

ラインハルト と いう 太陽 を 直視 し た ため に |||たいよう||ちょくし||||

他 の 星 の 存在 に 気づか なかった の で ある た||ほし||そんざい||きづか||||

ﾔﾝ の 委託 を 受け て ﾌｪｻﾞ ｰ ﾝ 方面 を 駆け回って い た ﾎﾞﾘｽ ･ ｺ ｰ ﾈﾌ が ||いたく||うけ|||||ほうめん||かけまわって|||||||

ｲｾﾞﾙﾛ ｰ ﾝ と の 交信 可能 宙 域 まで たどり着 い た の は |||||こうしん|かのう|ちゅう|いき||たどりつ||||

ヤン が 要塞 を 出立 し た ３ 日 後 の こと で ある ||ようさい||いでたち|||ひ|あと||||

ヤン は まだ 生き てる か ？ |||いき||

お前 さん の 冗談 が 水準 に 達し て い た こと は 一 度 も ない が おまえ|||じょうだん||すいじゅん||たっし||||||ひと|たび|||

今度 の と き たら 海溝 の 底 に 沈 ん で いる な こんど|||||かいこう||そこ||しず||||

あいにく と 死に 神 は バカンス 中 らしく て ||しに|かみ||ばかんす|なか||

元帥 は のう のう と 生き て いる よ げんすい|||||いき|||

冗談 を 言って いる 場合 じゃ ない ！ じょうだん||いって||ばあい||

精神 病院 を 脱走 し た アンドリュー ･ フォーク が せいしん|びょういん||だっそう||||ふぉーく|

ヤン の 暗殺 を 企て て こっち に 向かった ん だ ||あんさつ||くわだて||||むかった||

何 ！ なん

アンドリュー ･ フォーク の 低 能 め |ふぉーく||てい|のう|

４ 年 前 に アム リッツァ で 2000 万 人 殺し た くせ に まだ 不足 か とし|ぜん|||||よろず|じん|ころし|||||ふそく|

殺し たけ れ ば 自分 を 殺せ それ が 文明 と 環境 の ため だ ころし||||じぶん||ころせ|||ぶんめい||かんきょう|||

奴 に とって は 生涯 かけ た 大事 業 な の だ ろ う さ やつ||||しょうがい|||だいじ|ぎょう||||||

ヤン ･ ウェン リー を 凌 駕 する と いう の は な ||||しの|が||||||

実績 で 及ば なけ れ ば 当 の 競争 相手 を 殺す と いう 境地 に じっせき||およば||||とう||きょうそう|あいて||ころす|||きょうち|

ようやく 達し た わけ だ |たっし|||

これ は フォーク 一 人 の 策謀 でしょ う か ||ふぉーく|ひと|じん||さくぼう|||

何者 か が 彼 を 自由 に し た の だ と すれ ば … なにもの|||かれ||じゆう||||||||

すぐ に ヤン 提督 を 追いかけ て 連れ戻 そ う 万事 それ から だ |||ていとく||おいかけ||つれもど|||ばんじ|||

多数 で 追う と 帝国 軍 に 要ら ぬ 疑念 を 持た せる こと も ある から たすう||おう||ていこく|ぐん||いら||ぎねん||もた|||||

少数 で いい しょうすう||

こう し て 混乱 を 収拾 し 得 ぬ まま |||こんらん||しゅうしゅう||とく||

６ 隻 の 戦艦 が ヤン を 追って イゼルローン を 発進 し た せき||せんかん||||おって|||はっしん||

事 は 内密 に な 特に … こと||ないみつ|||とくに

病床 の ヤン 夫人 に は 知ら れ ない よう に 注意 しろ びょうしょう|||ふじん|||しら|||||ちゅうい|

はっ ！

頼む ぞ たのむ|

提督 ていとく

５ 月 31 日 23 時 50 分 つき|ひ|じ|ぶん

ロム スキー ら と の 食事 を 済ませ た ヤン は |すきー||||しょくじ||すませ|||

就寝 まで の ひと 時 を 三 次元 チェス で 過ごし て い た しゅうしん||||じ||みっ|じげん|||すごし|||

チェック メイト ああ また やら れ た ちぇっく||||||

我ながら こんなに 弱い と は 思わ な ん だ われながら||よわい|||おもわ|||

ユリアン どう し て いる か

イゼルローン 要塞 と の 連絡 は 途絶 し た まま か ？ |ようさい|||れんらく||とぜつ||||

はっ 電磁 嵐 の 影響 だけ でも ない よう で |でんじ|あらし||えいきょう|||||

帝国 軍 が 戦闘 中 に ジャマー でも まい た の でしょ う か ていこく|ぐん||せんとう|なか|||||||||

うーん

さて 気分 が よく なった ところ で 今夜 は もう 休む と する か |きぶん||||||こんや|||やすむ|||

勝ち 逃げ です か ！ あ あの … かち|にげ||||

明晩 に でも リターン マッチ を お 願い し ます よ みょうばん|||りたーん|まっち|||ねがい|||

いい と も また もん で やる よ じゃ

あの 噂 は 本当 だった か 何 が です ？ |うわさ||ほんとう|||なん||

今回 の 随員 の 人選 こんかい||ずいいん||じんせん

実は ヤン 提督 が 三 次元 チェス で 勝 て そう な 相手 だけ を じつは||ていとく||みっ|じげん|||か||||あいて||

選 ん だ と いう あっ ？ あ … せん||||||

艦長 帝国 軍 より 入電 です かんちょう|ていこく|ぐん||にゅうでん|

ん ？

閣下 お 休み の ところ 申し訳 あり ませ ん かっか||やすみ|||もうし わけ|||

帝国 軍 より 入電 で 元 同盟 軍 准将 ｱﾝﾄﾞﾘｭ ｰ ･ ﾌｫ ｰ ｸ が ていこく|ぐん||にゅうでん||もと|どうめい|ぐん|じゅんしょう||||||

収容 先 の 精神 病院 を 脱走 しゅうよう|さき||せいしん|びょういん||だっそう

閣下 の 暗殺 を 謀って 武装 商船 を 強奪 し かっか||あんさつ||はかって|ぶそう|しょうせん||ごうだつ|

この 宙 域 に 向かって いる と の こと です |ちゅう|いき||むかって|||||

閣下 ？ すぐ 行く 詳しい 話 は そちら で かっか||いく|くわしい|はなし|||

警戒 態勢 を 発令 し まし た けいかい|たいせい||はつれい|||

帝国 軍 から は その 後 当方 の 護衛 の ため に ていこく|ぐん||||あと|とうほう||ごえい|||

駆逐 艦 ２ 隻 を 派遣 し た と の 連絡 が あり まし た が くちく|かん|せき||はけん|||||れんらく|||||

なにぶん 通信 状態 が 芳しく あり ませ ん ので … |つうしん|じょうたい||かんばしく||||

ああ 導 眠 剤 を 飲 ん だ せい で 眠く て ね |みちび|ねむ|ざい||いん|||||ねむく||

レーダー に 反応 ！ 警告 の あった 武装 商船 の よう です れーだー||はんのう|けいこく|||ぶそう|しょうせん|||

戦闘 用意 せんとう|ようい

撃て ！ うて

応戦 しろ 主砲 発射 用意 おうせん||しゅほう|はっしゃ|ようい

武装 商船 の 後方 に ２ 隻 の 帝国 艦 ぶそう|しょうせん||こうほう||せき||ていこく|かん

何 ？ なん

おお ！ 帝国 艦 が 発砲 |ていこく|かん||はっぽう

なぜ だ ！

帝国 艦 より 入電 ！ ていこく|かん||にゅうでん

どう し ます ？

よし つなげ

テロリスト は 処理 し まし た ご 安心 いただき たい てろりすと||しょり|||||あんしん||

ついては 我々 が 閣下 を カイザー の 元 へ ご 案内 する に つき |われわれ||かっか||||もと|||あんない|||

ぜひ 直接 の ご挨拶 を さ せ て いただき たい の です が |ちょくせつ||ごあいさつ|||||||||

我々 の 代表 は ロム スキー 議長 だ われわれ||だいひょう|||すきー|ぎちょう|

議長 の ご 判断 に 従う ぎちょう|||はんだん||したがう

ロム スキー の 判断 は 紳士 と し て の 節度 に かなう もの だった |すきー||はんだん||しんし|||||せつど||||

すなわち 相手 の 申し出 を 受け 接 舷 を 許可 し た の で ある |あいて||もうしで||うけ|つ|げん||きょか|||||

アンドリュー ･ フォーク が ね |ふぉーく||

陰気 で 尊大 で 嫌 な 野郎 で し た な いんき||そんだい||いや||やろう||||

秀才 だった の です が しゅうさい||||

現実 の ほう が 彼 に 歩み寄って くれ なかった の です な げんじつ||||かれ||あゆみよって|||||

方程式 や 公式 で 解決 できる 問題 なら ほうていしき||こうしき||かいけつ||もんだい|

手際 よく 片づけ た に 違い あり ませ ん が てぎわ||かたづけ|||ちがい||||

マニュアル の ない 世界 で は 生き られ なかった らしい まにゅある|||せかい|||いき|||

わざわざ 接 舷 する 必要 が あり ます か ね |つ|げん||ひつよう|||||

ヤン 提督 は ？ 待機 さ せ て おり ます |ていとく||たいき|||||

今回 の こと でも 独断 専行 が 目 に つき ます ので こんかい||||どくだん|せんこう||め||||

ここ は 外交 渉外 の 優先 権 は 我々 政府 に ある こと を ||がいこう|しょうがい||ゆうせん|けん||われわれ|せいふ||||

はっきり さ せ て おく べき だ と 思い まし て ||||||||おもい||

う ー む |-|

い ない ぞ 気づか れ た か ？ |||きづか|||

ヤン ･ ウェン リー は どこ に いる

あなた 方 が 何 を 求め て いる の か は 知ら ない が |かた||なん||もとめ||||||しら||

銃 を 突きつける と は 非 礼 でしょ う じゅう||つきつける|||ひ|れい||

まず 銃 を しまい なさい |じゅう|||

慌てる な ！ 奴 ら の 後 を 追え ば ﾔﾝ ･ ｳｪﾝﾘ ｰ の 元 へ たどり着 ける あわてる||やつ|||あと||おえ||||||もと||たどりつ|

おう … う わ わ …

伏せ て て ください ！ 提督 ふせ||||ていとく

逃げ て ください 提督 ！ 提督 ！ にげ|||ていとく|ていとく

う わ あ ああ ！

う っ ！ う う …

逃げ て ください ！ にげ||

よせよ 痛い じゃ ない か ね |いたい||||

ヤン は この 奥 だ 重い 動か ん |||おく||おもい|うごか|

未 確認 艦 急速 接近 み|かくにん|かん|きゅうそく|せっきん

レダ Ⅱ に 強行 接 舷 始動 ！ ||きょうこう|つ|げん|しどう

ヤン 提督 は どこ に いる |ていとく||||

言え ！ いえ

もはや この世 の どこ に も おら ぬ |このよ||||||

こいつ ！

ユリアン ！ 提督 を 救い に 行け 俺 も こい つら を 掃討 し て から 行く |ていとく||すくい||いけ|おれ|||||そうとう||||いく

了解 りょうかい

大丈夫 ユリ シーズ は 強運 の 船 だ だいじょうぶ|ゆり|しーず||きょううん||せん|

実際 レダ Ⅱ を 発見 でき た じゃ ない か じっさい|||はっけん|||||

希望 は 通じる 努力 は 絶対 報 わ れる きぼう||つうじる|どりょく||ぜったい|ほう||

どこ が 安全 かな … ||あんぜん|

それにしても ﾌﾚﾃﾞﾘｶ や ﾕﾘｱﾝ を 同行 さ せ なく て よかった |||||どうこう|||||

ヤン 提督 ！ |ていとく

ヤン 提督 ！ ユリアン です どこ に いらっしゃい ます か |ていとく|||||||

ん ？

ヤン ･ ウェン リー 提督 … |||ていとく

動脈 叢 を 撃ち抜か れ た な どうみゃく|そう||うちぬか|||

殺し た ！ 殺し た ！ ころし||ころし|

随分 と 血 が 出る もの だ な ずいぶん||ち||でる|||

もっとも 私 が 今 まで 流さ せ て き た 量 に 比べ れ ば |わたくし||いま||ながさ|||||りょう||くらべ||

ささやか な もの だ が …

こんな 所 で … 我ながら 情けない |しょ||われながら|なさけない

奇妙 だ な きみょう||

血 が これ だけ 流れ出せ ば ち||||ながれだせ|

体重 は 軽く なって いる はず な の に たいじゅう||かるく||||||

なんで こんなに 体 が 重い ん だ … ||からだ||おもい||

あれ ？ う っ …

ああ …

ああ う っ …

どう も 格好 が よく ない な ||かっこう||||

やれやれ ｢ ミラクル ･ ヤン ｣ が ｢ 血まみれ ヤン ｣ に なって しまった ||||ちまみれ||||

ごめん フレデリカ

ごめん ユリアン

ごめん みんな …

ヤン 提督 ！ |ていとく

宇宙 歴 800 年 ６ 月 １ 日 ２ 時 55 分 うちゅう|れき|とし|つき|ひ|じ|ぶん

ヤン ･ ウェン リー の 時 は 33 歳 で 停止 し た ||||じ||さい||ていし||

ヤン ･ ウェン リー は 死 ん だ ||||し||

だが 歴史 は 変わら ず に 時 を 刻 ん で いる |れきし||かわら|||じ||きざ|||

残さ れ た 者 たち に とって 戦い は い まだ 続 い て いく のこさ|||もの||||たたかい||||つづ|||

ヤン が 歴史 に 残 し た 足跡 を 意味 ある もの に する ため に も ||れきし||ざん|||あしあと||いみ|||||||

次回 ｢ 銀河 英雄 伝説 ｣ 第 83 話 ｢ 祭り の 後 ｣ じかい|ぎんが|えいゆう|でんせつ|だい|はなし|まつり||あと

銀河 の 歴史 が また １ ページ ぎんが||れきし|||ぺーじ